セルビア国ベオグラード市と英国ロンドンとの共同オンラインセッションを開催しました

2021年11月17日

ベオグラード市公共交通改善プロジェクト(以下、本プロジェクト)では、英国・ロンドンにおける第三国研修を実施する予定です。研修に先立ち、ベオグラード市における公共交通の早期の運営改善と現地研修における理解をより深めることを目的として、10月18日にロンドンと共同でオンラインセッション(以下、本セッション)を開催しました。

参加機関

・ベオグラード市:Secretariat for Public Transport(以下、SfPT)
・ロンドン:Transport for London(ロンドン交通局、以下、TfL)
・日本:JICA及びJICAプロジェクトチーム

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本セッションのスクリーンショット

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本セッションのスクリーンショット

オンラインセッションの概要

TfLは、シティ・オブ・ロンドンと32の特別区から成るグレーターロンドンにおける公共交通事業を所管する機関で、交通政策の実行と地下鉄やバスなど交通システムの運営を行っています。本セッションでは、バス運行計画及びバス事業者との運送契約について情報収集を行いました。

TfLから紹介のあったグレーターロンドンにおけるバス運行計画及びバス事業者との運送契約に関する主な取組は以下のとおりです。

1.バス運行計画

バスの運行計画については、TfLが運行ルート、頻度、時間、投入車両数などを決定し、詳細な運行計画は各運行事業者により策定されます。運行計画策定にあたっては、利用者の移動時間を指標として費用便益分析を行っており、運行計画を変更する際は、このほかにも、コストの試算、運賃収入の予測、乗客の利便性を総合的に勘案した上で実施しています。

近年、上記の分析作業に係る労力・コストの削減のために、EVALと呼ばれる新たなシステムを導入しました。本システムにより、バスカードの利用実績から得られるODデータや様々な指標を収集・分析に用いることで、既存利用者に対する影響や新たな利用者数を算定するほか、乗客の待ち時間と収益の変化を予測できるようになりました。これら先進技術を用いることにより、利用者満足度の更なる向上を目指しています。

2.バス事業者との運送契約

グレーターロンドンにおけるバスは、元々はTfLの直営で運行されていましたが、1985年以降は入札制度が実施されています。事業者との契約に関しては、ベオグラード市と同様、運賃収入に関わらず運行距離実績に応じた運行費用を各事業者に支払うアベイラビリティペイメント(Gross Cost)契約となっていましたが、1995年から事業者が料金収入を直接得るNet Cost契約に変更した結果、バスサービスの評価指標の一つである超過待ち時間(excess wait time)が悪化するなどバスサービスの品質に影響を及ぼす問題が生じました。

そのため、2000年以降契約方法を見直し、現在はGross Cost契約をベースとしたQuality Incentive契約を採用しています。本契約においては、基準を上回るサービスレベルが達成された場合はボーナスが支払われますが、下回った場合は減額措置が適用されます。運賃収入をTfLが担当する一方で、運行事業者にサービスレベルの向上に対して金銭的なインセンティブを与え、結果としてexcess wait timeなどの指標が改善されてきています。

上記のとおり、本セッションでは、ベオグラード市における公共交通運営を改善していくために今後検討すべき施策や課題について、TfLの取り組みから多くのヒントを得ました。今後も、第三国からのヒアリングや現場視察を重ね、得られた知見をベオグラード市の公共交通運営の向上に向けて反映させるべく、活動を続けていきます。