プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)コミュニティにおける高齢者向けサービス運営能力強化プロジェクト
(英)The Project for Capacity Enhancement of Elderly Service Management in the Community

対象国名

スリランカ

署名日(実施合意)

2020年2月20日

プロジェクトサイト

西部州コロンボ県(カドゥウェラ郡アトゥルギリヤ地区及びパードゥッカ郡)、ウバ州バドゥッラ県(カンダケテイヤ郡)

協力期間

2022年2月3日から2025年2月2日

相手国機関名

(和)保健省、女性・子ども・ソーシャルエンパワーメント省
(英)Ministry of Health, Ministry of Women, Child Affairs and Social Empowerment

背景

スリランカの総人口(2021年)は約2,177万人で、65歳以上の割合は約11%ですが、2050年には65歳以上の割合が人口の21%を超えると予想されています(出典:United Nations World Population Prospects 2022)。社会の高齢化に伴って非感染性疾患による疾病負担も増大しており、また認知症の有病率が増えることも予想されています。これらの健康課題に対応するための保健医療サービスのニーズが増大するだけでなく、複数の障害を抱えたまま社会生活を送る高齢者も増加すると予測され、社会サービスのニーズへの対応も求められています。こうした状況の中、スリランカ政府は高齢者ケア政策に関する議論を進めてきており、2006年に高齢者に係る国家政策が閣議決定され、2022年9月現在改訂版の策定が進められている。また、2017年1月には国家高齢者保健政策(National Elderly Health Policy)が閣議決定され、同国における高齢者ケアが国家として優先的に取り組むべき課題として位置付けられました。本保健政策では保健サービス提供体制を強化するためのメカニズムの確立、セクター横断的な調整、治療、予防、リハビリテーションといったサービスを公平かつ包括的に提供するための施設整備や人材育成、根拠に基づいた研究支援など7つの戦略が位置づけられています。しかしながら、この政策の検討過程において、高齢者に対する医療施設におけるケアのニーズに既存の医療施設のキャパシティが追い付いておらず、また、在宅での高齢者ケアを支援する地域医療・福祉体制が整っていないことから、ケアの必要な高齢者は医療施設、在宅のいずれにおいても十分なケアが受けられていない現状が浮き彫りとなっています。保健省はこうした課題に対し、既存の医療施設に中間ケア病床を設けるなどの対策を始めているものの、ケアを必要とする高齢者に対するコミュニティにおける医療・社会サービス提供体制に対しては十分な対策がとられておらず、喫緊の課題となっています。

目標

上位目標

コミュニティにおける高齢者への医療・社会サービス提供モデル(以下、モデル)が他地域への展開に向けて活用される。

プロジェクト目標

モデルが他地域への展開に向けて発信される。

成果

1.パイロットサイトにおいて、コミュニティでの医療・社会サービス提供に係る計画・調整メカニズムが構築される。
2.パイロットサイトにおけるコミュニティでの高齢者に対する医療・社会サービス提供に関する現状が、成果1で構築された計画・調整メカニズムにより分析される。
3.コミュニティでの高齢者に対する医療・社会サービス提供モデルがパイロットサイトで開発される。
4.中央レベルにおける保健・社会セクターの連携や、中央レベルと地方レベルの連携が強化される。
5.モデルの他地域への展開に向けた提言が作成される。

活動

1-1.各パイロットサイトでプロジェクト活動の関連機関と関係者を特定する。
1-2.各パイロットサイトでワーキングコミッティーを設立する。
1-3.各ワーキングコミッティーは、ワーキングコミッティーに参加する関連機関と関係者の役割と責任を明確にする。
1-4.各ワーキングコミッティーは、各パイロットサイトにおいてワーキングコミッティーの活動計画を作成する。

2-1.高齢者とその家族の情報及び医療・社会サービスの情報を収集するための質問票を作成する。
2-2.各ワーキングコミッティーは、各パイロットサイトにおける高齢者と家族の状況を調査・分析する。
2-3.各ワーキングコミッティーは、各パイロットサイトにおける病院とコミュニティでの医療サービスの状況を調査・分析する。
2-4.各ワーキングコミッティーは、各パイロットサイトにおけるコミュニティでの社会サービスの状況を調査・分析する。
2-5.各ワーキングコミッティーは、各パイロットサイトにおける高齢者への医療・社会サービス提供のメカニズムを明らかにする。
2-6.各ワーキングコミッティーは、調査・分析結果に基づき、各パイロットサイトにおける高齢者への医療・社会サービス提供の具体的な課題を特定する。

3-1.各ワーキングコミッティーは、各パイロットサイトにおいて優先度の高い課題を複数特定する。
3-2.各ワーキングコミッティーは、各パイロットサイトにおいて特定した優先課題を解決するための活動計画を作成する。
3-3.活動計画に基づき、各パイロットサイトで高齢者への医療・社会サービスが提供が試行される。
3-4.各ワーキングコミッティーは、活動計画の実施をモニタリング・評価し、必要な活動計画の修正を行う。
3-5.上記の活動に基づき、各パイロットサイトでモデルが最終化される。

4-1.プロジェクト活動の調整・モニタリングを行うため、中央・州・県レベルの医療・社会サービスに関する機関を特定する。
4-2.パイロットサイトおけるワーキングコミッティーの活動を支援するためのプロジェクト実施コミッティー(PIC)及びテクニカルワーキング(TWG)を設立する。
4-3.PIC及びTWGsはプロジェクト活動を定期的にモニタリング・評価する。
4-4.PICは定期的にTWGsと各ワーキングコミッティーにフィードバックを行う。

5-1.プロジェクト(スリランカ側及び日本側)はモデルの他地域への展開のための教訓と示唆を抽出する。
5-2.プロジェクト(スリランカ側及び日本側)はモデルの他地域への展開のための提言を文書化する。
5-3.プロジェクト(スリランカ側及び日本側)は関連機関に提言を提出する。
5-4.プロジェクト(スリランカ側及び日本側)はモデルの発信とベストプラクティスの共有を目的とした国内・国外セミナーを実施する。

投入

日本側投入

1)専門家派遣:高齢者ケア、社会サービス、研修
2)研修員受け入れ:本邦研修、第三国研修
3)機材供与

相手国側投入

1)カウンターパートの配置
2)案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供
3)オフィススペースの提供