プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)ハイバル・パフトゥンハー州畜産開発を通じた生計向上プロジェクト
(英)Project for Livelihood Improvement through Livestock Development in Khyber Pakhtunkhwa

対象国名

パキスタン

署名日(実施合意)

2020年6月15日

協力期間

2021年1月15日から2025年1月14日

相手国機関名

ハイバル・パフトゥンハー州畜産・酪農開発局

背景

パキスタン・イスラム共和国(以下「パキスタン」という。)における畜産分野は、全GDPの1割以上、農業総生産の約6割を占める同国経済にとって重要なセクターとなっている(Pakistan Economic Survey 2017-18)。パキスタン北西部に位置するハイバル・パフトゥンハー州(以下「KP州」)においては、人口の8割が農業・畜産で生計を立てており(KP州畜産局、2018)、特に生乳や肉類は主要な食料・収入源であることから、畜産業の重要性は高い。同州全世帯の7割以上が牛や水牛などの大型乳用家畜を飼養しており、年間約600万トンの生乳を生産している(同上)。大半の農家は家畜2~3頭を飼育する小規模零細経営であるものの、生乳・乳製品をタンパク源として自家消費している他、余剰分を販売することにより貴重な現金収入を得ている。このため、小規模農家の生乳生産及び生産性を向上させることが、州内における生乳の供給量増加と農家の生計向上に寄与するものである。
他方、KP州における生乳の平均生産は、家畜の栄養不足、不十分な繁殖管理、劣悪な飼育環境などのため全般的に低い。家畜の飼料は、小麦の収穫残渣や雑草等が中心であり、水分も十分に与えられていないこと等が、生乳生産を妨げる要因となっている。また、KP州畜産・酪農開発局(以下「畜産局」)職員は多くが獣医師あるいは獣医助手で、その業務は予防接種や緊急時治療等の獣医サービスに限定されているため、適切な家畜飼養管理に係る農家への技術指導がほとんど行われていない。このような状況の中、KP州の小規模農家が、牛や水牛の生乳生産を増やし、所得を向上するためには、伝統的な飼育方式にとらわれない適正技術を導入し、普及する体制を強化することが喫緊の課題となっている。

目標

上位目標

ハザラ地区対象地域の生乳生産を行う小規模畜産農家の生計が向上する。

プロジェクト目標

対象地域の小規模畜産家の生乳・乳製品生産増加を支えるサービスが改善する。

成果

1.生乳生産増のための酪農適正技術が、異なる社会・自然条件下のパイロット農家において、ジェンダーの視点に留意しながら実証される。
2.モデル普及活動の実施を通して、官・民畜産技術者の、適正技術を普及するための知識・能力が向上する。
3.小規模農家の収入向上のため、生乳・乳製品のマーケティングと供給チェーンが改善される方策が提示される。

活動

成果1のための活動

1-1.対象地域における社会・自然環境の特性に応じた小規模農家による酪農経営及び乳用家畜の飼養管理技術に係る情報を収集・分析する。
1-2.異なる環境条件ごとにパイロット農家を選定する。
1-3.異なる環境条件ごとに、乳量増加に結び付く可能性の高い適正技術の候補をリストアップする。
1-4.パイロット農家において、特定した適正技術を適用・検証する。
1-5.生乳生産に対する適正技術の効果を評価した上で、異なる環境条件で推奨される適正技術を特定する。
1-6.推奨技術を普及するための情報(メッセージ)を整理し、研修・普及教材を作成する。
1-7.各県事務所の畜産技術者が、パイロット農家における適正技術の検証活動への参加を通して、適正技術についての知識・技術を習得する機会を提供する。

成果2のための活動

2-1.各県事務所の畜産技術者が、パイロット農家における適正技術の検証活動への参加を通して、適正技術についての知識・技術を習得する機会を提供する。
2-2.パイロット農家において適正技術の実証サイトとなる、モデル村落を選定する。
2-3.モデル村落を担当する畜産技術者に対し、普及手法の研修を実施する。
2-4.畜産技術者がファシリテーターとなり、パイロット農家周辺の農家によるグループ参加を促しながら、普及活動の実施をサポートする。
2-5.普及手法・活動について、その実施に係る教材(ファシリテーター向けハンドブック)を取りまとめる。
2-6.モデル村落における活動に直接参加しない畜産技術者に対し、適正技術の普及に係る研修を実施する。
2-7.普及活動の結果について、好事例及び教訓を広く共有する場を設定する。
2-8.対象地域において、生乳・乳製品を市街地の市場に販売する農家・農家グループをリストアップする。

成果3のための活動

3-1.対象地域において、生乳・乳製品を市街地の市場に販売する農家・農家グループをリストアップする。
3-2.リストアップした農家・農家グループによる生乳・乳製品の販売先や流通ルートを調査する。
3-3.調査結果を基に、小規模農家の収入を阻害する生乳・乳製品の流通に係る課題要因を抽出し分析する。
3-4.活動3-2と3-3の結果を基に、小規模農家の生乳・乳製品のマーケティング・供給チェーン改善のためのパイロット事業を立案する。
3-5.立案したパイロット事業を試行するモデルサイトを選定する。
3-6.選定したモデルサイトにおいてパイロット事業を試行する。
3-7.モデルサイトにおけるパイロット事業から得られた経験・教訓に基づき、生乳・乳製品のマーケティングと供給チェーンの改善計画を取りまとめる。
3-8.策定した改善計画をKP州の酪農関係者に共有する。

投入

日本側投入

1)専門家派遣(チーフアドバイザー、業務調整、酪農適正技術開発、飼養管理、ジェンダー主流化等)
2)研修員受け入れ:本邦及び第3国研修(「酪農技術の開発と普及」)
3)機材供与(適正技術の実証に必要な資機材、研修用視聴覚機器、事務機器等)

相手国側投入

1)カウンターパート(C/P)の配置(乳用家畜飼養管理、繁殖・人工授精技術、家畜衛生、普及・研修計画、牛乳・乳製品のマーケティング・供給チェーン等)
2)プロジェクト事務所(アボタバード市内)と活動に必要な経費