パイロット活動の開始と特別チーム「SMART WASA」の設置

2016年11月7日

本プロジェクトでは、マスタープラン策定と同時並行で、パイロット活動を行います。本プロジェクト対象地域では、水道事業が悪化しており(1日6時間程度しか給水されず、水圧も低く、水質も悪い等)、そのため水道利用者(顧客)は料金の支払い意志が低く、ファイサラバード上下水道公社(WASA-F)が配布した料金請求書に対しても、料金の徴収率は28%(2016年時点)に留まっています。
このことから、このパイロット活動では3か所のパイロットエリアを定め、配水管理(水量・水圧・水質の適正管理)、無収水(漏水や盗水などの収入にならない水)対策や水道料金の未納対策を実施します。
マスタープランでは、WASA-Fが、現在の脆弱な財務体質から脱却し、サービスの改善と健全な財政基盤を図るため、提言が盛り込まれる予定ですが、パイロット活動はそれを実証し、良いモデルとなることが期待されます。つまり、WASA-Fの自立した独立採算性を高めるために、「顧客がWASA-Fの水道サービスにある程度満足して、適正な料金設定のもとで、きちんと水道料金を支払っている。」このようなモデルをまずはパイロットエリアで達成し、将来的にはファイサラバード全体へ展開して、現在の悪循環となっているWASA-Fの事業運営が、今後は好循環で回っていくことが狙いです。
このパイロット活動を円滑に進めるため、邦人専門家チーム(JICA Mission Team)はWASA-Fに対して、新たに特別チームの設置を提案し、承認されました。
特別チームは「Supply Water And Revenue Team WASA」と命名され、頭文字をとって「SMART WASA」と呼ばれています。

【コラム】SMART WASAの果たす役割

SMART WASAはWASA-F内に設立され、2016年11月7日にキックオフ会議を開催しました。この会議中、パイロット活動の進め方について活発な議論が行なわれました。本チームは技術部門(配水管理)とカスタマーサービス部門(顧客管理)の両方を統合した組織横断的なチームであり、また、本部職員だけでなく現場職員も巻き込み、階層の垣根を越えたチームとして構築されました。
SMART WASAの活動は、まずパイロットエリアを隣接するエリアから水理的に分離(アイソレーション)し、エリア内で独立した水道システムを構築します。技術部門の英知を結集して、24時間給水、水圧コントロール、水質管理を行い、水道サービスと顧客満足度の向上を図ります。その間に、カスタマーサービス部門は、顧客アンケート調査や台帳の整備を行います。
水道サービスレベルの向上と適正な料金設定とともに、顧客の満足度と支払い意志は高まり、料金徴収率の向上へと好循環のサイクルを目指します。またファイサラバードでは、顧客用の水道メーターがこれまで無く、2015年からようやく水道メーターを設置し始めました。今回のパイロットエリアの中でも水道メーター設置の促進を図り、現在の定額制料金から従量制料金制度への転換も試みる予定です。これらの活動により、チーム一丸となって、配水管理から料金徴収までを担うことができ、現場と本部の円滑なコミュニケーションが期待されます。
将来的にファイサラバード全体に展開を図り、WASA-Fの独立採算性を高めることがSMART WASAの役割です。

【画像】

2016年11月7日のキックオフ会議