7月の経済集中案件

2021年8月4日

1.RN OVERSEAS HOLDINGS LIMITED、ZN DEVELOPMENT LTD.、ROSNEFT VIETNAM B.V.及び ROSNEFT PIPELINES VIETNAM B.V.による経済集中(2021年7月1日公表)

競争消費者庁は、2021年7月1日、ZN DEVELOPMENT LTD.(ZN COMPANY)によるROSNEFT VIETNAM B.V.(ROSNEFT VIETNAM)及び ROSNEFT PIPELINES VIETNAM B.V.(ROSNEFT PIPELINES)の株式取得に関し、競争法第30条が禁止する経済集中には該当しないとの通知を行った旨公表しました(完全かつ適法な届出書は2021年5月14日に受理され、当該通知は2021年6月14日に行われたとされています。)。

本件は、ZN COMPANYが、RN OVERSEAS HOLDINGS LIMITED(RN COMPANY)が保有するROSNEFT VIETNAM及びROSNEFT PIPELINESの全株式を取得することを内容とするものとみられます。

本件株式取得が実施された場合、ZN COMPANYは、ROSNEFT VIETNAM及びROSNEFT PIPELINESの事業活動を統制・支配すること(細則政令(Decree No.35/2020/ND-CP)第2条第1項)に該当することとなることから、本件株式取得は、競争法第29条第4項の買収に該当するものとされています。

本件公表文では、本件株式取得がベトナム国外で実施されるとする一方で、本件株式取得の関係事業者がベトナム国内で天然ガス採掘及びベトナム南東部における天然ガスパイプラインの運営事業を行っているとする(そのため、本件株式取得は水平的な経済集中に該当するものと考えられます。)ことから、いずれかの事業者又は事業者グループについてベトナム国内における総資産又は売上額の規模が届出基準(競争法第33条及び細則政令第13条)に該当し、これを踏まえて本件に関する事前届出が提出されたものと考えられます。

2.VN Prosperity Pte. Ltd.及びPhuoc Kien Construction Investment Joint Stock Companyによる経済集中(2021年7月8日公表)

競争消費者庁は、2021年7月8日、VN Prosperity Pte. Ltd.によるPhuoc Kien Construction Investment Joint Stock Company.の株式取得に関し、競争法第30条が禁止する経済集中には該当しないとの通知を行った旨公表しました(完全かつ適法な届出書は2021年6月22日に受理され、当該通知は2021年6月30日に行われたとされています。)。

本件は、VN Prosperity Pte. Ltd.が、Phuoc Kien Construction Investment Joint Stock Company.の株式の60%を取得することを内容とするものとみられます。

本件株式取得が実施された場合、VN Prosperity Pte. Ltd.はPhuoc Kien Construction Investment Joint Stock Company.の事業活動を統制・支配すること(細則政令(Decree No.35/2020/ND-CP)第2条第1項)に該当することとなることから、本件株式取得は、競争法第29条第4項の買収に該当するものとされています。

本件公表文では、本件株式取得の関係事業者が不動産事業を行っているとされていることから、本件株式取得は水平的な経済集中に該当するものと考えられます。

3.Huong Hai - Quang Ngai Joint Stock Company, Vinfast Manufacturing and Trading Company Limited及びVinsmart Research and Production Joint Stock Companyによる経済集中(2021年7月8日公表)

競争消費者庁は、2021年7月8日、Vinsmart Research and Production Joint Stock Company(Vinsmart)によるHuong Hai - Quang Ngai Joint Stock Company(Huong Hai - Quang Ngai)の株式取得に関し、競争法第30条が禁止する経済集中には該当しないとの通知を行った旨公表しました(完全かつ適法な届出書は2021年6月18日に受理され、当該通知は2021年7月5日に行われたとされています。)。

本件は、Vinsmartが、Vinfast Manufacturing and Trading Company Limited(Vinfast)が保有するHuong Hai - Quang Ngaiの株式の71%を取得することを内容とするものとみられます。

本件株式取得が実施された場合、VinsmartはHuong Hai - Quang Ngaiの事業活動を統制・支配すること(細則政令(Decree No.35/2020/ND-CP)第2条第1項)に該当することとなることから、本件株式取得は、競争法第29条第4項の買収に該当するものとされています。

