サイバーセキュリティ政策に関するオンラインセミナー

2021年7月21日

7月19日から21日までの3日間、日本のサイバーセキュリティ政策を担う省庁や国際政治・法律を研究する大学による、サイバーセキュリティ政策に関するセミナーがオンラインで開催されました。

当初の予定では、ベトナム側はカウンターパート機関(AIS)だけではなく、他省庁や地方政府関係者も参加して総勢50人以上で実施する予定でした。しかし、2021年5月以降のベトナム国内でのCovid-19の感染拡大を受けて、ベトナム側もオンラインでの開催となりました。

・7月19日(月)
初日は、内閣官房に設置されている日本のサイバーセキュリティ政策の司令塔である内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の基本戦略グループ・政府機関総合対策グループ・重要インフラグループに講演をお願いしました。
日本のサイバーセキュリティ戦略、政府機関のセキュリティ対策、重要情報インフラ防御に関する日本の最新の取り組みが紹介されました。特に現在策定中の次期サイバーセキュリティ戦略はデジタル・トランスフォーメーション(DX)を前提としており、ベトナムでもDXを推進していることから、日本の政策および実施方法はベトナム側にとって興味深かったものであったに違いありません。省庁と重要情報インフラ事業者間の情報共有体制であるセプター(注1)は、ベトナムが政府主導で構築を進めている情報共有体制ISAC(注2)の参考モデルになるかもしれないという期待がVNCERT/CCから寄せられました。クラウドの利用が進むベトナムでは、クラウドに対する「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)」の資料や詳細情報を希望する声も多かった印象でした。

(注1)CEPTOAR(Capability for Engineering of Protection, Technical Operation, Analysis and Response):重要情報インフラ事業者等の情報共有・分析機能及び当該機能を担う組織。システム障害の未然防止、インシデント等発生時の被害拡大防止、迅速な復旧および再発防止のため、政府等から提供される情報を適切に重要情報インフラ事業者等に提供することが目的。
(注2)ISAC(Information Sharing and Analysis Center):重要情報インフラに対するサイバー脅威に関する情報を収集し、民間部門と公共部門の間で双方向の情報共有を提供するためのリソースを提供する非営利組織。

・7月20日(火)
2日目の午前は、総務省サイバーセキュリティ統括官室から講演がありました。特にインターネットやIoTに関するセキュリティ対策は、同じく情報通信を所掌する情報通信省にとっては大変参考になったようでした。純粋なセキュリティ対策のみならずデジタル経済を前提としたセキュリティや、スマートシティに関するセキュリティについて、日本の知見を求めるコメントが複数ありました。また、人材育成がベトナムでも重要な課題となっていることから、人材育成プラットフォームや若手に対する研究開発支援に関する質問が多く寄せられました。

2日目の午後は、明治大学からサイバー空間の政治と法律に関する講演がありました。
インターネットのガバナンス、インターネットと主権、プライバシー、フェイクニュースと偽情報の規制等、サイバー空間の利活用とそのセキュリティを考える上で前提となる興味深い議論が多くありました。講師からは、ベトナムが今後サイバーセキュリティを考える上で、ベトナムの経済発展に深く関わる論点について指摘がありました。特に重要な指摘は、ベトナムが外国企業の投資先としての魅力を維持するためには、データローカリゼーションの規制を強めるかについて注意深く検討する必要があるというものでした。ベトナム側からも犯罪捜査に関連するデータローカリゼーションに関して、日本側に意見を求める場面がありました。

・7月21日(水)午前中のみ
最終日の午前中は、経済産業省商務情報政策局サイバーセキュリティ課による講演でした。経済産業省が提唱しているサイバー・フィジカル・フレームワークではソフトウェアがさらに重要になり、ハードウェアを通して得られたデータをユーザがいかにして利活用して新たな価値を生み出していけるかというポイントが丁寧に説明されました。ベトナム側からは、サイバーセキュリティ経営ガイドラインがベトナムのガイドラインよりも具体的であることから、参考になりそうだという意見がありました。人材育成、DX推進、セキュリティ製品の検証に関して、情報通信省の任務と重複する内容が多く、引き続き日本の知見を学習していきたいという意思がベトナム側から示されました。

今回紹介した日本の政策に関する知見がベトナム側での政策策定に活かせるように、引き続き、政策策定を担当する職員と対話を続けます。

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