ベトナムの生物多様性保全の鍵は?−国家生物多様性データベースの整備・活用に向けた取り組みを行っています−

2016年9月9日

ベトナムは世界の生物種の約10%を有する生物多様性が極めて豊かな国であり、当プロジェクトではその保全に向けた活動を支援しています。貴重な生物多様性を保全するためには、現地での調査や保護に向けた活動はもちろんのこと、そうした活動で得られた情報・データを適切に取りまとめ、より効果的な保護活動につなげていくことが重要です。しかしながら、ベトナムではそれらデータは国立公園、保護区、研究所などの各組織に散在し外部への共有が十分なされておらず、生物多様性保全に向けた政策づくりに有効に活用されていないのが現状です。
このためJICAでは、2010年〜2013年にかけて国家生物多様性データベースシステム(NBDS)開発を支援しました。NBDSは登録した関係機関、関係者がインターネットを通じて随時データ入力・更新を行うことができ、また閲覧は誰でもできるように設計されています。システム全体の管理は中央政府の天然資源環境省(MONRE)が行い、各地方省にある天然資源環境局(DONRE)は管内の保護区や国立公園などのデータを取りまとめNBDSに入力する役割を担っています。
しかしながら、ベトナム全土には63の省・市があり、その中の多くの省・市において人的・資金的資源の制約などからデータ入力が進んでいません。このため当プロジェクトではMONREと共催で計3回、各DONREや国立公園等職員を対象にNBDSに関する能力向上を図るためのトレーニングワークショップを実施しました。
同トレーニングワークショップは、座学中心ではなく、各参加者が自分たちの保有している生物多様性関連データを持ち寄り、講師から手ほどきを受けながら実際にデータ入力行を行う実戦形式で行いました。その過程を通じて、各機関が保持しているデータの質やデータフォーマットの違いなど、今後データ入力を促進していくに当たって対処すべき様々な課題も浮き彫りとなりました。これらを踏まえ、今後どのような取組を進めていくべきか、プロジェクト、MONREなど関係者間で現在検討を進めているところです。

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ハノイでの第二回ワークショップの様子。参加したDONRE担当者の多くが、初めてNBDSに接することから、NBDS全体の仕組みから実際の操作方法まで、広範な内容について学びました。

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ホーチミンでの第三回ワークショップにおけるNBDSへのデータ入力の様子。

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Ba Vi国立公園で行われた第一回ワークショップでは、フィールドにて生物多様性モニタリングの実践トレーニングも行われました。

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ベトナムのNBDSは日本の国立科学博物館(科博)等の支援も受けつつ、将来的には生物多様性データベースの世界的なネットワークであるGBIF(Global Biodiversity Information Facility)へのリンクも予定しています。今般のワークショップでは科博の細矢氏から日本の先進的取組みについての紹介もありました。