プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)タイ国におけるレジリエンス強化のための道路と橋梁のライフタイムマネジメント技術の開発
(英)The Project for Technology Development on Life Time Management of Road and Bridge for strengthening Resilience in Thailand

対象国名

タイ

署名日(実施合意)

2021年9月14日

協力期間

2022年4月1日から2027年3月31日まで

相手国機関名

(和)カセサート大学、チェラロンコン大学、運輸省道路局
(英)Kasetsart University、Chulalongkorn University、Department of Highway

日本側協力機関名

早稲田大学、北海道大学、東京大学、関西大学、日本大学、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社、鹿島道路株式会社、株式会社共和電業、株式会社KSK、株式会社ヒカリ

背景

タイ国はASEANの物流の結節点として機能しており、アジアンハイウェイにおいても重要な位置づけとなっている。タイ国の物流の9割は陸上輸送が担っており、タイ国内の道路インフラ整備は、タイ一国のみならずASEAN地域の経済成長に不可欠である。そうした中で、1980年以降、タイ政府による積極的な社会資本整備への投資により、タイ国内の国道約52,000km、地方道路約42,000km以上が整備されてきた。しかしながら、2030年代には日本と同様、建設後50年以上が経過するインフラ構造物の割合が急激に増加していく中で、橋梁(以下、本紙においては、「橋梁」はそのアプローチ道路を含む。)の維持管理の必要性が高まることが想定されるため、今後検討すべき課題となっている。例えば、道路橋1万5000橋のうち、58%の橋梁が経年劣化による老朽化対策が必要となることが予想されている1。特にタイ国では、洪水・地すべり・塩害などの自然災害・自然条件が橋梁に与える影響も大きいため、予防保全的な対策の重要度も増している。タイ国の道路・橋梁は、国道については運輸省道路局(DOH)、地方道路については運輸省地方道路局(DRR)が、それぞれ整備や維持管理を担っている。JICAはこれまでDRRに対して、「地方における橋梁基本計画作成・橋梁維持管理能力プロジェクト」「橋梁維持管理計画策定調査(チャオプラヤ川架橋)」等の協力を行ってきており、DRRは橋梁の点検・維持管理等の能力を備え、老朽化に順次対応している。しかしながら、DOHは比較的耐久性の高い高規格の道路・橋梁を主管しているため、これまでは、橋梁マネジメントシステムに蓄積した劣化・腐食の状態データを活用して、一部の極めて古い橋梁に対して補修工事を実施してきたものの、腐食進行の予測や腐食対策の効果予測に基づく、橋梁の計画的な予防保全は行われておらず、また、将来起こりうる洪水・地すべり・塩害を考慮した維持管理の仕組みにもなっていない。DOHは、橋梁インフラを高品質で維持するために、自然災害等の影響も含め、計画的な予防保全を実施する能力の強化が求められている。タイ政府の「国家戦略(2017-2036)」では世界と繋がる高品質なインフラ整備が重要な戦略の一つとして位置づけられ、「第12次国家経済社会開発計画(2017-2021)」では、道路分野については安全かつ質の高い道路網の整備が掲げられており、上記の課題への対応はこれに資するものである。タイ政府は、DOHを対象機関、洪水・地すべり等の影響を受けやすい東北回廊、及び塩害・洪水等の影響を受けやすい沿岸域に位置する第二東西回廊を対象路線とし、早稲田大学等の協力を得て「タイ国におけるレジリエンス強化のための橋梁のライフタイムマネジメント技術の開発(科学技術協力)」を日本政府に要請した。また、両国の研究機関及びDOHの間では既に、カセサート大学を拠点として橋梁のメンテナンスに関わる技術開発、及び維持管理に関するDOHをはじめとする関係機関の技術者の人材育成を図る構想が検討されてきている。

目標

上位目標

タイ国の東北回廊と第二東西回廊を対象として,カセサート大学が管理するマネジメントシステムによる橋梁のレジリエンス強化に向けた取り組みが継続して実施される。

指標及び目標値

1)開発されたマネジメントシステムに基づき、DOHによる東北回廊と第二東西回廊全域における橋梁の点検が始まる。
2)補修補強優先度計画に基づき、DOHによる東北回廊と第二東西回廊連結領域(アユタヤからチョンブリ間)における補修補強が着実に進められる。
3)開発されたマネジメントシステムがカセサート大学により継続して使用され、東北回廊と第二東西回廊全域における橋梁のレジリエンス強化に向けた取り組みの継続が確認される。

プロジェクト目標

防災と維持管理の複眼的視点を有する、DOHのための橋梁のマネジメントシステムがカセサート大学に構築される。

指標と目標値

1)プロジェクト開始後、半年に1回の頻度で研究機関とDOHと合同の社会実装のためのワーキンググループ会議が開かれる。
2)橋梁のマネジメントに必要となるマニュアル,システム(点検、診断、補修補強),プログラム(人材育成)がDOHに提案される。
3)東北回廊と第二東西回廊連結領域(バンコク周辺)を対象とした構造物群の防災および維持管理の複合的視点に基づき、DOHによる補修補強の優先度が決定される。
4)小規模な補修補強工事の実施を通じてマネジメントシステムの妥当性が検証される。

成果

1.自然外力と過積載荷重の評価と構造物(橋梁)の損傷・破壊メカニズムの解明
2.診断と対策に必要な情報入手のための橋梁及びアプローチ道路の点検システムの開発
3.自然・人工外力に対する道路と橋梁の安全性診断システムの開発
4.レジリエンスの強化のための橋梁及びアプローチ道路の補修補強手法の開発
5.リスクマネジメント手法の開発
6.カセサート大学における人材育成プログラムの開発

活動

1-1.塩害による鋼材腐食メカニズムの解明
1-2.粘土河床の洗掘とクリープによる橋脚の変形メカニズムの解明
1-3.粘土河床の洗掘深予測法の開発
1-4.乾湿繰り返しによる地盤の破壊メカニズムの解明
1-5.材料の経年劣化と過積載含む複合外力による橋梁全体系の損傷・破壊メカニズムの解明

2-1.ひび割れ幅振幅計測技術の開発
2-2.管理情報のクラウド管理システムの開発

3-1.地盤の安全性診断のための情報収集とシステム設置
3-2.橋梁の安全性診断法の開発

4-1.FRPとセメント系材料の両者を用いたハイブリッド補強法の開発
4-2.材料開発と品質管理法の開発
4-3.土工管理手法の確立と地盤のハイブリッド補強法の開発

5-1.設計と維持管理の連続化手法の開発と各種設計・施工マニュアルの作成
5-2.リスクマネジメント手法による対象領域の補修補強優先度の検討

6-1.技術者および管理者用人材育成プログラムの開発
6-2.管理者用研修コースの開発

投入

日本側投入

専門家派遣、研修員受入れ、機材供与

相手国側投入

カウンターパート配置、日本側専門家への便宜供与、カウンターパート人件費活動経費、パイロット施工実施経費、大学実験施設・機材使用