経済集中関係事案に対する評価結果の公表

2020年5月8日

2020年5月5日から同月8日にかけ、経済集中規制に関し、2件の個別事案の届出に対する処理について、また、2014年に経済集中規制の適用除外決定が行われた件に対する調査結果について、それぞれ公表されましたので、以下、簡単に内容を紹介します。

1.PepsiCo Inc.及びPioneer Food Group Limitedの経済集中事案(2020年5月5日公表)

競争消費者庁は、2019年12月13日に商工省が受領した経済集中に関する届出案件について、2020年5月5日、同省が改正競争法第30条により禁止される経済集中に該当しない旨回答したことを発表しました。
本件では、PepsiCo(米国)の完全子会社であるSimba Proprietary Limited(南アフリカ)がPioneer(南アフリカ)の全株式を取得する結果、PepsiCoがPioneerの事業活動をコントロールすることとなること、また、PepsiCo及びPioneerがベトナムのジュース市場において事業活動を行っていることについて言及されています。
なお、改正競争法第33条に基づく経済集中の届出は国家競争委員会に提出することとなりますが、同委員会は現在まで設置されていませんので、改正競争法第7条第2項において政府による競争に関する国家運営を中心となって補佐する商工省が本件の評価を同省競争消費者庁に担わせたとしています。

2.Elanco Animal Health Incorporated及びBayer Aktiengesellschaftの経済集中事案(2020年5月6日公表)

競争消費者庁は、2020年1月22日に商工省が受領した経済集中に関する届出案件について、2020年5月6日、同省が改正競争法第30条により禁止される経済集中に該当しない旨回答したことを発表しました。
本件は、Elanco(米国)がBayer(ドイツ)のアニマルヘルス事業を買収するものであり、両社がベトナムにおいて動物向けの薬品、食品等において事業活動を行っていることが言及されています。
商工省は、本件買収の結果、豚に用いられる抗菌薬の市場において支配的地位を有する事業者が誕生することとなるため、本件経済集中の実施後において一定の措置を講じるよう勧告したとしています。
なお、上記案件と同様、本件評価は競争消費者庁が担ったとしています。

3.NAPASに対する適用除外案件の調査(2020年5月8日公表)

2014年12月22日、統合ATMスイッチングサービス等を提供する2社の合併について、経済集中規制の適用除外申請に対する首相決定(2327/QD-TTg)により同規制の適用除外とされましたが、その決定において合併後の事業者(NAPAS)が実施すべき条件(例えば、科学的・技術的進歩に向けた計画を策定し実施するなど)が定められています。
また、当該首相決定では、適用除外は5年間認められ、NAPASが当該条件に違反していない場合は自動的に適用除外期間が延長されることとなっています。
NAPASは、2019年12月22日、当該条件の実施状況について商工省等に報告書を提出し、同省が他の関係機関と協議等しながら評価を行った結果、2020年5月5日、NAPASが当該条件を十分に実施していることを確認したとしています。
しかし、本件適用除外は2004年競争法に基づくものであり、2019年7月に施行された改正競争法には経済集中規制に対する適用除外制度が存在しないため、今後、NAPASには当該適用除外は与えられず、改正競争法の規定に従って事業活動を行う必要がある旨言及されています(2004年競争法は改正競争法の施行により失効しています。)。
また、商工省は、市場支配的地位又は独占的地位にある事業者の活動に対する監督を強化する観点から、NAPASに対し、同社が提供するサービスの料金や内容を変更する場合、当該変更が差別的なものとならないよう、また、顧客や消費者に不利益がもたらされないようにするため、商工省等に当該変更を報告することを勧告しています。