ゲジラ州でのベースライン調査結果・その2:コミュニティ調査

2017年4月17日

前回の「ゲジラ州でのベースライン調査結果・その1:戸別調査」に引き続き、今回はコミュニティ調査の結果についてご紹介します。

スーダン国プライマリーヘルスケア拡大支援プロジェクト(愛称:Mother Nile Expansion)では、活動の中心となるゲジラ州の2つの地区(東ゲジラ地区・マナーギル地区)において、プロジェクト対象予定の計11のコミュニティ(村)で本調査を実施しました。各村の状況を幅広く理解するため、村のリーダーや、村での保健活動を担う保健委員会(Community Health Committee)(注)、コミュニティ助産師等の保健従事者、学校の教師、子どもをもつ女性や男性等を対象とし、個別インタビューやグループ・ディスカッションを行いました。

【画像】

子どもをもつ女性に対するグループでのインタビューの様子。

【画像】

男性へのインタビューの様子。スマホを所持している人も多い。

調査の結果、今後、各コミュニティにおける効果的な活動を実施していくための、多くの有益な情報が得られました。例えば、コミュニティ助産師の多くが妊産婦・女性の健康に関する情報は伝えているものの、栄養(完全母乳の重要性や適切な離乳食等)に関する知識を十分に伝えていないことがわかりました。また、多くの母親が、医師や看護師、助産師といった保健従事者ではなく、家族や友人を通じて保健に関わる知識を得ていることがわかりました。このことから、保健知識を伝えるコミュニティ助産師の役割を強化する必要性が示唆されました。また対象の村の一部において、家畜と家族の居住区域が明確に区別されておらず、衛生状態に問題のある家があることが観察されました。

【画像】

家族用の水源のそばで家畜が水を飲んでいる(東ゲジラ地区)。

【画像】

農業用の灌漑用水がそのまま飲料水として使用されている(マナーギル地区)。

また本調査を通じて、各村それぞれ異なる強みがあることがわかりました。例えば、いくつかの村では、青少年グループや女性グループなどの住民組織が、自発的に保健に関する啓発活動を行っていました。またイスラム教のモスクや学校、「デワン」と呼ばれる集会所でのおしゃべりを通じて、村人が保健知識を共有していることがわかりました。保健に関する情報を村人に伝えるため、「Facebook」「WhatsApp」等のソーシャルネットワーキングサービスを利用している事例もみられました。さらに村の人々で協力して、出産のために病院へ行く車を確保したり、簡単な治療に必要な薬を確保したりという取り組みをしている村もありました。こうした優良事例を他のコミュニティへ伝えることで、住民同士がお互いに学ぶ機会ができ、地域の保健活動を強化できる可能性が示唆されました。

今後、プロジェクトでは、調査を通じて得られた情報に基づき、村での保健知識の普及や予防啓発活動について住民の主体性を引き出し、持続的な成果が挙げられるよう、それぞれの村の状況に応じた技術支援を行う予定です。

(注) コミュニティ保健委員会(Community Health Committee)は、村の代表者で構成され、地域の保健活動計画の作成および実施について責任をもつ。