プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)品質・生産性向上(カイゼン)プロジェクト
(英)Quality and Productivity (Kaizen) Project

対象国名

南アフリカ共和国

署名日(実施合意)

2022年3月28日

プロジェクトサイト

南アフリカ全域を対象としつつ、活動は主として以下の地域で実施する。
・ハウテン州:プレトリア及びヨハネスブルグを中心とする地域
・クワズール・ナタール州:ダーバンを中心とする地域
・東ケープ州:ポートエリザベスを中心とする地域

協力期間

2022年6月26日から2027年6月25日

相手国機関名

(和)貿易産業競争力省
(英)the Department of Trade, Industry and Competition (the dtic)

背景

南アフリカは、一人当たりGNIが5,410ドルを超え、高中所得国に分類されているが(DAC、2021)、これまで、金やダイヤモンド、白金等の世界有数の鉱物資源国として鉱業主導の経済成長を果たし、蓄積された資本を製造業や金融業等の他産業に投資することで成長を維持してきた。鉱物資源は同国の輸出品目の約47%を占め(南アフリカ歳入庁、2018)、依然として資源依存度が高い中、世界的な資源価格の下落の影響を受け、2015年以降は実質GDP成長率が1~2%の低水準で推移し、経常赤字と財政赤字が続いている。また、1990年代後半から2008年まで、実質GDP成長率(年率平均)が約4%を維持していた間も、失業率は悪化の傾向にあり、その後の長引く低成長を受け、雇用者数は一層伸び悩み、雇用不安が広がっていた。そのような状況で、新型コロナ感染拡大は追い打ちとなり、2020年の実質GDP成長率はマイナス6.96%を記録し、失業率も34.4%と大幅に悪化した。2022年以降も35%程度で高止まりすると予測されている(南アフリカ統計局、2021)。

南アフリカ政府は「国家開発計画2012-2030」において、雇用機会の創出と格差是正を喫緊の課題と位置づけており、2030年までに1,100万人の新規雇用を創出し、失業率を6%に低減することを目標に掲げている。また、同国の経済は国際商品市況の動向に影響を受けやすく、特定産業に偏重した貿易構造が安定的な経済成長を実現する上で弊害になっているとの認識から、より内発的かつ低スキル労働者の雇用吸収力が大きい製造業に比重を置き、輸出産業の多角化を図ろうとしている。新型コロナ感染拡大による影響を受けた後も同政策に特段の変更は見られない。例えば、2020年に貿易産業競争省が発表した「Strategic Plan 2020-2025」では、自動車産業や縫製業等の優先産業セクターにおいてマスタープランを策定することとなり、長期的な成長、持続可能性、雇用創出を推進するための政府と民間企業双方のコミットメントが明示されている。

南アフリカの産業振興に関し、我が国は、「産業人材育成アドバイザー」の派遣(2011~2018年)や「産業政策対話」(2015~2016年)、「自動車産業人材育成アドバイザー」の派遣(2017~2020年)等の協力を行ってきた。直近の協力では、幅広い裾野産業の形成により高い雇用創出力を有する自動車産業に着目し、サプライヤー企業が品質・コスト・納期の点で十分な国際競争力がなく、品質・生産性の向上が必要と考えられたことから、ハウテン州成長開発局傘下の自動車産業開発センターをカウンターパートとし、自動車産業サプライヤーを対象とする品質・生産性向上(カイゼン)(Quality and Productivity Improvement(Kaizen)。以下、「QPI(カイゼン)」)の指導を行い、企業競争力の強化を図ってきた。この協力を通じ、トヨタ生産システムに沿って生産現場でQPI(カイゼン)指導を実施できるコンサルタントが養成され、サプライヤー企業に対するQPI(カイゼン)研修が実施された。他方、現地人材による研修及び普及活動全体の仕組みづくりまでは十分に行うことはできず、今後のQPI(カイゼン)活動の持続的・自立的な普及基盤となる組織体制の構築及び強化が必要とされた。

このような背景の下、南アフリカ政府は我が国に対し、自動車産業に限らず製造業全体について、QPI(カイゼン)の知識・技術を普及させ、品質・生産性を向上するための技術協力を要請した。同要請に基づき、本案件では、民間のコンサルティングサービスが大企業向けであり、資金力に乏しい中小零細企業がかかるサービスにアクセスできない同国の実態を踏まえ、中小零細企業が廉価でQPI(カイゼン)指導の提供を受けられるビジネスモデルの確立を目指す。

