プロジェクト概要

プロジェクト名

サプライチェーン強化を通じた中小規模農家の生計向上プロジェクト

対象国名

スリランカ

署名日(実施合意)

2021年5月10日

協力期間

2021年7月1日から2025年12月31日

相手国機関名

農業省農業

背景

スリランカはインド洋に位置する人口約2,192万人(スリランカ中央銀行,2020年)の島国である。一人当たりGNIは3,720米ドル(世界銀行、2020年)であり、低中位所得国に分類される。近年、スリランカのGDPに占める農林水産業の割合は8.3%(世界銀行、2020年)、労働人口に占める農業従事者の割合は26.5%(スリランカ統計局、2020年)で、低下傾向にあるものの、全人口の78.3%が農村部に住み、その81%が貧困層である(スリランカ統計局、2019年)。貧困削減、地域格差是正及び地域経済の安定化の観点からは、農業生産性の向上と農家の生計向上が依然として重要な課題である。2019年に発表された国家農業政策(National Agriculture Policy:NAP)(2020~2030年)では、従来の生産性向上に加え、農村地域の経済開発、農業の国際競争力の強化、生計の改善、気候変動への対応力の向上をより重視した政策への移行を打ち出しており、農業普及に関しては、農家の技術不足に対し有用技術の効率的普及や市場情報の普及促進の必要を挙げている。また、JICAが実施したスリランカの地方部における農産物サプライチェーンに関する調査結果では、農家がアクセスできる流通経路や販売先が限定的である上、流通段階が多く、中間業者による輸送コスト及び手数料が農家の生計向上の障害となっていることが指摘されている1。本事業では、農家の栽培技術の不足や限られた市場へのアクセスの課題に対し、JICAが農家の生計向上に有効なものとして推進している市場志向型農業振興(SHEP)アプローチ2を活用し、農家がより市場のニーズに合った作物を生産し、主体的に販売先を探求できるようになることを目指す。また、農家および市場関係者が抱える問題の改善に資する、サプライチェーンの強化に関する活動を通じ、ひいては農家の生計向上を目指す。

目標

上位目標

プロジェクト対象地域において、サプライチェーンが広く強化され、中小規模農家の生計が向上する。

プロジェクト目標

プロジェクト対象の中小規模農家が関わるサプライチェーンが強化され、対象農家の生計が向上する。

成果

1.SHEPアプローチを活用したサプライチェーン強化のアクションプランが関係者間で策定・合意される。
2.対象中小規模農家の市場志向型農業実践のための能力が開発される。
3.対象地域の園芸作物に係るサプライチェーンが強化される。
4.本プロジェクトを通じて得た経験や知識が国内で広く共有される。

活動

1-1.民間業者からの聞き取りを含む現地調査に基づき、関係者間で園芸農業適地から対象地域を選定する。
1-2.スリランカの状況に合わせたSHEPアプローチを関係者間で検討し、SHEPに係るアクションプランを策定する。
1-3.対象地域の中小規模農家が関わる園芸作物のサプライチェーン(生産・流通・販売)の強化について議論する産官学フォーラムを開催する。
1-4.産官学フォーラムにおいて、活動1-2で策定したSHEPのアクションプランについて発表し、関係者間で合意する。
1-5.産官学フォーラムの議論を受けて、園芸作物のサプライチェーン分析のワークショップを行い、園芸作物のサプライチェーン上の課題を明らかにする。
1-6.特定された園芸作物のサプライチェーン上の課題について、各関係者の役割を確認し、実施可能なサプライチェーン強化に係るアクションプランを策定・合意する。

2-1.本邦研修でSHEPアプローチを習得したC/Pが、行政官や普及員に対して同手法を指導する。
2-2.対象の各地域で農民グループを選定(形成)する。
2-3.活動1-2のSHEPアプローチのアクションプランに基づいて、普及員が対象農家グループに対してSHEPアプローチの活動を実施する。
2-4.対象農家グループの活動をモニタリングし、改善すべき事項を反映させたスリランカ版のSHEPマニュアルを作成する。

3-1.活動1-6のサプライチェーン強化に係るアクションプランに基づいて、園芸作物のサプライチェーン上の課題克服のための、具体的なタイムラインを策定6する。
3-2.サプライチェーン強化に関する活動を実施すると共に、活動を支援する。
3-3.強化されたサプライチェーン関係者と成果2の対象農家とのマッチングや交流を図り、サプライチェーン強化による中小規模農家の生計向上を促進する。
3-4.サプライチェーンの強化が中小規模農家の営農に寄与しているかモニタリングを行う。
3-5.SHEPアプローチを活用したサプライチェーン強化のガイドラインを作成する。

4-1.政府及び関係者に対して、プロジェクトの成果を広報する。
4-2.対象地域以外の関係者も集めた経験共有セミナーを開催する。
4-3.持続的な活動に向けて、政策・予算編成への反映を促す。

投入

日本側投入

1)専門家派遣(合計約75M/M)(チーフアドバイザー/市場志向型農業、サプライチェーン専門家、園芸作物栽培技術、業務調整等)
2)研修員受け入れ:(SHEP、サプライチェーン強化による地域アグリビジネス振興)
3)機材供与:車両、事務機器等プロジェクト活動に必要な資機材
4)現地活動費:(ローカルコンサルタント・現地スタッフとの契約等)

相手国側投入

1)カウンターパートの配置
2)案件実施のためのサービスや施設(日本人専門家用の事務所、家具、光熱費、インターネット通信費)、現地経費の提供