看護師のための継続教育（CPD）に関するオンラインワークショップシリーズ：第４回ワークショップ開催

2023年2月16日、看護職のための継続教育に関するオンラインワークショップシリーズの第4回目を開催し、12か国から約40名の参加者と約30名のオブザーバーが参加しました。第4回ワークショップは、シリーズの最終回であり、各国がそれぞれの課題解決に向け、どのように計画を実践していくのかを議論するために、2つのテーマでパネルディスカッションを行いました。パネルディスカッションには、参加国からの代表者のほか、オーストラリア看護協会（Australian College of Nursing）、タイ看護カウンシル（Thailand Nursing and Midwifery Council）、WHO南東アジア地域事務局（SEARO）、WHO西太平洋地域事務局（WPRO）から4名の専門家に参加いただきました。

1つ目のパネルには、「各国の健康ニーズに対応するためにはどのようにCPD制度を整備したらよいか」をテーマに、現在CPD制度を構築中または開始したばかりの国々が参加し、議論しました。パネリストたちは、CPDを法律に明記し、看護師のCPDの機会を法的に担保することの重要性を再確認しました。ワークショップに参加したほとんどの国では、CPDを看護師免許更新制度の要件に取り入れる、あるいは取り入れの検討を行っており、CPDと看護師免許更新制度とのリンクにより看護技術の質の維持・向上を図っていました。専門家からは、看護師の免許更新制度とリンクするにあたって、看護師が一定期間内に必要なCPD単位数を取得できるように、すべての看護師が必要なCPDプログラムにアクセスできるような体制を整備する必要があると指摘がありました。また、必要なCPD単位数に達しない場合は、試験を設けるなどといった代替手段の確保が必要であるとの意見も出されました。

国内のすべての看護師に対して、一貫したシステムを持つべきという議論もありました。国によっては、山岳地域などの遠隔地で働く看護師がCPDの機会を得ることは容易ではないため、すべての看護師にCPDを義務付けることは現実的ではないかもしれません。しかし、CPDは教室での講義、インサービストレーニング、会議への出席等に限定されるものではなく、ITなどのイノベーティブな方法を用いて、遠隔地で働く看護師でも様々なCPDの機会にアクセスできるようにする取り組みが必要なのではないかと各国に対して専門家から投げかけられていました。

2つ目のパネルには、「CPD制度の質を高める方法及びCPDのインパクトを測定する方法について」をテーマに、CPD制度がすでにある程度整備されていて、それを改善する方法を模索している国々が参加し、議論しました。パネリストたちからは、研修の質を担保するためのガイドライン策定や補助金制度の取り組みや、国全体でシステムを標準化し、官民が連携して、すべての看護師に公平な機会を提供することについて発表がありました。民間セクターの医療機関によるCPD管理を政府機関がどのようにモニタリングしているかについての紹介もありました。専門家からは、エビデンスに基づいたCPDプログラムを整備することの重要性と、CPDプログラムをモニターし、良質なフィードバックを与えることができる委員会の設置の必要性が指摘されました。

CPDのインパクトについて議論するには、ヘルスケアのアウトカムとヘルスケアシステムへのインプットに焦点を当てる必要があります。しかし、CPDのインパクトを単一の指標で測定することはできず、また、ヘルスケアのアウトカムに焦点を当てた場合、他の要因の影響を排除することは困難です。専門家からは、看護師の満足度や、態度や知識・技術の変化に対する認識、自信のレベルなど、測定可能な指標を用いることが提案されました。

パネルディスカッションのテーマが議論のあるものであったにもかかわらず、パネリストたちが各国・各自の経験、意見を交換し、提案を共有したことで、ワークショップに参加したすべての人が、ワークショップシリーズを通して学んだことを考察し、学びを深めることができました。

主催者として、参加者の皆さまが、このワークショップシリーズを通じて、看護師のCPDに関する自国の課題解決に向けて前進する何かしらの手がかりを得られたことを願っています。ご参加いただいた皆さま、ご支援いただいた皆さまに心より感謝申し上げます。

本ワークショップ主催者：
- Asia Pacific Action Alliance on Human Resources for Health (AAAH)
- Japan International Cooperation Agency (JICA)
- Ministry of Public Health, Thailand
- National Health Security Office (NHSO), Thailand
- Thailand Nursing and Midwifery Council (TNMC)
- GLO+UHC Phase 2