プロジェクトではコーディレラ地域における妊産婦・乳幼児死亡率の低減に取り組んでいます。

2013年10月30日

ルソン島北部に位置するコーディレラ地域は山岳地であり、貧困層の割合が全国的にも高い地域です。保健人材や訓練の不足、医療機材・医薬品の不足等の問題が顕在化しており、母子保健に関しては施設分娩率が55%(2009年)と国の目標値である85%より低く、結果として妊産婦死亡率も79対100,000出生と国の目標値(2015年)である52対100,000出生を達成出来ていません。
このような状況を踏まえ、このプロジェクトでは母子保健サービスを効果的に提供するための保健システムを強化し、結果的にこの地域における女性と子供の健康状態が改善されることを目指しています。そのため、コーディレラ地域の状況に合わせた国の指針やマニュアルの改訂や、病院や保健所が質の高い母子保健サービスを提供できるよう機材供与や研修を実施しています。

この地域は国内でも先住民族の占める割合が高く(人口の約7割)、分娩に夫が付き添ったり、床の上にしゃがんで分娩するなど、お産に関し独自の文化を持っているため、それらに配慮した分娩サービスの提供が求められています。先住民族の妊婦が医療施設での分娩に消極的な理由の一つとして、病院や保健所ではこれら分娩に関する先住民族の文化が尊重されない(夫の分娩室への付き添いを認めない、分娩台の使用を強制する)ことが挙げられてきました。そこでプロジェクトでは、医療従事者向け全国版母子保健マニュアルをコーディレラ地域版として改訂した際、医学的に危険がない限りできるだけ先住民族の文化に配慮した分娩サービスを提供することをマニュアルの重点項目として盛り込み、実施に移しています。これにより以前は施設で分娩することをためらっていた妊婦が施設で分娩するようになるなどの変化が報告されています。

またこれまで、機材供与のほか、医師・看護師・助産師に対する緊急産科・新生児ケア(Basic Emergency Obstetric and Newborn Care、通称BEmONC)研修も実施し、機材と人材の両面から保健施設を整備し、BEmONC認証施設として機能するよう支援を行ってきました。現在、整備対象全14病院および18保健所(対象19保健所の95%)がBEmONC認証を取得し、既にサービス提供を開始しています。

今年度より、すべての妊産婦がより近くの医療施設でお産ができるよう、村落(バランガイ)での保健施設(バランガイヘルスステーション:村落保健支所)61か所をBEmONC認証施設として整備します。その一環として、2013年7月から助産師100名へのBEmONC研修を開始しました。

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バギオ総合病院でのBEmONC研修
臨床実習中の研修参加者

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プロジェクトにより供与された機材
分娩後用の回復ベッド

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コーディレラ地域母子手帳
先住民族文化に配慮