プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成に向けた国民健康保険制度強化プロジェクト
(英)The Project for Capacity Development of National Health Insurance toward Universal Health Coverage

対象国名

スーダン

署名日(実施合意)

2020年11月17日

プロジェクトサイト

北部州、ゲジラ州、北コルドファン州、ゲダレフ州、西ダルフール州(うち北部州、ゲジラ州の2州がJICA専門家チームによる重点支援地域)

協力期間

2021年3月31日から2024年3月30日

相手国機関名

(和)国民健康保険基金
(英)National Health Insurance Fund(NHIF)

背景

スーダン共和国(以下、「スーダン」)では、連邦保健省による長期保健開発戦略である「保健セクター25ヵ年戦略計画」(2003年~2027年)のもと、中期的な保健目標として「国家保健セクター戦略計画II」(2012年~2016年)が策定され、1)PHCのカバレッジ拡大と質の向上、2)病院のレファラル機能強化とサービスの改善、3)健康保険による弱者の社会的救済を目指してきた。1)については、保健省が「PHC拡大プロジェクト」(2012年~2016年)を実施し、PHCサービスの拡充に向けて地方部におけるインフラ整備と人材育成に取り組んでおり、特にその人材育成の成果が認められてきている。
他方で、これら人材がサービス提供を行うために必要な資金や機材が地方部まで十分に行き届いておらず、継続的なサービス提供が困難な状況となっている。この問題に対し、上記戦略における3)に係る事項として、2016年に「国民健康保険条例2016」、「保健財政戦略」が発表され、「国民健康保険条例2016」では、2020年までに保険加入率80%以上を目指し、a)州毎に行っているプーリング機能の連邦レベルへの1本化、b)国民健康保険基金(以下、「NHIF」)直轄医療施設の保健省への移譲、c)国民健康保険加入の義務化等を実施することとし、これら対策に取り組んでいる。また、2017年に制定された「国家保健政策2017」では、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の最終年である2030年にユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(以下、「UHC」)(注1)を達成することを目標としており、NHIFの強化が不可欠となっている。NHIFの改革にあたっては、まずUHC達成のための国民健康保険制度の改善、および限りある健康保険の資金を効率的に運用・管理する仕組みの検討を行い、保健医療サービスを充実させていく必要がある。
このような背景から、スーダンはJICAに対し本案件の実施を要請し、これを受けてJICAは詳細計画策定調査を実施し、スーダン側関係機関と協議の上、協力コンポーネントの策定を行った。

(注1)UHCとは、「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを意味し、すべての人が経済的な困難を伴うことなく保健医療サービスを享受することを目指している。持続可能な開発目標(SDGs)においてもゴール3(健康と福祉)の中でUHCの達成が掲げられており、UHCを達成するためには、医療機関や薬品等への物理的アクセス、医療費などの経済的アクセス、医療サービスの重要性・必要性の認知といった社会慣習的アクセスの3つのアクセスの改善に加え、提供されるサービスの質が高まることが重要となる。

目標

上位目標

保健財政管理ならびに質の高い保健サービス提供にかかる国民健康保険制度が全国的に強化される。

プロジェクト目標

保健財政管理ならびに質の高い保健サービス提供にかかる国民健康保険制度が重点支援地域で強化される。

成果

1.プライマリ・ヘルス・ケア施設認証制度が強化される。
2.健康保険診療報酬請求システムが強化される。
3.プライマリ・ヘルスケアに関する戦略的支払い方法が強化される。
4.プロジェクトの優良事例が国内及び海外に広まる。