本件公表文では、本件株式取得の関係事業者の事業内容について、Vinfastが自動車や電動バイクの取引を行い、VinsmartがVinfastに対する自動車や電動バイクの部品の生産を開始し、Huong Hai - Quang Ngaiがクアンガイ省でスズ鉱石の探鉱、採掘、処理分野での事業を行うことを計画しているとされています。

4.TIKI GLOBAL PTE LTD.及びTI KI JOINT STOCK COMPANYによる経済集中(7月16日公表)

競争消費者庁は、2021年7月16日、TIKI GLOBAL PTE LTD.によるTI KI JOINT STOCK COMPANYの株式取得に関し、競争法第30条が禁止する経済集中には該当しないとの通知を行った旨公表しました(完全かつ適法な届出書は2021年6月10日に受理され、当該通知は2021年7月5日に行われたとされています。)。

本件は、TIKI GLOBAL PTE LTD.がTI KI JOINT STOCK COMPANYの株式の90.5%を取得することを内容とするものとみられます。

本件株式取得が実施された場合、TIKI GLOBAL PTE LTD.はTI KI JOINT STOCK COMPANYの事業活動を統制・支配すること(細則政令(Decree No.35/2020/ND-CP)第2条第1項)に該当することとなることから、本件株式取得は、競争法第29条第4項の買収に該当するものとされています。

本件公表文では、TIKI GLOBAL PTE LTDはシンガポールで設立され、ベトナムでは事業を行っていないとする一方で、TI KI JOINT STOCK COMPANYはベトナムにおいてオンライン小売事業を行っているとすることから、いずれかの事業者又は事業者グループについてベトナム国内における総資産又は売上額の規模が届出基準(競争法第33条及び細則政令第13条)に該当し、これを踏まえて本件株式取得に関する事前届出が提出されたものと考えられます。

5.Advanced Micro Devices, Inc.及びXilinx Inc.による経済集中(7月22日公表)

競争消費者庁は、2021年7月22日、Advanced Micro Devices, Inc.(Advanced Micro Devices)によるXilinx, Inc.(Xilinx)の株式取得に関し、競争法第30条が禁止する経済集中には該当しないとの通知を行った旨公表しました(完全かつ適法な届出書は2021年6月2日に受理され、当該通知は2021年7月16日に行われたとされています。)

本件は、Advanced Micro DevicesがXilinxの全株式を取得することを内容とするものとみられます。

本件株式取得が実施された場合、Advanced Micro DevicesはXilinxの事業活動を統制・支配すること(細則政令(Decree No.35/2020/ND-CP)第2条第1項)に該当することとなることから、本件株式取得は、競争法第29条第4項の買収に該当するものとされています。

本件公表文では、本件株式取得がベトナム国外で実施されるとする一方で、本件株式取得の関係事業者がベトナム国内で半導体部品の供給事業を行っているとする(そのため、本件株式取得は水平的な経済集中に該当するものと考えられます。)ことから、いずれかの事業者又は事業者グループについてベトナム国内における総資産又は売上額の規模が届出基準(競争法第33条及び細則政令第13条)に該当し、これを踏まえて本件に関する事前届出が提出されたものと考えられます。

なお、本件の届出書の受理(2021年6月2日)から競争法第30条が禁止する経済集中には該当しないとの通知(2021年7月16日)までの期間を踏まえると、予備評価の期間(届出書受理から30日以内)を超過しているため、予備評価を経て、正式評価(原則90日以内)が実施され、後者の期限を待たずに評価結果の通知がなされた可能性も考えられます。
ベトナムの経済集中規制では、届出がなされた案件が予備評価(競争法第36条)の段階で細則政令(Decree No.35/2020/ND-CP)第14条第2項の各号のいずれにも該当しない場合には、細則政令第14条第4項の規定により正式評価(競争法第37条)が行われることとなります。このため、仮に本件について正式評価が実施されたとの想定の下で考えますと、本件は予備評価の段階で実施可能と判断される範囲(細則政令第14条第2項)を超える性格を有すると判断されたものと推測されます。