地震月報の定期刊行に向けた取り組み

2019年9月30日

Van-REDIプロジェクトは、地震・津波・高潮の監視、提供情報の高度化を目標としています。プロジェクトの初期段階である現在においては、バヌアツ気象・地象災害局(VMGD)の日々の活動を確認・改善し、外部への情報発信を行うことを目標としており、津波の専門家が7月~11月の期間、現地に入って、VMGD職員とともに日々の活動を行いながら、地震・津波に関する能力強化のOJT(現任研修)を行っています。(写真1、2)

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写真1

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写真2

バヌアツは日本と同様、あるいは日本以上に頻繁に地震が起こる地域で、首都ポートビラでも月に何回か有感地震があります。VMGDでは、これらの地震活動をORSNET(オルスネット)と呼ばれる南太平洋地域地震観測網を使って監視しており、バヌアツ国内で起きる地震活動を毎日処理・解析し、地震波形データとともに、震源の位置、深さ、マグニチュ-ドなどの処理結果を蓄積しています。

本プロジェクトでは、これらのデータをハワイ大学のGMT(Graphic Mapping Tool)(注1)を使って可視化(作図)する活動に取り組んでおり、VMGD職員とともに、毎月の地震活動を随時解析・作図する体制が整いました。地震活動の図は、バヌアツのどこで地震活動が活発かを立体的にわかりやすく理解することができ、VMGDの解説文をつけて、VMGDホームページで公表するとともに、マスコミ各社へも提供を行い、地震月報の定期刊行というかたちで、バヌアツ国民への積極的な情報発信を予定しています。(図1)

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図1 震源分布図(月毎のバヌアツにおける地震活動を表す図。M2以上の地震が対象であり、どの地域で地震が起こっているかが示されている。マグニチュードの大きさは円の大きさで表している。)

また、地震の発震機構については、CMT解析(注2)と呼ばれる方法で、地震の仕組みの解析が行われており、過去30年程度の南太平洋地域でのマグニチュード6以上の地震についての解析結果を、VMGDとともに収集し、この地域の地震活動をわかりやすい図として作成しました。これを用いてバヌアツ周辺の地震活動メカニズムの理解を深め、プロジェクトの活動紹介資料として広く提供することを予定しています。(図2)

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図2 地震発震機構図(過去30年の大きな地震のメカニズムを表す図。バヌアツ周辺で過去30年程度の期間におきたM6以上の地震についてメカニズムを表示し、発生した地震が、津波を引き起こしやすい縦ずれ断層か、そうではない水平横ずれ断層なのかを示している。)

VMGDには、有用な解析データが日々蓄積されています。バヌアツにおいては、科学的な情報の定期的な公表をとおし、地震・津波への関心が高まるよう、VMGDとともに活動を進めていきます。

(注1)Graphic Mapping Tool:ハワイ大学が開発した地理データを描画するソフトウェアで、地震分野や気象分野で使われている。
(注2)Centroid Moment Tensor:観測された地震波形を用いて、断層のずれ方(メカニズム)やマグニチュードを推定する。

作成:登内 道彦(プロジェクト専門家(業務主任/機器管理))