プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)災害リスク軽減・管理能力向上プロジェクトフェーズ2
(英)Disaster Risk Reduction and Management Capacity Enhancement Project Phase II

対象国名

フィリピン共和国

署名日(実施合意)

2019年8月6日

プロジェクトサイト

フィリピン共和国 市民防衛局(OCD)本部(マニラ)、リージョンIV-A(カラバルソン地方)及びリージョンVII(中部ビサヤ地方)

協力期間

2019年9月18日から2024年9月17日

相手国機関名

(和)国防省市民防衛局(OCD)
(英)Office of Civil Defense

背景

フィリピンは日本と同様に台風、洪水、地震、火山等の自然災害多発国である。国連大学の世界リスク報告(World Risk Report 2018)によると、同国は最も自然災害のリスクにさらされている国の一つであり、世界リスク指標(World Risk Index)にて世界172ヶ国のなかで3位となっている。2005年から2014年までに発生した自然災害による直接被害額は1,82,9億フィリピンペソにのぼり、年平均2,000人以上の命が失われ、人的及び経済的な側面からも、自然災害は持続可能な開発を阻害する一因となっている。
国防省市民防衛局(Office of Civil Defense。以下「OCD」)は、2010年に制定された「災害リスク軽減・管理(Disaster Risk Reduction and Management。以下「DRRM」)法」によって、国家災害リスク軽減管理評議会(National Disaster Risk Reduction and Management Council:NDRRMC)の事務局としてDRRM活動の中心的組織に位置づけられた。それに伴ってこれまでの発災後の緊急対応に加え、予防・軽減を含む多様な防災活動の実施及び促進することが求められるようになり、組織や人材の能力強化が喫緊の課題となっている。
JICAは「災害リスク軽減・管理能力向上プロジェクト(以下「フェーズ1」。2012-2015年)」や長期専門家派遣(2012年~2015年、2015年~2017年、2018年~)を通じて、OCDが中央防災機関として他関連機関との調整や防災主流化の促進等を実施できるよう、組織強化及び人材育成の支援を実施した。その結果、同国におけるDRRMの取り組みは近年飛躍的に強化されてきたものの、地方自治体(Local Government Unit:LGU)におけるDRRM活動の展開やモニタリング体制の強化など、抱える課題はいまだ多い。かかる状況から、防災関係機関を巻き込んださらなるOCDの実施・調整能力強化や地方におけるDRRM活動の促進を目的とした「災害リスク軽減・管理能力向上プロジェクトフェーズ2(以下、「本プロジェクト」)」の要請を先方政府より受けた。
その後JICAは、2017年11月~12月に詳細計画策定調査を実施し、その結果をもとに2019年8月6日にOCDとの間で本プロジェクトの詳細を記載したRecord of Discussions(以下「R/D」)を締結した。

目標

上位目標

自然災害による人的及び経済的被害軽減のため、国家災害リスク軽減管理評議会(NDRRMC)のイニシアティブの下でプロジェクト成果がフィリピンで展開される。

プロジェクト目標

地方管区(リージョン)及び地方自治体(州、市、町)において、NDRRMCに集約される国家防災体制の技術的なサポートのもと、自然災害による人的及び経済的被害削減のための防災施策立案、実施及びモニタリング体制が整備される。

成果

1. 地方管区災害リスク削減管理委員会(Regional DRRM Council:RDRRMC)、地方自治体災害リスク削減管理委員会(Local DRRM Council:LDRRMC)メンバーを中心とした地方管区及び地方自治体の防災関連職員が、当該地域の災害リスクを理解し、災害対策によるリスク削減につながるハザード情報の活用・リスク評価の実施に関するガイドラインが策定される。
2. 人的及び経済的被害削減のために災害リスク情報に基づいた地方管区/地方自治体防災計画策定ガイドラインが策定される。
3. 地方管区/地方自治体防災計画の立案、改訂、実施に係るOCDの情報管理(仙台防災枠組等の国際枠組の指標を含む)及びモニタリング評価の仕組みが構築される。
4. フィリピンにおいて、本プロジェクトの成果を普及し、地方管区及び地方自治体を対象とする研修を実施するための研修の仕組みが構築される。

