保健の家に灯りを

2016年11月10日

アコヤパ市にあるプロジェクトのパイロット保健セクターのひとつ、エル・チナル保健セクターは、エル・サポテ保健セクターが分割され、新たに独立した保健セクターです。元のエル・サポテ保健セクターには、保健省が直接運営管理する保健ポストがあり、そこで医療サービスを提供することが可能です。しかし、新しい保健セクターには保健施設がないため、集落の一般家庭もしくは教会などの公共の施設から個室を提供してもらい、簡易的な診療所「保健の家」として使わせてもらわなくてはなりません。アコヤパ支所は、新しい保健セクターの中で、支所から一番近いプエルタス・ロッハス集落に「保健の家」に適当な家屋を見つけ出しました。そこは、他の集落へ繋がる道の分岐点でもあり、アコヤパ支所にとって便利な立地条件でした。

新しく独立した保健セクターで、コミュニティネットワーク(RC)も交えた最初の保健セクター会議が、ほぼ中心に位置するエル・チナル集落で開催されました。そこで、医療チームからアコヤパ支所が新しい「保健の家」をプエルタス・ロッハス集落に開設する計画であることが伝えられました。するとRCメンバーから、「プエルタス・ロッハス集落は遠い」「エル・チナル集落の方が便利」などの意見が次々に出ました。医療チームとプロジェクトは、「RCの皆さんでアコヤパ支所へ嘆願書を提出してみてはいかがでしょうか」と提案しました。早速、RCメンバーの教師がノートを破って文章を書きはじめました。その嘆願書には、会議に参加していたRCメンバー全員が署名し、医療チームに託されました。後日、この要望は受け入れられ、エル・チナル集落の教会前の公共施設を、仮診察室として使い始めることになりました。それから、2カ月後にはRCらが自前で用意した木材を使って「保健の家」を公共施設の横に増築しました。完成した内部には、医療従事者が寝泊まりできる一室と2つの診察室が用意されました。

しかし、その建物には電気がありません。妊産婦健診などはプライバシーを守るためにドアを閉めて行うので、内部はいつも暗い状態でした。プロジェクトは、中米で広域展開されていたJICA技術協力のシャーガス病対策プロジェクトの経験を活かし、ペットボトルライトを「保健の家」に設置することにしました。この灯りは、使用済み2リットルのペットボトルに、水と塩素系漂白剤を混ぜて満たし、それを50センチメートル四方に切り取ったトタンに固定し、屋根に穴をあけて据え付けます。すると、屋根上部に飛び出たペットボトルの先3分の1で太陽光を受け、天井から部屋に突き出たペットボトルが発光するという、日中だけの灯りとなります。設置後、室内は明るくなり、診察しやすくなったと好評でした。

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エル・チナル集落にRC主導で増設された「保健の家」(木造部分)

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50センチメートル四方のトタンに据え付けたペットボトル

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屋根に穴をあけ、トタンに据え付けたペットボトルをはめ込みます。

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太陽光を受け、ペットボトルライトが発光し、室内が明るくなります。