プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)パレスチナ難民キャンプ改善プロジェクトフェーズ2
(英)Refugee Camp Improvement Project phase 2

対象国名

パレスチナ

署名日(実施合意)

2020年2月24日

協力期間

2020年9月7日~2024年9月6日

相手国機関名

(和)パレスチナ解放機構難民問題局
(英)Department of Refugee Affairs, Palestine Liberation Organization(DoRA/PLO)

背景

パレスチナ難民は、世界で最も長期化した難民問題であり、世界最大の難民グループである。現在パレスチナ自治区(ヨルダン川西岸地区及びガザ地区)、ヨルダン、レバノン、シリアに合計約617万人のパレスチナ難民が居住している(2018年12月、UNRWA)。うちヨルダン川西岸地区には約104万人、ガザ地区には約157万人が居住しており、年々増加傾向にある。難民発生から70年以上が経過し、キャンプのインフラ劣化や失業・貧困等の経済問題が深刻化している。難民キャンプ内の上下水道設備や道路の維持管理状況がキャンプ外に比べて劣悪であることが問題となっており、難民キャンプ内の世帯貧困率は39%(非難民キャンプ世帯29.5%)、難民の失業率は24.8%(非難民17.8%)である。また、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に対する米国の拠出停止やイスラエルの強硬路線等によって、パレスチナ難民を取り巻く状況は厳しさを増しており、国際社会と協力してパレスチナ難民を支援する重要性が一層高まっている。

本事業に先行して実施した「難民キャンプ改善プロジェクト(PALCIP)」(2016年12月~2019年12月)はJICA初の難民キャンプの改善を目的とする技術協力プロジェクトである。パレスチナ解放機構(PLO)の難民問題局(Department of Refugee Affairs、DoRA)及びパレスチナ自治政府(PA)の財務・計画庁(MoFP)をカウンターパートとして、ヨルダン川西岸地区の3キャンプで、様々な社会的セグメントの住民代表からなるキャンプ改善フォーラム(CIF)を組織し、住民のニーズに基づくキャンプ改善計画(CIP)を策定するとともに、同計画の実施メカニズムを構築した。これまで発言の機会がなかった脆弱層を含む住民が、キャンプの生活環境改善活動に積極的・能動的に関与し、住民間の結びつきが強まり、コミュニティへの帰属意識や一体感が生まれる等の効果が表れている。2019年7月に、西岸の全24キャンプを対象とした成果共有ワークショップを2回に分けて開催した。ワークショップではPALCIP対象キャンプの代表者がプロジェクトの意義と成果を紹介して本事業の対象候補キャンプの理解を促進した結果、全キャンプが本事業への参加を希望し、西岸地区のキャンプへの普及のニーズが確認された。

対パレスチナ自治区国別開発協力方針(2017年9月)は、民生の悪化が顕著な地区として難民キャンプを挙げ、「人間の安全保障に基づく民生の安定と向上」へ貢献することを重点分野(中目標)として掲げている。同重点分野の下で、難民キャンプの生活環境改善に向けた関係機関の能力強化を支援するための「社会的弱者保護プログラム」が編成され、本事業はこのプログラムに位置付けられる。パレスチナ自治区JICA分析ペーパー(2016年3月)においても、UNRWAとの連携を引き続き強化しつつ、DoRAの能力向上を通じたキャンプの生活環境改善を目指すことを今後の協力の方向として示しており、本事業はこれらの方針に合致する。また、SDGsゴール10「人や国の不平等をなくそう」、ゴール11「住み続けられるまちづくりを」及びゴール16「平和と公正をすべての人に」に貢献する。

目標

上位目標

西岸地区において、参加型でインクルーシブなキャンプ改善メソッドが普及する。

プロジェクト目標

対象キャンプにおいて、参加型でインクルーシブなキャンプ改善メソッドが定着する。

成果

1)対象キャンプにおいて、参加型でインクルーシブなキャンプ改善計画を策定するメカニズムが整備される。
2)キャンプ改善事業をDoRAの予算で実施するメカニズムが整備される。
3)DoRA、PC、その他の住民グループのファンドレイジング能力が強化される。

活動

1-1:前フェーズの経験を踏まえ、参加型計画に関するDoRA、PC及びCIFの現状の課題を特定する。
1-2:DoRA主導のCIF設立とCIP策定に向けたDoRAの組織強化枠組みを設定する。
1-3:対象キャンプの社会調査を実施する。
1-4:DoRAとキャンプのステークホルダーの能力強化のニーズを特定し、研修計画を策定する。
1-5:DoRA職員と対象キャンプのPCに対し、ローカルガバナンスの研修を行う。
1-6:DoRA職員と対象キャンプのCIFメンバーに対し、計画策定とコミュニティファシリテーションの研修を行う。
1-7:DoRA主導のCIF設立、CIP策定、優先プロジェクト選定に関し、対象キャンプに助言する。
1-8:CIF用のCIP維持・更新ガイドラインを開発する。
1-9:DoRA用のCIPモニタリングガイドラインを作成する。
1-10:2年次以降の対象キャンプを選定する。
1-11:西岸全キャンプを対象に経験共有ワークショップを開催する。

2-1:DoRA予算によるキャンプ改善事業の実施に関するDoRA及びPCの現状の課題を特定する。
2-2:DoRA予算によるキャンプ改善事業実施を改善するためのDoRAの組織強化の枠組みを設定する。
2-3:キャンプ改善事業実施能力向上のニーズを特定し、DoRAと対象キャンプのステークホルダー用の研修計画を策定する。
2-4:DoRA職員、対象キャンプのPCとCBOを対象に、キャンプ改善事業実施に関する研修を実施する。
2-5:キャンプ改善事業実施マニュアルを更新する。
2-6:対象キャンプでの事業実施に対し助言する。
2-7:対象キャンプで非インフラパイロットプロジェクトを実施する。

3-1:DoRA及び西岸のキャンプにおける既存のファンドレイジングメカニズムをレビューする。
3-2:DoRA、対象キャンプのPC、CBOのファンドレイジング能力強化のための支援計画を策定する。
3-3:DoRAと対象キャンプのステークホルダーのファンドレイジング能力向上のニーズを特定し、研修計画を策定する。
3-4:DoRA職員、対象キャンプのPCとCBOを対象にファンドレイジング研修を実施する。
3-5:ファンドレイジングマニュアルを作成する。
3-6:CIPのファンドレイジングを促進するツールを提案する。
3-7:ドナー協調(LACS等)やクラウドファンディングを活用したCIPのファンドレイジングメカニズムを提案する。
3-8:CIPのファンドレイジングを促進するワークショップをドナー等を招いて開催する。

投入

日本側投入

1)専門家派遣:総括、参加型開発、組織強化、積算・工事マネジメント、ファンドレイジング、研修、広報、業務調整
2)研修員受入:C/P研修
3)機材供与:プロジェクト車両

相手国側投入

1)カウンターパートの配置
2)案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供