プロジェクトが用いている母子保健サービスに関するデータ分析手法を、コーディレラ地域全体へ拡大しています

2015年12月16日

プロジェクトでは、フィリピン国保健省による「保健サービス情報システム」を用いて定期的に情報を収集しています。しかし、保健省では妊産婦が「出産した場所」を基準にデータ分析を行っているため、例えばA町で妊娠中期まで規定回数の健診を漏れなく受けていた妊婦が何らかの理由でB町の医療施設で引き続き健診を受け出産した場合、施設分娩の記録や産前健診受診回数などがA町の実績ではなくなってしまいます。その結果、A町の保健医療従事者が産前・産後健診受診率や施設分娩率を向上させるための活動をしていても、データにはその成果が正確に反映されるとは限りません。そのためプロジェクトでは、産前産後健診受診回数、分娩場所、分娩介助者の情報などの保健省の既存のデータに加え、国民健康保険加入の有無というプロジェクトで独自に収集したデータも用いて、妊産婦の「居住地」を基準にデータの分析を行うことで、各地の母子保健サービスの状況をより正確に把握できると考えました。プロジェクトでは、この手法で得られたデータをプロジェクト公式会議の場や、政策決定者との個別面談の機会を設けて積極的に共有しています。そのような直接的な訴えの結果、例えば施設分娩率が他の町より低い町の町長が、実際にそのデータを見て母子保健サービスの質向上により意欲的になってもらえるといった効果が出ています。

これまで活動対象地域であるベンゲット州、アパヤオ州、アブラ州内6町のみでこの手法を活用していましたが、第4年次に保健省コーディレラ地域局からこれら対象地域外へも導入してほしいとの要望を受けました。その後、アブラ州プロジェクト対象外21町、マウンテンプロビンス州10町中5町、イフガオ州11町中8町、カリンガ州全8町が最終的に導入を決定し、プロジェクトが支援を行うことになりました。

2015年8月14日、イフガオ州ラガウェ町での導入オリエンテーション開始に続いて、他州においても9月中旬以降順次実施しています。

導入オリエンテーションの実施後は施設を訪問し、データ入力方法に誤りがないか確認を行っています。プロジェクトでは今後、2015年1月から1年間の出産記録を収集してもらい、提出されたデータを集計・解析し、各地域において情報共有を行い母子保健サービスの向上に役立ててもらう予定です。

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プロジェクトTCLオリエンテーションの様子(アブラ州にて開催)

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新たにプロジェクトTCL導入を決めたカリンガ州の町保健所でのモニタリングの様子