プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)ビジネス・インキュベーション・プロジェクト
(英)Business Incubation Project

対象国名

タジキスタン

署名日(実施合意)

2019年11月25日

プロジェクトサイト

ドゥシャンベ、クリャブ、ラシト、ヴァフダッド、カニバダム、アシト、ヴォセ、フロソン、ハマドニ

協力期間

2020年3月17日から2022年6月16日

相手国機関名

(和)国家投資・国有財産管理委員会/政府機関ビジネスインキュベータ
(英)State Committee on Investments and State property management of the Republic of Tajikistan/The State Instutuion "Business Incubator"

背景

タジキスタンでは、1991年の独立以来、9,600の小企業、1,300の中・大企業が民営化され、民間セクターがGDPに占める割合は2005年以来継続して55%前後とされている。しかし、民間セクターは工業生産品の30%、正規雇用数の15%に留まるなど、経済活動に寄与する割合は未だ限定的である。また、当国の主要産業は未だ輸入ボーキサイトを製錬してのアルミニウムと綿花等、コモディティ要素が高い。
2015年時点で登録をしている法人数は、上述の民営化された企業と合わせおよそ276,000あるが、そのうち32,000が企業、88,000が特別認可証(Patent)所有の個人事業主、32,000が許可証(Certificate)所有の個人事業主、124,000がデフカン農場であり、これら許認可制で活動している事業体のほとんどが農業、サービス業、小規模小売業に従事しているが、その規模の小ささ、技術・知識の不足などから民間セクター全体で見てもその競争力は低いままで留まっている。
一方、旧ソ連諸国の中でも、タジキスタンはキルギスと並び、多くの労働移民を送り出しており、彼らからの送金がGDPの30%以上を占めている。移民先の95%以上はロシアであり、前述の高いコモディティ要素とあわせ、外部要因の影響を受けやすい脆弱な経済構造となっている。また、男性労働人口の多くが移民として出ることは、社会的進出があまり進んでいない女性を家長とした留守家族が残されるなど、社会的な問題も大きい。帰還移民の多くは、タジキスタン国内で雇用されることを望んでいるが、約20%は起業することにも関心を持っており、また雇用でも起業でもどちらでもよい、と回答した数を併せると約50%が潜在的な起業家といえる。これら帰還移民のほとんどは、労働を通じてある程度の技能(建築関連など)を身に着けてきたものの、教育レベルは中等教育以下の者が約70%を占めることから、ビジネスの知識に関しても極めて基礎的な内容の習得が求められている。
タジキスタン政府は、2016年に策定した国家開発戦略(NDS2016-2030)および中期開発戦略(MtDP2016-2020)において、最重要課題のひとつとして民間セクター開発を挙げている。さらに2018年12月「ビジネス・インキュベータ設立」にかかる政府令を出し、中小企業振興・起業家育成を所掌ている国家投資・国有財産管理委員会(State Committee on Investment and State Property Management:SCISPM)による運営を決定し、下部組織として「政府機関ビジネス・インキュベータ」を創設、タジキスタン国内5か所(ドゥシャンベ、ホジャンド、ボフタール(旧名称クルガンテュペ)、クリャブ、ホログ)にインキュベータを設立することとした。しかし、インキュベータ運営のノウハウや、ビジネスアイディアを「孵化させる(インキュベーション)」までのコンサルテーションなどを提供するキャパシティを備えておらず、既存のビジネスがさらにステップアップするためのコンサルテーションやメンタリング、また金融機関とのマッチングなど、起業家や零細・小企業が真に必要とするサービスを提供するための基礎を有していない。
上記を踏まえ、本プロジェクトでは、「政府機関ビジネス・インキュベータ」が帰還移民や若者などの起業家予備軍に対して基礎的なビジネス知識の提供を行うとともに、零細・小企業が成長し、活動ならびに雇用を拡大できるよう、「政府機関ビジネス・インキュベータ」のうち「ドゥシャンベ・ビジネス・インキュベータ」の運営とそこで提供されるコンテンツが確立するよう、支援を行う。
本事業は、タジキスタンの政府機関(政府機関ビジネス・インキュベータ)へのサポートを通じ、タジキスタンの経済成長に資する民間セクターの拡大、雇用創出、さらには産業多角化に資するための起業家・企業を育成するものである。

