バリューチェーン分析調査

2023年6月30日

調査の目的は、代表的であり有望ないくつかの園芸作物のバリューチェーン分析をすることで、どこに、どのようなボトルネックがあるかを特定し、サプライチェーンの関係者の参加を通じて、そのようなボトルネックの克服を促進するメカニズムを提案することです。調査では、対象地域を高地と低地に分けてそれぞれ代表的な作物を選び、バリューチェーン情報・データの収集と分析を行いました。具体的には高地作物としてニンジンと緑豆(Nuwara Eliya)、ジャガイモ(Badulla)、低地作物としてバナナとナス(Anuradhapura)を選びました。

調査は、スリランカ国内で農産物バリューチェーン調査の経験豊富な、ヘクター・コベガドゥワ農業研究研修所(HARTI)に再委託して実施しました。

調査の結果、伝統的流通システムでは、農業投入財の輸入依存、未熟な栽培技術による非効率な農業生産、多くの仲買人の介在、収穫後処理や輸送中の不適切な温度管理に起因する高いポストハーベストロスなど、従来から認識されているスリランカ農業の問題点が改めて浮き彫りになりました。

また、伝統的流通システムと近代的流通システムを問わず、近年の政府の化学肥料輸入禁止措置や経済危機、ルピー安に起因する輸入農業投入財の価格高騰と滞留在庫による品質の劣化、原油価格高騰による輸送コスト高、ひいては野菜の市場価格の急騰、消費者の野菜買い控えによる需要減少、といった新しい問題も報告されました。

調査結果で明らかとなった、新たに起きている問題に対処するため、サプライチェーン強化アクションプランでは、(1)農民グループが高品質の種子を適切な価格で入手する方法の確立、(2)消費者向けに栄養改善の観点からの野菜消費キャンペーン、(3)政府の農民支援スキーム活用促進などのパイロット活動が加えられました。たとえば、(3)の「政府の農民支援スキーム活用促進」パイロット活動では、政府の農民向け支援事業を農民グループに周知してもらい、政府=農民間の情報ギャップの克服を促進することで、政府の農民向けスキームの利用拡大を目指しています。今後アクションプランを最終化し、実施に向けた準備を進めて参ります。

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バリューチェーン分析調査、最終報告書の表紙

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バリューチェーン分析の一例(農家類型毎の緑豆種子調達の分析)