帰還移民支援(ミニファイナンス)活動報告(1)

2021年10月8日

タジキスタンでは多くの労働者が職を求めてロシアやカザフスタンといった近隣諸国に出稼ぎに行きますが、新型コロナウィルスの影響などにより、タジキスタンに帰国する人(帰還移民)が増えています。本プロジェクト(BIP)は、「政府機関ビジネス・インキュベータ」(SIBI)の機能強化に向けた新たなパイロット事業として、タジキスタンの帰還移民が新規に起業する場合、または既存の事業を拡張する場合に支援する「ミニファイナンス」事業を開始しました。これは、新型コロナウィルスの影響により、出稼ぎ先の国から戻ることを余儀なくされた帰還移民のうち、希望者に対して「ビジネスの基礎」研修を実施し、受講後に作成された簡易版ビジネスプランをもとに、起業または既存の事業拡張に必要な資機材を貸与のうえ、ビジネス活動を支援するものです。2021年7月末の時点では合計122名の帰還移民に対して研修を行い、提出された簡易版ビジネスプランの厳正なスクリーニングの元、8月までにそのうちの33名の帰還移民に対して必要な資機材を提供しました。

カニバダム郡のマウルダさんは女手一つで3人の子供を育てた42歳の寡婦です。地元では満足のいく給与が支払われる仕事が見つからないため、2017年からロシアに出稼ぎにいくようになり、ロシアの繊維工場で働いていましたが、新型コロナウィルスの影響を受け、2020年の終わりにタジキスタンに戻ることを余儀なくされました。マウルダさんは「ビジネスの基礎」研修を受講した後、自分の裁縫スキルを活かした事業を立ち上げるビジネスプランを提出しました。BIPは彼女に最新の電動ミシンを貸与し、マウルダさんはそれを使って自宅でタジキスタンの伝統的なドレスを縫う小さな裁縫屋を営んでいます。

カニバダム郡のファルーフさんは2012年から2020年にかけて、カザフスタンのシムケントで自動車の修理工として働きました。そこで多くのスキルを身に付けましたが、2020年半ばに新型コロナウィルスの影響でタジキスタンに帰国しました。帰国した直後、BIPのミニファイナンスに応募し、溶接機や工具箱等を手にすることができました。ファルーフさんは現在、国外で得た知識とスキルを応用して、小さな自動車修理工場を営んでいます。研修を通じてビジネスの運営方法を学んだことで、地元でビジネスを立ち上げることができ、お金を稼げるようになった結果、妻と娘たちと一緒に暮らせるようになったのも大きな喜びだったとファルーフさんは語りました。

【画像】

「ビジネスの基礎」研修(2021年6月)

【画像】

マウルダさんと電動ミシン(写真右・2021年5月)

【画像】

自宅で裁縫をしているマウルダさん(2021年7月)

【画像】

自動車修理工場とファルーフさん(写真右・2021年7月)