プロジェクトの活動紹介 パロンタール市-農業と畜産の取り組みと、女性グループの意識の変化-

2023年5月18日

前回ご紹介したシンドパルチョーク郡チョータラ市に続いて、被災コミュニティの社会・経済的復興と次の災害に向けての備えを促進することを目指すコミュニティ・レジリエンス・プロジェクト(Community Resilience Project:CRP)について、今回はゴルカ郡パロンタール市の活動例を紹介します。

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養豚事業

ゴルカ郡パロンタール市で活動するベタニ女性グループは、2015年に設立され現在16人のメンバーが共同で養豚事業を営んでいます。グループが結成される前は、各世帯がそれぞれ個別にブタを飼っていましたが、2015年に発生した地震で大きな被害を受けました。CRPにおいて、グループは共同でブタを飼育する豚舎を建て、養豚事業に関する必要なトレーニングを受けました。村の青年グループの協力を得て、同規模の地震に耐えうる豚舎を再建することが出来ました。現在、16名のメンバーは4つの班に分かれて、交代で豚舎の掃除やエサやりを行っています。

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建設中の豚舎

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建設終了後の豚舎

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豚舎の前で話し合うグループのメンバーたち

活動が始まってから1年足らずということもあり、まだ具体的な利益を得るまでには至っていませんが、CRPによる支援(1年間)が終了後も彼らは毎月150ルピーずつを出し合い、それをエサ代や豚舎の電気代にあて、活動を継続しています。

グループでの養豚活動は単に経済的な利益をもたらすだけではなく、毎月実施される定例会議は、各メンバーの関心事や悩み事を話し合う場にもなっています。また、CRPの活動を通して、グループで市や町の行政職員と話をすることを経験し、日々抱える課題を市や区に訴える必要性を認識し、今では自分たちの要望を市が作成する年次計画に反映させようと試みています。このような経験を村の他の住民や、近隣の村の人たちにも伝えようとしています。

バナナ栽培事業

同じくパロンタール市で活動するナムナ・プラガティ女性グループは、2018年に結成されたグループで、全25名のメンバーの多くがダリットと呼ばれるネパールのヒンズー教カースト制度における最低階級層の女性たちです。これまで彼女たちは社会的弱者であるために行政サービスへのアクセスには限りがありました。彼女たちはグループ活動の経験もあまりなく、今回のCRP事業の申請書を作成するのにも苦労したと言います。本プロジェクトのローカルスタッフの協力も得て、何とか申請書を作成出来ました。地域の代表やプロジェクトスタッフは、足しげくこの地域を訪れ、バナナの栽培に限らず、グループ作りやその他日常のあらゆる課題を一緒に考えることを通してグループの能力強化に努めました。

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バナナの状況を確認中

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バナナの苗を植えているところ

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バナナとトウモロコシの混作

同グループは共同でのバナナの栽培に取り組んでいます。バナナの栽培のための土壌作り、バナナの栽培について、バナナに寄生する病気に関する研修を受けました。ようやく花が咲くようになりましたが、すぐに実に成り、それを売って利益が得られる訳ではありません。バナナの実がなるまでの間、そこで、バナナとバナナの間に販売目的のキャッサバを植えることにしました。

彼女たちもまた、グループでの活動を通して多くの事を学んだと言います。月1回の定例会議の場では、日常の様々な問題について話し合う様になりました。村や町レベルでの集会にも参加するようになり、彼女たちの子どもが通っている学校が遠くにあるため、もっと近くに小さな子どもが通える学校を造るように要求したそうです。

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グループの女性たち

両グループの取り組みから、CRPが直接的な成果のみでなく参加者の行動力、意識の変化にも繋がり、新しいことを始める第一歩にも繋がっていることが分かります。