サイバーセキュリティの普及啓発活動に関するオンラインセミナー

2021年8月30日

2021年8月30日から3日間、JICA専門家による「サイバーセキュリティに関する普及啓発活動」についてのオンラインセミナーを開催しました。
プロジェクトでは、AISの普及啓発活動への協力として、子供のオンライン脅威からの保護を目的とした普及活動のためのアニメーション動画教材の作成を行っています。今回のセミナーは、それらの教材の活用方法にも関連して、以下を目的としていました。
1)日本における普及啓発活動の経験を理解して、ベトナムで適用可能な教材や活動を検討すること
2)サイバーセキュリティに関する普及啓発活動にマーケティング理論を適用する方法を学ぶこと

1)セミナー前半(1.5日間):日本における普及啓発活動
日本における情報・サイバーセキュリティの普及啓発に関する政策、ウェブサイト、テキスト、教材等を共有しました。日本では特に、警察が多くの教材や普及啓発動画を公表しています。子供向けから教員向けまで幅広い教材があり、特に何かを覚えさせるのではなく、情報セキュリティに関わる状況から子供に考えさせる教材が多いように感じました。
日本独特なものとしては、マンガやアニメを題材にした教材が多いことも挙げられます。ベトナムでも、ドラえもん、NARUTO-ナルト-、ONE PIECE等は非常に人気があることから、これらを題材にした教材は普及の観点から有効かもしれません。JICA専門家からは、漫画はただ単に人気があって普及しやすいという特徴だけではなく、情報が限られていることからノイズが少なく、権威的にならずに親密的になれるという特徴があると説明がありました。
日本に普及啓発教材が多い背景には、オンライン・フィッシング詐欺等の事件がなかなか減らないという状況があります。詐欺にかかる人の多くはそもそも啓発教材に興味がなく、それらで学習することがほとんどありません。普及啓発の課題の1つは、情報セキュリティや情報の安全に興味がない人をいかにして教育し、危険情報を知らせるかということです。
そのようなことを考えるための枠組みの1つがセミナー後半で扱うマーケティング理論です。

2)セミナーの後半(1.5日間):マーケティング理論
マーケティング理論のセッションでは、マーケティングの基本を理解した後、サイバーセキュリティの普及啓発活動に適用する方法を学びました。AISからは、以前からデジタルマーケティング手法等を学びたいという声があり、今回の研修でその要望に対して基本的な部分には応えることができたのではないかと思います。
マーケティング理論のSTP分析(Segmentation-Targeting-Positioning)やペルソナ分析を課題として研修生に体験してもらいました。特に、子供のオンライン脅威からの保護ための普及啓発活動をしているチームは、2日目の研修後にチームで議論した結果を回答として提示するなど、非常に積極的に課題に取り組んでいました。
ベトナムにおける普及啓発活動の対象者の分析においては、事例として「学校に行っていない子供たち」に対して、どのようにセキュリティ教育を行なうかということが議論されました。AIS側も特に、山岳地帯に住んでいる少数民族の子供たちの生活習慣は、都会の子供たちとは大きく異なり、どのように普及活動を実施すべきか研究しているとのことでした。この研究も踏まえて、AISとJICA専門家の間で活発に意見交換がなされました。

本セミナーを実施したJICA専門家は引き続き、セミナーのフォローアップや普及啓発活動に対する助言を行なっていきます。

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