プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)参加型地方復興プロジェクト
(英)The Project on Participatory Rural Recovery

対象国名

ネパール

署名日(実施合意)

2019年7月8日

プロジェクトサイト

ゴルカ郡、シンドパルチョーク郡

協力期間

2019年9月1日から2023年8月31日

相手国機関名

(和)復興庁
(英)National Reconstruction Authority

背景

ネパール連邦民主共和国(以下「ネパール」という。)では、2015年4月25日、首都カトマンズ北西約77キロ(ゴルカ郡)を震源とするM7.8の地震が発生し、その後の余震と併せて死者8,702人、負傷者22,303人、全壊家屋約50万戸、半壊家屋約26万戸という、甚大な被害が生じた。

震災後、ネパール政府は、震災復興を統括する組織としてネパール復興庁(Nepal Reconstruction Authority、以下「NRA」という。)を2020年までの時限付きで創設し(注1)、発災から5年間の復興枠組みを示した「震災復興枠組み」(Post-Disaster Recovery Framework、以下「PDRF」という。)を策定した(注2)。かかる取り組みを支援するため、JICA は日本の災害・復興経験と、「仙台防災枠組2015-2030」(2015年3月採択)の「より良い復興(Build Back Better)」の考え方(以下「BBBコンセプト」という)に基づき、2015年から2019年にかけて「ネパール地震復旧・復興プロジェクト」(The Project on Rehabilitation and Recovery from Nepal Earthquake、以下「RRNE」という。)を実施した。その結果、カトマンズ強靭化計画及び地方2郡の復旧・復興計画(Rehabilitation and Recovery Plan、以下「RRP」という。)を策定したほか、耐震建築の普及や優先的な復興事業の実施等を支援することで、被災地域の早期復旧・復興と、災害に強い国や社会の形成に寄与した。

一方、日本でも大規模災害の後には長期的な復興の取り組みが必要となるように、震災から5年を経たネパールにおいても、復興プロセスはまだ途上にある。インフラなどのハード面では、ネパール政府や援助機関等の取り組みによる大きな進展が見られるが、生業など人々の生活再建等のソフト面の復興は、十分行われていない。また、PDRFの戦略的復興目標の一つである「個人やコミュニティのリスク・脆弱性削減のための能力と社会的な結束の強化」では、復興にあたり女性や社会的弱者を包摂することが目指されているが、現状ではこれらの脆弱層が復興から取り残される懸念があることが、RRNE終了後の被災者への聞き取り調査から判明している。

また、ネパールでは2015年に連邦制の導入が決定し、2018年に連邦・州・地方(市/村)から成る三層構造の政府運営が開始された。州および地方自治体への権限移譲を踏まえ、復興の取り組み主体も中央から地方に変更となったことから、地方自治体の能力強化が急務となっている。ネパールでは2015年の震災以降も、毎年大規模な洪水や地滑り等の自然災害が各地で発生しており、直近では新型コロナウイルス感染症等の新たな復興課題も生じている(注3)。これらの災害からのBBBコンセプトに基づく復興にあたり、地方自治体における復興課題の特定から中期開発計画・年間開発計画への反映、さらには事業実施にいたるまでの一連のプロセスについて、脆弱層を含む幅広い住民のニーズを反映しながら運用する能力の向上が求められている。

かかる状況を踏まえ、ネパール政府は、地方部の参加型復興を促進するための制度づくり及び地方自治体やコミュニティの能力強化支援を要請した。本事業は、ネパール政府が取り組むPDRFの一環として、市/村レベルの復興計画の策定及び実施能力強化を支援するものである。また、ネパール政府の国家開発戦略の最上位計画である第15次5カ年計画(2019/20年度~2023/24年度)における、災害管理の主流化による災害被害軽減に資することが期待される。

(注1)但し、2020年11月30日付で、2021年12月末までの設置延長が政府決定されている。
(注2)PDRFは、震災が発生した2015年から5年間を対象期間としたが、現在ネパール政府による改訂作業が行われており、対象期間が延長される見込み。内容面でも改訂が行われているが、現状未公開。
(注3)ネパール政府は「国家災害リスク管理削減戦略実施計画2018-2030」において、想定される災害種として地震、地滑り、洪水、吹雪、雪崩、氷河湖決壊、森林火災、気候変動リスク(干ばつ、落雷、強風、熱波、寒波)、感染症を挙げている。

目標

上位目標

地方自治体のBBBコンセプトに基づく参加型復興の促進能力が強化される。

プロジェクト目標

参加型地方復興ガイドラインを用いて、BBBを実現するための能力が、パイロット自治体とコミュニティグループ(注4)で強化される。

(注4)コミュニティグループとは、特に社会・経済面におけるニーズや目的を共有し、その達成のために共に活動する任意の住民の集団を指す。コミュニティグループの形成はネパールの地方部で一般的に見られ、政府へのニーズの共同提案や、地域資源やインフラの利用・維持管理等に協力して取り組む。具体例として、農作物の保管庫を共同運営する農民グループや、ヤギ育成のための知見共有や資金運用を行う女性グループなどがあり、協同組合として政府に登録している場合もある。

成果

成果1:パイロット自治体で、参加型のプロセスを通じて復興の優先課題が特定され、自治体の開発計画の中に取り入れられる。
成果2:パイロット自治体で、コミュニティグループによる復興事業を推進するための仕組みが整備される。
成果3:参加型地方復興ガイドラインが策定され、他の地方自治体に共有される。

活動

1.成果1に係る活動

1.1 パイロット自治体の条例、計画、政策、事業、その他情報をレビューする
1.2 パイロット自治体のコミュニティグループや社会的弱者グループに関する情報を収集する
1.3 ベースライン調査とエンドライン調査を実施する
1.4 地方議員、自治体職員向けの参加型復興計画策定研修を開発・実施する
1.5 コミュニティグループ向け参加型復興計画策定研修を開発・実施する
1.6 パイロット自治体で復興のビジョン・優先課題を特定するための参加型の会議を開催する
1.7 復興の優先課題を中期開発計画に反映させるための協議をファシリテーションする
1.8 復興の優先課題を年間開発計画に反映させるための協議をファシリテーションする

2.成果2に係る活動

2.1 パイロット自治体において、コミュニティグループが主導して実施する事業や、それに関連する条例、政策や実施プロセス等に関する情報を収集・分析する。
2.2 コミュニティグループによる復興事業実施のための業務マニュアルを作成する
2.3 コミュニティグループによる復興事業に関するオリエンテーションを地方議員、地方自治体職員、コミュニティグループ向けに実施する
2.4 選定基準に基づきコミュニティグループによる復興パイロット事業を選定する
2.5 事業計画、実施、モニタリング、報告に関するコミュニティグループ研修を実施する
2.6 コミュニティグループによる復興パイロット事業(注5)を実施する
2.7 コミュニティグループによる復興パイロット事業をモニタリングする

3.成果3に係る活動

3.1 成果1及び2の活動から得られた教訓の文書化や、他地域への教訓適用に向けた活動の計画と手法を決定する
3.2 パイロット自治体の組織内部や、パイロット対象外の自治体との経験共有を推進する
3.3 参加型地方復興ガイドラインを策定する
3.4 他の地方自治体と参加型地方復興ガイドラインを共有する

(注5)ソフト面の復興の促進に寄与する生計向上分野(農業・観光等)を想定。

投入

日本側投入

1)専門家派遣
2)本邦研修

相手国側投入

1)C/Pの配置
2)ローカルコスト負担