協力概要

上位目標

「政府機関ビジネス・インキュベータ」が、起業家及び零細・小企業の発展のために効果的なサービスを提供できるようになる。
【指標】
1.「政府機関ビジネス・インキュベータ」のサービスを受け、売上と雇用を増やした零細・小企業の数
2.「政府機関ビジネス・インキュベータ」の支援によって融資を受けた零細・小企業の数

プロジェクト目標と指標

ドゥシャンベ・ビジネス・インキュベータ(DBI)が確立された機能と運営方法に沿って運営される。
【指標】
1.起業家や零細・小企業の能力強化のために確立されたモダリティや方法論
2.DBIの支援によって金融機関や投資家から資金提供を受けたビジネスプランの数

成果

成果1:「ビジネスの基礎」研修の提供のモダリティが確立される
成果2:零細・商業に対するビジネスプラン作成支援のモダリティが確立される
成果3:零細・小企業に対する金融アクセス支援のモダリティが確立される
成果4:零細・小企業に対するメンタリングのモダリティが確立される
成果5:ビジネス・インキュベータとOne-Stop Windowとの連携のモダリティが確立される
成果6:政府機関に対する、ビジネスに関する行政手続きの効率化支援のための方法論が確立される
成果7:「政府機関ビジネス・インキュベータ」と国内外の同様のイニシアチブとのネットワークが形成される
成果8:「政府機関ビジネス・インキュベータ」ならびに「ドゥシャンベ・ビジネス・インキュベータ」の効率的な運営が確立される

活動

1-1.関係者へのインタビューを通じて研修及びビジネス・インキュベーションのニーズについて調査する
1-2.指導員用及び参加者用の研修教材を開発する
1-3.指導員並びに研修のチャネルを特定する
1-4.指導員研修を実施する
1-5.起業家および零細・小企業への研修を実施する
1-6.ミニファイナンスを提供するパイロットプロジェクトをカニバダムとクリャブで実施する

2-1.企業診断を通じて個々の零細・小企業のニーズを特定し、ビジネスプラン作成を支援する人材(外部人材含む)を選抜し、育成する
2-2.零細・小企業の能力を強化しながらビジネスプラン作成を支援するための方法論を確立する
2-3.零細・小企業のビジネスプラン作成を支援する

3-1.零細・小企業とマイクロファイナンス提供機関や銀行を結びつける手法を開発する
3-2.零細・小企業と金融機関や投資家を結びつける

4-1.零細・小企業のメンタリングを行う人材を選別し、育成する
4-2.零細・小企業のメンタリング実施のための方法論を確立する
4-3.零細・小企業のメンタリングを行う

5-1.DBIとOne-Stop Window職員との連携の手法を確立する

6-1.DBIやOne-Stop Windowの活動を通じ、効率的なビジネスを阻害する行政手続きを特定する
6-2.比較的容易に改善できる行政手続きを特定し、関係する政府機関がそうした手続きを効率化するのを支援する
6-3.行政手続きの変化をモニタリングする

7-1.「政府機関ビジネス・インキュベータ」の強化につながる、ビジネスを促進する政府やドナーの機関・プロジェクト(職業・技術訓練、農業やアグリビジネスのサプライチェーン、投資や輸出促進、ビジネス環境などの分野)との連携やパートナーシップを確立する
7-2.日本や第三国のビジネス関係機関から講師を招いたり。また、プロジェクト対象者の一部を日本や第三国に送ることによってネットワークを確立する

8-1.「政府機関ビジネスインキュベータ」の運営全般に必要な標準業務手順書(SOP)と各種マニュアルを起案する
8-2.「政府機関ビジネスインキュベータ」の運営状況をモニタリングし、必要に応じてSOPとマニュアルを改定する。

投入

日本側投入

(1)専門家派遣(業務主任者/中小企業振興、ビジネス環境、インキュベー
ションプログラム運営、中小企業金融、インパクト分析など)
(2)本邦研修(5名×2回実施予定)
(3)機材供与:プロジェクト活動に必要な機材

相手国側投入

(1)カウンターパートの配置
(2)案件実施のためのサービスや施設、水道光熱費の提供