各種病原体診断技術に関する「技術者ネットワークの構築」

2020年11月20日

当プロジェクトでは現在、ベトナム南北10省の各CDC(Center for Disease Control)に対し、デング熱ウイルス検出技術研修の実施を進めています。研修実施のために、毎回、日本人専門家とベトナム人専門家(北部は国立衛生疫学研究所(NIHE)、南部はホーチミンパスツール研究所)が共に各省CDCを出張訪問し、現場の検査員の検査能力の確認や、検査室環境や検査試薬・機器の状況確認等を行うと共に、日本人・ベトナム人専門家からCDC検査員達に対し、リアルタイムPCR機を使ったデング熱ウイルス検出技術を、まさしくマンツーマンで丁寧に指導、また検査結果についてディスカッションを実施しています。

最近では10月27日~29日に、Quang Ninh省CDCにおいて、ベトナム北部5省(Quang Ninh省、Ha Giang省、Bac Giang省、Vinh Phuc省、Nam Dinh省)の各CDCの検査技師への合同デング熱ウイルス検出技術研修を実施しました。この合同研修では、日本人専門家とNIHE専門家3名が研修指導員として、5省CDC検査技師9名に対し技術指導を行いました。

Quang Ninh省は、世界遺産として有名なHa Long(ハロン)湾やバンドン国際空港があり、また北部は中国と国境を接しているため、国内外への人々の移動が大変多い地域です。これまでQuang Ninh省CDCは月間平均200~300サンプル程度、各種病原体検査を実施してきましたが、新型コロナウイルス感染症の問題が起こってからは、1日平均200サンプルもの検査を行っています。このような急激なサンプル数の増加に対応するために、ベトナム政府はCDC検査員の増員や検査機器の補充等を行ってきました。当プロジェクトは、今年3月末専門家の新型コロナウイルス感染症対策のための避難一時帰国により、8月に再赴任するまで実際の研修活動ができない状態でしたが、9月より各種研修実施や、必要な検査試薬の提供等の協力を再開しています。今回、久しぶりにQuang Ninh省CDCを訪れましたが、検査能力が一段と向上していると感じました。

実際、今回のQuang Ninh省での合同研修では、Quang Ninh省CDCの検査技師達がリーダー的役割を担い、他省のCDCの若手技師を率先してサポートしたり、ディスカッションでは自分達の経験を共有したりするなどの様子が見られました。各省CDCの若手技師達も、日本人専門家やNIHE専門家から指導を受けると共に、他省の同じ立場の技師と積極的に意見交換を行い、情報収集・共有を行っていました。

このように、プロジェクトが実施している合同研修は、個々の検査技師の検査技術を向上させるだけではなく、日本人専門家、ベトナム人専門家、各省CDC検査員の間の「技術者ネットワークの構築」に大きく寄与すると考えています。

また、プロジェクトでは合同研修に参加したQuang Ninh省以外の省のCDCを個別に訪問し、フォローアップ研修も実施しています。これまで11月16、17日にNam Dinh省CDCで、11月19、20日にVinh Phuc省CDCでフォローアップ研修を行いました。残りの省でのフォローアップ研修も計画しています。フォローアップ研修では、各省CDC検査員が、合同研修で学んだ検出技術を使って、実際にそのCDCが持っている検体と検査機器を使って検査を行うことで、より技術が身に付き、効率よく信頼性の高い検査が行えるようになってきています。

プロジェクトではこれからも合同研修とフォローアップ研修を継続して行い、各省CDCの検査技術の向上を図ると共に、「技術者ネットワークの構築」を積極的に推進していく予定です。

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(Quang Ninh省CDC合同研修)Vinh Phuc省CDC若手検査技師に指導を行う甲斐プロジェクトチーフアドバイザー

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(Quang Ninh省 CDC合同研修)検査データの分析方法を指導するNIHE専門家

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(Quang Ninh省 CDC合同研修)検査結果を分析し纏めたデータを発表するCDC検査技師

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(Quang Ninh省 CDC合同研修)合同研修受講サーティフィケート授与式での集合写真

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(Nam Dinh省 CDCフォローアップ研修)実地研修を行うNam Dinh省CDC検査技師を見守るNIHE専門家と甲斐プロジェクトチーフアドバイザー

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(Vinh Phuc省 CDCフォローアップ研修)実地研修を行うVinh Phuc省CDC検査技師にアドバイスをする甲斐プロジェクトチーフアドバイザー