国家標準化を目指して「森林モニタリング」のワークショップ開催

2017年3月16日

3月16日、JICAが開発・普及を進める「タブレットPCを用いた森林モニタリング手法」に関する国家ワークショップがハノイにて開催されました。同ワークショップでは、森林総局、同手法を試験導入してきた15地方各省、ドナー関係者などを招き、同手法の有効性について議論がおこなわれました。
森林モニタリングとはその名前の通り、森林の変化を定期的に測ることをいいます。一見地味な活動ですが、森林のモニタリングは森林管理に必要な基礎情報を提供するだけではなく、REDD+(注)を実施する上でも大変重要な取組みになります。現在、途上国では持続的な森林管理を通じた、森林減少・劣化を防ぐ取り組みが進められていますが、REDD+のような成果に対する支払いをおこなう際には、その成果の正確かつ透明性のある測定が不可欠になります。
タブレットPCを活用した森林モニタリングにより、現行の森林モニタリングの様々な欠点を補い、データの質を向上させることが可能となります。例えば、1)デジタル地図を使用することにより目的地へ効率よく到達できる、2)GPS機能を活用することにより森林変化面積の正確な記録がおこなえる、3)GPSカメラ機能により証拠写真を残すことができる、4)タブレット上で変化情報を記録することにより入力ミスやPCによる再入力の手間を減らせる、などの利点が期待できます。こうした手法の活用を通じて、データの質や透明性、検証可能性などが改善されるだけでなく、データ収集・入力の労力軽減、ひいては様々な機材(GPSやカメラなど)をタブレットに一本化することによるコスト削減も期待できます。タブレットPCで収集されたデータは中央の森林データベース(フィンランドが支援)に蓄積されることになっており、これによりデータの一元管理も可能となりました。
同手法は元々、「北西部水源地域における持続可能な森林管理プロジェクト(SUSFORM-NOW)」(2010〜2015年)によりディエンビエン省で開発・導入されたものでした。その後、その有効性に対する認知度が高まり、他地方省や他援助機関(国連、世界銀行、米国国際開発庁)プロジェクトからの要請を受けて、これまでに支援対象を15地方省まで拡大してきたものです。
同ワークショップでは、各地方省からこれまでの試験導入の成果の共有と、利点・改善が必要な点などが共有され、活発な議論がおこなわれました。これらの報告を受け、森林総局のチ副局長からは、今後既知の課題を解決しつつ森林モニタリングの質を向上させていくことが重要である旨、発言がありました。
また、高橋専門家からは、タブレットPCを活用した森林モニタリングを国の標準とするために、農業農村開発省から決定文書を交付することが重要との提案がなされました。中央政府が同手法の活用に政治的なコミットメントを示すことは、各省における取り組みを後押しする上でも重要であり、援助機関からの今後の支援を取り付ける上でも極めて重要なステップであることが強調されました。
今後プロジェクトでは、タブレットPCによる森林モニタリングを国家標準とすべく、中央政府や各援助機関との連携を強めていくと共に、国内に育成された講師を中心に、各地方省での展開を進めていく予定です。

(注)途上国における森林減少と森林劣化からの排出削減並びに森林保全、持続可能な森林管理、森林炭素蓄積の増強

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テレビ局からタブレットPCを活用した森林モニタリングについてインタビューを受ける高橋専門家。当日は10社を超えるメディアが集まり、当システム周知においても良い機会となりました。

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ワークショップを総括する森林総局のチ副局長。今後のシステム普及に向けて、力強い発言がありました。

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森林モニタリング用のタブレットPCとマニュアル

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熱心に意見を交わす各省からの参加者