プロジェクト活動

業務実施体制

ソマリアの不安定な治安事情によりプロジェクト関係者が現地に入れないため、主な活動はケニアなど近隣国で行っています。現地で直接活動ができないという制約はありますが、様々な工夫を施すことで、プロジェクトの成果を最大限生み出す努力をしています。
例えば、ソマリアの政府関係者(以下、カウンターパート)とは、ソマリア・ケニア・日本をオンラインで繋ぎ、定期的にコミュニケーションを取ることで遠隔からでも連絡・調整できる体制を整備しました。さらに、重要な意思決定等を行う場合には、できる限り直接顔を合わせて議論し慎重に合意形成を行っています。また本事業では、国際移住機関(IOM)と連携し、ソマリア人の専門家をカウンターパートの関連省庁に派遣し、現地での細やかな連絡・調整を担当してもらうことで、現地レベルでの信頼関係の醸成も可能としています。

活動概要

本事業のパイロット産業として選定された分野では、若年層雇用にかかる政策または戦略計画の策定及び、講師育成研修を実施します。これに加え、起業家/中小零細企業の能力強化のためのワークショップを行います。各種研修やワークショップを実施した後にソマリア国内でのフォローアップを行うためには、現地パートナーとの緊密な調整と連携が必要となります。これについて、JICAは国際移住機関(IOM)と連携し、ソマリア人ディアスポラの専門家を計画・投資・経済開発省や関連省庁に派遣しています。また、現地で活動する開発パートナーと積極的に情報交換を行い、現地に日本人が入れない中でのソマリア国内でのフォローアップ活動の実施方法、進捗と成果のモニタリング評価の方法等を検討しています。

第1フェーズの活動

第1フェーズ(2018年2月から2019年12月まで)では主に以下の活動を行いました。

1)パイロット産業の選定

プロジェクトでは、主要産業の情報収集とその分析結果をもとに、産業自体の成長と若年層の起業・雇用創出のポテンシャル、他の援助関係機関との連携の可能性などを考慮し、カウンターパートとの議論を通じてパイロット産業を段階的に特定してきました。2018年11月に水産分野を第1パイロット産業に選定し活動を実施しました。2019年12月には新たに建築分野を第2パイロット産業に選定し、第2フェーズからは建築分野に対する活動も進めています。

2)パイロット産業1(水産)における人材育成を含めた政策の策定支援

水産・海洋資源省の水産政策を策定したいという強いニーズに応え、同省のカウンターパートと水産政策の内容について協議し、第1案の作成を支援しました。

3)パイロット産業1(水産)に対する講師育成研修の実施

カウンターパート、大学、漁業組合などから人材育成に関わるメンバーを選定し、講師育成研修を実施しました。ソマリアと同じ海洋に面するタンザニアで浮漁礁などの漁具や漁法、加工といった漁業生産技術の他、同産業にとっての課題である組織化やマーケティング、資源管理なども含め、実習と講義を組み合わせた実践的な研修を実施しました。

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海上での航行実習の様子

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漁法の実践で餌を取り付ける様子

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加工技術(干し魚)実習の様子

4)起業支援ワークショップの開催

ソマリア国内で起業家・中小零細企業の支援を行っている支援機関から選定したメンバーと、カウンターパートを対象に、ウガンダで起業支援ワークショップを開催しました。プログラムには、問題分析やビジネスモデル構築の手法の実践、パネルディスカッションやビジネスの視察、ソマリア国内での研修や支援プログラムの検討などを盛り込み、参加者からも高い評価を得ることができました。ワークショップ終了後には、参加者や講師、ファシリテーター、専門家の間でアプリを利用したネットワークを立ち上げて、様々な情報を共有したり、遠隔から活動をモニターしたりしています。

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参加者のグループワークの様子

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グループワークの成果を発表する参加者(右)とコメントする専門家(左)

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ウガンダの起業家とのディスカッションの様子

第2、3フェーズの活動

第2フェーズ(2020年1月から2021年12月)及び第3フェーズ(2022年1月から2022年12月)では主に以下の活動を実施する予定です。
・第2パイロット産業(建築)に係る研修の実施
・第3パイロット産業の選定と研修の実施
・第2、第3パイロット産業の若年層雇用政策や戦略計画の策定
・起業家支援に関する研修やネットワーク構築