活動

1-1. ハザード評価・情報の現状と課題を整理する。
1-2. リスク評価・情報の現状と課題を整理する。
1-3. 地方管区及び地方自治体の防災関連職員が、地域のリスクを理解し、対策によるリスク削減を実感できるリスク評価手法を検討する。
1-4. パイロット地方管区内のパイロット地方自治体の選定基準を設定し、選定する。
1-5. 活動1-3で検討した手法を用いて、既存のハザード情報に基づき、リスク評価を実施するパイロット地方管区/地方自治体を支援する。
1-6. ハザード情報の活用・リスク評価の実施に関するガイドライン案を作成する。
1-7. 活動4-5の結果に基づき、活動1-6で作成したガイドライン案を改訂する。

2-1. 地方管区/地方自治体防災計画の現状と課題を整理する。
2-2. 地方管区、州、市、町それぞれのレベルで実施すべき、災害リスク情報に基づいた人的及び社会的被害を軽減する災害対策メニュー案を検討する。
2-3. 活動1-5で実施するリスク評価に基づいた人的及び経済的被害削減のための地方管区/地方自治体防災計画をパイロット地方管区/地方自治体が策定するのを支援する。
2-4. 関連計画(開発計画、土地利用計画、気候変動活動計画等)との関係を整理し、地方管区/地方自治体防災計画の内容をパイロット地方管区/地方自治体が調整することを支援する。
2-5. 地方管区/地方自治体防災計画の立案と改訂に関するガイドライン案を作成する。
2-6. 活動4-5の結果に基づき、活動2-5で作成したガイドライン案を改訂する。

3-1. 地方管区/地方自治体防災計画に関するOCDの情報管理の現状と課題を整理する。
3-2. 地方管区/地方自治体防災計画の立案、改訂、実施に係るOCDの情報管理及びモニタリング評価システムと手法を検討する。
3-3. 活動3-2で検討したシステムを実際に動かすため、ガイドライン案を作成し、モニタリング評価体制を確立する。
3-4. 活動3-3で作成したガイドライン案及び確立したモニタリング評価体制について、全OCD地方管区事務所を対象としたワークショップを開催する。
3-5. 活動3-3で作成したガイドライン案及び確立したモニタリング評価体制に基づき、パイロット地域で活動を実施する。
3-6. 活動3-5と活動4-5の結果に基づき、活動3-3で作成したガイドライン案を改訂するとともにモニタリング評価体制を見直す。

4-1. 国家災害リスク削減管理研修センター(NDRRM TI)の設立計画を含む防災に関する研修の現状と課題を整理する。
4-2. 研修実施体制を検討する。
4-3. 活動1-6、2-5及び3-3で作成したガイドライン案に基づき、地方管区及び地方自治体向け研修プログラム・モジュール案を策定する。
4-4. 活動4-3で作成した研修プログラム・モジュール案について、全OCD地方管区事務所を対象としたワークショップを開催する。
4-5. パイロット地域において、活動3-3及び4-2で検討したモニタリング評価体制及び研修実施体制の下、活動4-3で作成した研修プログラム・モジュール案を使って、研修を実施する。
4-6. 活動4-5の結果に基づき、活動4-2で検討した研修実施体制を見直すとともに活動4-3で作成した研修プログラム・モジュール案を改訂する。
4-7. 本案件の成果を普及し、地方管区及び地方自治体を対象とした研修を実施するために、研修実施計画(スケジュール、予算、講師養成研修等を含む)を策定する。

投入

日本側投入

1. 専門家派遣:総括/防災行政、防災計画、災害リスクアセスメント、ハザード情報、構造物対 策、非構造物対策、開発・土地利用計画、防災情報、普及体制構築、防災技術、能力開発
2. 本邦研修/招へい

相手国側投入

1. カウンターパートの配置
・プロジェクトダイレクター
・プロジェクトマネージャー
・各成果グループリーダー 等
2. 案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供