目標

上位目標

南アフリカにおいてQPI(カイゼン)の知識と技術が普及し、企業競争力が強化される。

プロジェクト目標

QPI(カイゼン)の知識と技術を継続的に伝達し、QPI(カイゼン)活動を全国に普及するthe dtic及び関連組織ネットワークの能力と実施体制が強化される。

成果

成果1:QPI(カイゼン)の知識と技術を持続的な方法で全国に普及するNQPNをthe dticが設立・管理する能力が強化される。
成果2:コンサルタントや企業向けにQPI(カイゼン)研修を提供するNQPNの運営能力が強化される。
成果3:QPI(カイゼン)の知識と技術の普及活動を行うNQPNの能力が強化される。

活動

活動1-1.the dticが局内にQPI(カイゼン)ユニットを形成する。
活動1-2.QPI(カイゼン)ユニットがNQPNのコア・ボディの基本的なフレームワークを策定し、競争的な方法で適切な実施主体を選定する。
活動1-3.NQPNのコア・ボディは、業界団体やQPI(カイゼン)関連機関と協力し、QPI(カイゼン)研修及び普及計画を策定する。
活動1-4.QPI(カイゼン)ユニットは必要な予算措置や他機関から資金動員を行うとともに、NPQNの活動をモニタリングする。
活動1-5.NQPNのコア・ボディは、業界団体やQPI(カイゼン)関連機関と協力し、QPI(カイゼン)研修及び普及計画を定期的に見直す。
活動1-6.NQPNは業界団体を通して、QPI(カイゼン)活動のインパクトに関するデータを収集し、分析する。

活動2-1.NQPNのコア・ボディは、QPI(カイゼン)関連機関と協力し、活動1-3で策定した研修計画にもとづいて、QPI(カイゼン)研修プログラムを作成する。
活動2-2.NQPNは、業界団体やQPI(カイゼン)関連機関に対して、QPI(カイゼン)研修を実施する。
活動2-3.NQPNは、主に対象産業セクターのパイロット企業に対して、QPI(カイゼン)研修を実施する。
活動2-4.NQPNのコア・ボディは、QPI(カイゼン)研修の結果にもとづいて、QPI(カイゼン)研修のプログラムを改訂する。
活動2-5.NQPNのコア・ボディは、QPI(カイゼン)活動の優れた実践をベンチマークするために他国でのスタディツアーを実施する。

活動3-1.NQPNのコア・ボディは、QPI(カイゼン)セミナーやワークショップ、会議を開催し、好事例を共有する。
活動3-2.NQPNのコア・ボディは、QPI(カイゼン)の知識と技術を普及するための広報活動を行う。
活動3-3.NPQNのコア・ボディは、QPI(カイゼン)研修の結果にもとづき、QPI(カイゼン)普及プログラムの内容を改訂する。
活動3-4.NQPNはJICAの関連プロジェクト等に対して、関連データの提供や支援を行う(「南アフリカ国自動車産業カイゼン・インパクト評価」等)
活動3-5.NQPNは、アフリカ・カイゼン・イニシアティブのメンバー国とQPI(カイゼン)に関する知見や技術を共有し、相互学習を促す。

投入

日本側投入

1)専門家派遣(合計約155M/M):
・総括/QPI(カイゼン)方針策定/組織体制構築
・QPI(カイゼン)普及展開
・QPI(カイゼン)フレームワーク強化支援
・QPI(カイゼン)サービス提供
・経営能力強化
・デジタル技術活用
・研修計画/広報/業務調整
その他、必要に応じて検討する。
2)研修員受け入れ:本邦研修及び/又は第三国研修
3)機材供与:(プロジェクト開始後のベースライン調査で供与機材を決定予定)

相手国側投入

1)カウンターパートの配置:Project Director、Deputy Project Director、Project Manager、プロジェクト担当者
2)案件実施のための専門家の執務室及び執務環境、通信費、備品等の提供
3)カウンターパートに係る経費(給与、交通費、国内旅費等)
4)普及啓発活動、研修実施にかかる運営経費