マンスリーレポート(2020年3月号)

2020年3月31日

『みんなの学校:住民参加による教育開発プロジェクトフェーズ2』では、初等教育分野と中等教育分野、二つの分野にて活動しています。初等教育分野においては、住民支援の校外学習に効果的なツールを導入することですべての児童の“読み書き”と“計算”の基礎学力改善を目指す『質のミニマムパッケージ』の開発と普及に取り組み、中等教育分野においては、アクセス、格差解消、教育の質の改善など、様々な教育開発課題の改善に貢献する“機能する”学校運営委員会(COGES)モデルの全国普及を進めています。

「中等教育分野」活動では、2017年より段階的に取り組んできた『機能する中等学校運営委員会』モデルの全国普及が完了し、全国に約1800の中等COGESが立ち上がったのみでなく、初等と同様、地域ごとに中等COGESの活動を支援・モニタリングし、かつ、地域教育開発におけるコミュニティ動員の牽引役として期待される、中等COGESをグループ化した「中等COGES連合」も全国8州の県に民主的に設置されました。この『機能する中等学校運営委員会モデル』の全国展開を経た今年度の中等COGES活動を見てみると、全国の中等COGESの9割が学校活動計画を策定し、その中で、学校あたり平均9活動の実施と110万Fcfa(約22万円)の資源動員が計画されました。その全国的な動員計画総額は15億フランセーファー(約3億円)にも上っています。一方の全国展開後10年以上経過している「初等教育分野」の学校運営委員会(CGDES)では、例年通り、全国の9割の学校運営委員会が、今年の学校活動計画表を策定し、CGDES当たりの平均活動計画数は6活動、動員予定総額は、全国で約37億6千万フランセーファー(7億5千万円)にも上ります。つまり、ニジェール国の初等・中等両分野に広がったJICAみんなの学校型の“機能する”「学校運営委員会」を通した。コミュニティによる動員計画額総計は52億フランセーファー(約10億5千万円)以上に上ることが明らかとなりました。

このようなニジェールの教育開発に欠かせないコミュニティ動員を最大限に活用し、コミュニティ・地方行政・教育行政といった様々なアクターの協働シナジーを通して、コミュニティの教育ニーズとニジェールの地域的な教育課題の改善を図るのが、まさに、みんなの学校開発の「フォーラムアプローチ」モデルです。「機能する中等COGES」・「中等COGES連合」が全国展開した現在、このフォーラム活動を中等分野にも展開できる土壌が出来ました。そこで、プロジェクトでは、昨年度11月に引き続き、全国8州での初等・中等合同による「州教育フォーラム」開催をUNICEFと共同で支援しています。今月3月は、首都ニアメ近郊の3州での開催に取り組みました。

今回の全国8州初等・中等合同フォーラムでは、前回の全国8州での女子就学促進フォーラムの結果(入学児童状況)の共有・評価と共に、小学校・中学校新入生のドロップアウトの問題をテーマとして取り上げています。ニジェールでは、現在、小学校入学1年生児童の15%に当たる約8万名が、毎年小学校2年生に上がる前に学校を去っており、また、中学1年生から2年生に進級するのは毎年わずか4~5割の生徒に過ぎず、その中でも中学1年生の35%に当たる約9万名が2年生に進学する前に学校を退学しています。このような状況はニジェールの教育システムにおいて大きな損失であるだけでなく、保護者・住民にとっても教育への期待・希望を打ち砕く非常に深刻な課題といえます。

今月すでにフォーラムを実施した3州では、それぞれ州ごと、県ごと、市町村ごとの小学校1年生・中学校1年生の退学状況、進級状況を具体的に共有し、各州400名にも上る参加者の喧々諤々の討議を経て、初等・中等それぞれの1年生の進級率・生徒数の目標値、ドロップアウト率の目標値が決議されました。そして、その決議を受け、地方行政を担う州知事、県知事、市長から、コミュニティの代表である初等学校運営委員会連合・中等学校運営委員会連合、初等分野・中等分野それぞれの地方教育行政の長である初等・中等州教育事務所長、中等県教育事務所長や初等・中等視学官、さらには伝統的宗主や宗教指導者、教員代表など、それぞれのアクターが、フォーラム決議の実現と目標値達成へ向けた活動誓約を公に宣言しました。

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就学維持改善のための初等・中等合同「州教育フォーラム」様子(開会式)

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就学維持改善のための初等・中等合同「州教育フォーラム」様子(400名を超える参加者)