電子基準点データ利活用促進のためのパイロットプロジェクト8件を選定

2022年5月12日

概要

本プロジェクトでは、国家CORSデータセンター(NCDC)から配信されるGNSSの高精度測位データを用いたビジネスの発展など、利活用促進を行い、長期的にはタイの経済発展やThailand4.0へ寄与することを目指しています。そのため、タイでも特にGNSSの活用が期待される測量、建設、農業、自動車の自動運転の4分野でパイロットプロジェクトを実施します。

JICAプロジェクトチームは2021年4月より日本とタイの企業に参加を呼びかけ、ご応募いただいた中から、2021年12月にタイ政府関係機関との協議によって農業分野から4件、測量、建設および自動車の自動運転分野から各1件の計8件を選定しました。順次、日本での準備や現地での活動が進められています。

補足情報:CORSとは

電子基準点の略称:GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)からの位置情報に関する電波を連続的に受信する基準点のことです。電子基準点網が統合的に管理・運用され、データセンターにおいて電子基準点網からの正確な位置情報や補正情報が適切に解析・配信されることにより、地球上の位置や標高等を正確に測定すること(高精度測位)が可能となります。現在、日本には約1300点、タイには240点の電子基準点が存在しています。

補足情報:Thailand 4.0とは

タイ政府が2015年に提示したタイの長期的に目指すべき経済社会のビジョン、長期経済開発計画です。ドイツで考察されたインダストリー4.0にならい、デジタル経済の発展と新世代産業の育成を2つの柱として、イノベーション主導型の経済成長を目指しています。

Thailand 4.0と本パイロット事業

タイ政府が掲げている経済社会ビジョン「Thailand 4.0」では、タイが直面している少子高齢社会に伴う熟練技術者の減少や人材不足を背景に、様々な産業における作業の効率化や生産性の向上がポイントの1つとなっています。これをふまえ、農業分野および建設分野のパイロットプロジェクトでは、従来手法と高精度測位データを利用した新たな手法による効率や生産性の違いを比較する実証などを行います。また、自動車の自動運転のパイロットプロジェクトでは、Thailand 4.0の重点分野である次世代自動車(Next Generation Automotive)分野に関連し、高精度測位データを用いた自動運転技術の実用化に向けた実証を行います。これらのパイロットプロジェクトの実施を通じ、タイにおけるNCDCの認知度向上や利活用の促進、将来的にはタイの経済発展やThailand4.0への寄与が期待されます。

新たなビジネス展開の実現や既存事業の発展

本パイロットプロジェクトの実施を通じて、まずは、ご実施いただく企業の技術や商品・サービスがタイで広く認知され、タイや周辺国でのビジネスの展開の後押しとなることも目指しています。また、長期的には、タイにおいて新たな位置情報ビジネスの創出がより一層なされることが期待されます。

高精度測位データ配信の安定運営

ビジネス展開の発展の他、NCDCの高精度測位データ配信の安定運用への寄与もパイロットプロジェクト実施の目的となっています。特に、測量分野のパイロットプロジェクトを通じて実施される測位精度の検証結果や、パイロットプロジェクトの実施者から寄せられるフィードバック、実施者からの問い合わせに対するサポート対応などをふまえて、NCDCのデータの品質や運用を行うタイ政府関係機関の能力が向上されることも期待されます。

上記のとおり、本パイロットプロジェクトを通して、Thailand 4.0の実現という具体の目標に向かって、DXを中心にチャレンジングな取り組みを果敢に実施します。

今後の進捗状況公開について

パイロットプロジェクトの成果は、セミナーやNCDCのウェブサイト(https://ncdc.in.th)等を通じて公開する予定です。また、こちらのプロジェクトニュースでも、進捗や現場の様子をお伝えする予定です。

各パイロットプロジェクトの内容について

各パイロットプロジェクトの内容については下記をご参照ください。

測量分野

タイトル:Accuracy verification from N-RTK / STATIC survey(ネットワーク型RTK測量とスタティック測量による精度検証)
実施企業:(株)トプコン、(株)トプコンポジショニングアジア、Topcon Positioning Asia (Malaysia)、 Topcon Instruments (Thailand)
概要:基準点測量により高精度測位データの精度を検証する。

建設分野

タイトル:Road construction using ICT construction machineries(ICT建機を用いた道路工事)
実施企業:西尾レントオール(株)、Nishio Rent All (Thailand) Co.,Ltd.、(株)トプコン、(株)トプコンポジショニングアジア、Topcon Positioning Asia (Malaysia)、Topcon Instruments (Thailand)
概要:高精度測位データとICT建機を用いて道路工事を実施する。

農業分野

タイトル:Smart Farm in BIO Hub EEC Area(東部経済回廊におけるBIOハブにおけるスマートファーム)
実施企業:Impress Green Energy Co., Ltd.
概要:キャッサバ農場で高精度測位データを活用したスマート農業を実施する。

タイトル:Utilization of NCDC Data Application in Agriculture(NCDCデータの農業への活用)
実施企業:QUANTUM MOTUS
概要:高精度測位データと農業用ロボットやドローンを活用して農作業を実施する。

タイトル:Benefits of Autosteering for Rice Production in Thailand(タイの稲作における自動操縦のメリット)
実施企業:(株)トプコン、Topcon Instruments (Thailand)
概要:高精度測位データを活用したスマート農業と従来農法とを比較する。

タイトル:Development of Precision pesticide spray method by using auto piloted Yamaha Unmanned Helicopter(ヤマハ無人ヘリコプターを用いた農薬の精密散布方法の開発)
実施企業:サイアムヤマハモーターロボティクス(株)、タイ農業局
概要:高精度測位データを活用した自動農業ヘリコプターによる農薬の散布と従来方法による収穫量を比較する。

タイトル:Smart Agriculture utilizing Autonomous and Telematics Technology in Thailand(タイにおける自律走行・テレマティクス技術を活用したスマート農業の取り組み)
実施企業:ヤンマーアグリ(株)、YANMAR S.P. Co., Ltd
概要:高精度測位データと自動農機を活用した作業と従来作業を比較し、タイにおける自動農機等の適応性や導入の効果を評価する。

自動車の自動運転

タイトル:Intelligent driving vehicle in Thailand(タイにおける先進自動車の自動運転)
実施企業:Asia Technology Industry Co.,Ltd.、東海クラリオン(株)、(株)コア、グローバル測位サービス(株)、Chulalongkorn University
概要:高精度測位データを活用した小型電気自動車の自動運転を実証する。

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タイ政府機関との選定に関する協議の様子。

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タイ政府関係機関との協議の様子。

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2022年3月11日に開催されたMulti GNSS Asia会議(注)でも8件のパイロットプロジェクトを紹介。