第1回渡航での現地視察結果

2022年11月21日

対象地域のサプライチェーンの現状や2022年3月に起きたスリランカ経済危機の影響を調べるため、日本人専門家4名は、カウンターパート職員とともに、2022年11月9日~11日に中央州ヌワラエリヤ県とウバ州バドゥッラ県、11月14日~15日に北中部州アヌラダプラ県で、近代的流通システムとしてスーパーや民間業者の集荷センター、伝統的流通システムの要となる農産物公設市場(Dedicated Economic Center; DEC)、農家グループ等を視察しました。

近代的流通システムを代表するスーパーや民間業者の集荷センターは、伝統的な農産物公設市場を通した取引と比べて、自社基準を満たした野菜を約2~3割高値で買い取り、通い箱を用いて冷蔵車で運搬します。これに対して、伝統的流通システムでは、野菜はビニール袋やメッシュ袋に詰められトラックの荷台に乗せて運ばれるため、適切な温度管理ができず多くのロスが発生しています。

また、ひとくくりに伝統的流通システムと言っても、生産される作物だけでなく、農民から仲介業者や集荷業者への引き渡し場所、取引価格の決定プロセス、売買代金の支払い方法など、取引形態が地域によって大きく異なることが分かりました。

昨年の化学肥料の輸入禁止や経済危機の影響により、スリランカ国内では肥料不足や価格高騰が続いています。その結果多くの中小規模農家は肥料を入手できず、一部の農家は野菜生産そのものを中止していました。一方、資金力のある大規模農家は、設備投資による生産コスト削減や生産性向上に努め例年と変わらない生産量を維持し、高騰した野菜価格のおかげで、むしろ収益が増大する事例もみられました。

スリランカ経済危機は農村部、特にプロジェクトで対象とする中小規模農家への打撃が大きいことから、プロジェクトにおけるSHEP活動やサプライチェーン強化の重要性は一層増していると言えます。こうした状況を踏まえ、プロジェクトでは、バリューチェーン分析調査を通して農産物流通に関する詳細な調査・分析を行い、サプライチェーンアクションプランを具体化する予定です。

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大手スーパー向け民間集荷場。全ての野菜を洗浄・選別した後、通い箱を使って冷蔵車で運搬する。(ウバ州バドゥッラ県)

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伝統的流通システムでは、野菜はビニール袋等に詰められ、トラックの荷台に乗せて運ばれる。(ウバ州バドゥッラ県カッペティポラDEC)

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屋根がないため、取り扱われる野菜・果物は直射日光に長時間晒され、多くのロスが発生する。(北中部州アヌラダプラ県タンブッデガマDEC)