活動

成果1に関連

1-1.(プロジェクト実施委員会は)連邦保健省と国民健康保険基金(NHIF)が定める既存のプライマリ・ヘルス・ケア(PHC)施設の認証基準を見直す。
1-2.(プロジェクト実施委員会は)連邦保健省のPHC施設の認証基準に基づき、NHIFのPHC施設の認証システムを改訂する。
1-3.(プロジェクト実施委員会は)NHIFの改定されたPHC施設認証システムに基づいた研修教材を作成する(施設改善計画の策定も含む)。
1-4.(プロジェクト実施委員会と州合同委員会は)重点支援地域において改定されたPHC施設認証システムに関する評価者研修を実施する。
1-5.(評価者は)NHIFの制定されたPHC施設認証制度を適用し、NHIFの展開計画に沿って重点支援地域のPHC保健施設の査定を行う。
1-6.(査定されたPHC施設は)重点支援地域での査定結果に基づいた施設改善計画を作成し州合同委員会及びNHIFに提出する。
1-7.(州合同委員会は)重点支援地域の施設から提出された施設改善計画を検討し、優先度を鑑み州全体のPHC施設の改善計画を作成する。
1-8.(査定されたPHC施設は)改善計画に基づいて重点支援地域の施設の改善を行う。
1-9.(州合同委員会は)NHIFのPHC施設認証制度により重点支援地域の施設を再度査定する。

成果2に関連

2-1.(プロジェクト実施委員会は)国民健康保険診療請求制度を見直す。
2-2.(プロジェクト実施委員会は)関係する情報管理システムとの統合を考慮して国民健康保険診療請求システムを立案する。
2-3.(プロジェクト実施委員会は)国民健康保険診療請求システムの導入に必要な機材を調達する。
2-4.(プロジェクト実施委員会は)国民健康保険診療請求システムの研修マニュアルを作成する。
2-5.(プロジェクト実施委員会と州合同委員会は)重点支援地域の保健施設とNHIF支部のスタッフに対して健康保険診療請求システムの研修を実施する。
2-6.(州合同委員会は)重点支援地域において健康保険診療請求システムを施行する。
2-7.(プロジェクト実施委員会は)国民健康保険の利用(特に異なるグループによる)に係る健康保険診療請求システムのデータを分析する。

成果3に関連

3-1.(プロジェクト実施委員会は)WHO-EUプロジェクトにより提案されたPHC施設への支払い方法と国民健康保険の対象となるPHCレベルのサービスパッケージを精査する。
3-2.(プロジェクト実施員会は)PHC施設への戦略的支払いに関する研修を実施する。
3-3.(プロジェクト実施委員会は)重点支援地域でパイロット事業を実施するための、PHC施設への戦略的支払い方法とPHCサービスパッケージを確定する。
3-4.(プロジェクト実施委員会と州合同委員会は)重点支援地域においてパイロットとして試行されるPHC施設への支払い方法とPHCサービスパッケージについてセミナーを実施する。
3-5.(プロジェクト実施委員会と州合同委員会は)重点支援地域においてPHC施設への支払い方法と保険対象のPHCサービスパッケージのパイロット事業を実施する。
3-6.(プロジェクト実施委員会と州合同委員会は)パイロット事業の結果について調査を1つのツールとしてモニタリング・評価する。
3-7.(プロジェクト実施委員会は)パイロット事業の結果に基づき、PHC施設への支払い方法と保険対象のPHCサービスパッケージの改定を行う。

成果4に関連

4-1.(プロジェクト実施委員会は)対象地域と他の州へのプロジェクト拡大計画を策定する。
4-2.(プロジェクト実施委員会と州合同委員会は)国レベルのプロジェクト成果を報告するフォーラムを実施する。
4-3.(プロジェクト実施委員会は)プロジェクトの経験や結果を国際的に発表し、他国とUHCに関する経験を共有する。

投入

日本側投入

・専門家派遣
長期:チーフアドバイザー、業務調整/情報技術/研修管理、
短期:保健財政、情報技術
・研修員受け入れ:保健財政(第三国を含む)
・機材供与:プロジェクトに必要な機材

相手国側投入

・カウンターパートの配置(NHIF職員、連邦保健省職員、薬品供給基金職員)
・プロジェクトのための執務スペースの確保
・案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供
・ローカルコスト負担(カウンターパート人件費、オフィス恒常経費等)