コミュニティ助産師現任(ブラッシュアップ)研修のためのトレーナー研修実施

2018年3月8日

2017年10月24日から11月10日にかけて(研修日数は合計9日間)コミュニティ助産師(CMW)現任研修ためのトレーナー研修(TOT)が実施されました。本プロジェクトが目指す「PHCに関する保健人材の能力強化」活動の一つにCMW現任研修があります。2017年に連邦保健省(FMOH)が研修マニュアルを改訂したため、CMWに対する研修実施の前に、研修講師のための研修を実施する必要がありました。

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試験紙使用による尿検査演習

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分娩介助演習

新研修マニュアルにおいて改訂された点は「日数」と「内容」です。まず、日数は10日から15日に延長されました。追加された研修内容は、妊娠前ケア、妊産婦死亡症例、子癇(注1)治療、分娩後出血治療、必須新生児ケアです。必須新生児ケアでは、カンガルーケア、呼吸数カウントによる肺炎診断、早期の肺炎などの感染症治療のための抗生剤の注射が含まれています。

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専用エプロンによるカンガルーマザーケア演習

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ARIタイマーを利用した新生児の呼吸数カウント演習(肺炎の診断)

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新生児への抗生剤注射演習(感染症早期治療)

途上国における妊産婦の主な死亡原因は出血、子癇、産褥熱(注2)などの感染症、新生児死亡の主な原因は肺炎や敗血症などの感染症で、いずれも防ぐことのできる死亡原因です。このような原因で妊産婦死亡が発生する背景には、「3つの遅れ」があるといわれています。

最初に、医療従事者の不足や住民の知識不足により、母子に起こっている異常の発見が遅れ、その結果病院で見てもらおうとする決断の遅れが起こります(第1の遅れ)。ようやく病院に運ぶことになっても、救急車がないため自力で病院までの交通手段を探さなければなりません。やっと交通手段が見つかっても、特に雨季には、洪水で道路が遮断されていたり、ぬかるみにタイヤが取られて抜け出せなくなったりなどのアクシデントにみまわれます。こうして病院へたどり着くまでの遅れが起こります(第2の遅れ)。スーダンには、患者が最初に接する保健医療施設の一つに村落病院があります。運よく病院にたどり着けたとしても、インフラの未整備による不便な生活環境、過重労働に見合わない給料などから十分な医師が確保できない、また一般に治療に使用する医療消耗品や医薬品は患者の家族が購入しなければならず医師を呼んだりお金の工面をする間に治療の開始が遅れたりすることになります(第3の遅れ)。未だに、このようにさまざまの遅れが重なりかけがえのない母や子の生命が失われているのがスーダンの僻地の現状です。

改訂された研修マニュルアルの特長は、コミュニティにおいて母子保健サービスを提供するCMWが、分娩後出血、子癇、新生児の感染症など一刻を争う異常を発見し、病院にたどり着くまでに早期に治療を開始できるようにし、命を奪う「3つの遅れ」の短縮を図ることによって、妊産婦死亡、新生児死亡のさらなる低下を目指していることです。

ゲジラ州の25人の講師候補者(CMWのスーパーバイザーであるヘルスビジター)がTOTに参加し、知識・技術試験の結果、12人の講師がFMOHによって選ばれました。この講師陣によってCMW700人に対する現任研修が実施される予定です。

(注1)子癇:妊娠中または産後の高血圧とともに起こるけいれんや意識消失
(注2)産褥熱:分娩の際に生じた傷に細菌が侵入して起こる重篤な敗血症

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TOT講義風景

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CMW現任研修講師候補者とTOT講師