自動車分野の競争状況に関する市場調査結果の公表

2021年12月15日

自動車分野の競争状況に関する市場調査結果の公表(2021年12月15日公表)

競争消費者庁(VCCA)は、2021年12月15日、ベトナムにおける自動車分野の競争状況に関する調査結果の概要を公表しました。ベトナムの自動車製造市場は集中度が高く、反競争的行為を容易に生み出しかねない状況にあるとの懸念を提起しています。具体的な内容については以下をご覧ください。

VCCAは、「改正競争法に基づく競争政策施行能力強化プロジェクト」の下、自動車分野の競争法違反の兆候を示す行為の調査・監視を強化するために「ベトナムにおける自動車分野の競争状況」に係る調査を実施し報告書を作成した。本報告書は、ベトナムの自動車分野における競争環境の主な特徴を概説し、いくつかの懸念を提起するものである。

1.9人乗り以下の自動車製造市場における競争

2017年から2019年の間において、国内の9人乗り以下の自動車製造セクターの上位は外資系企業が占めていた。何年もの間、トヨタは常に同セクターのマーケットリーダーであった。トヨタは生産能力や品質といったアドバンテージを有しており、常に市場シェア第一位を維持している。

2017年、トヨタのベトナムにおける市場シェアは31.2%で第一位であった。それに続きTHACOが19.21%であった。2018年までに、HYUNDAIが力強い上昇によりTHACOを上回り市場シェア20.52%となり第二位につけた。そして2019年までにHYUNDAIは市場シェア29.64%となりトップの地位に達し、トヨタの23.16%の市場シェアを上回った。

【画像】表1:9人乗り以下の自動車製造業者の市場シェア(2019年)。出典:VCCA

最近の9人乗り以下の自動車市場における首位企業グループの集中度は大変高い。これは、高い参入障壁があり大規模な投資を必要とするため多くの企業は当該市場で競争力を持ち得ないことや、多くの自動車製造・組立企業は、国内の税負担や貿易・経済協定による関税撤廃といった困難に直面し減産していることに起因する。

2.乗用車製造市場における競争

2017年から2019年の間において、国内の主要乗用車製造業者は、THACO、DOTHAHN、SAMCO、TRACOMCO、HAECO、DAEWOO及びVINAMOTORであった。乗用車製造業者は国内企業にシフトしており、ベトナムの自動車産業にとって好調な展開である。ベトナムの企業は力強く成長し、市場の主要な乗用車メーカーになった。この3年間、THACOは40%以上の市場シェアで市場を支配(訳注1)し続け、続いてDOTHAHNが20%以上の市場シェアを獲得した。また、TRACOMCOとHAECOも、2019年に市場シェアで4位と5位になり、市場で急速に成長している著名な企業である。

【画像】表2:2014年から2019年における乗用車市場シェア(販売額ベース)。出典:VCCA

乗用車市場に参入している企業が少なく、市場シェアが少数の企業に集中していることから、市場は非常に集中している。

【画像】表3:2014年から2019年における乗用車のCR指数及びHHI指数(訳注2)。出典:VCCA

上記のCR指数及びHHI指数の表データは、乗用車市場が支配的な地位を有する3社と5社の企業のグループを形成していることを示す。

2014年から2019年までの6年間の市場でのHHI指数は、1800を超え、市場集中度が非常に高いことを明確に示している。競争上の問題が起きる可能性は非常に高く、新規参入企業は非常に少ないことを示している。

(訳注1)関連市場における市場シェアが、単独の事業者の場合30%以上、事業者グループの場合、2社で50%以上、3社で65%以上などを超える場合、又はかなりの市場優位性を有する場合(同法第26条)、支配的地位にあるとみなされます(2018年競争法第24条)。

(訳注2)CR指数及びHHI指数は集中度の状況を示す指標であり、前者は上位企業の事業分野占拠率(上位累積集中度)、後者は個別事業者ごとの事業分野占拠率を示す指標と考えられます。

3.トラック製造市場における競争

トラックについては、2014年から2019年の期間において市場シェアの点でTHACOが絶対的リーダーであった。

【画像】表4:2014年から2019年におけるトラック製造市場シェア。出典:VCCA

VAMAの販売統計によると、THACOは常に競合他社よりもトラックの販売量が多い。2014年から2016年までの3年間の市場シェアは常に競合他社よりも高く45%以上あり、支配的な地位を有する企業であった。

2017年から2019年の間に、トラック製造市場ではHyundai Thanh Cong、Chien Thang、HoaMaiなどの新規ブランドの参入があった。しかし、THACOは依然として市場で第1位にランクされており、平均して40%を超える市場シェアを有していた。全期間を通じて、日野、いすゞ、THACOは常にベトナムで最も購入された製品ラインであった。

【画像】表5:2014年から2019年におけるトラックのCR指数及びHHI指数。出典:VCCA

乗用車市場と同様に、トラック市場も非常に集中している。3年間のHHI指数は2500を超えている(すべてが1800の閾値を超えており、市場への集中度が高いことを示している(訳注3)。)。CR3及びCR5指数から、トラック市場が高い支配的地位を持つ3社と5社の企業のグループを形成していることを示していることが分かる。

(訳注3)ベトナムの経済集中規制における予備評価では、経済集中後の関連市場における市場シェアとHHI指数による評価が行われるところ、細則政令(Decree No.35/2020/ND-CP)においてHHIの基準を1800と規定しており(同政令第14条第2項)、トラック市場のHHI指数が1800を超えるため集中度が高いとしているものと考えられます。

4.結論

ベトナムの自動車製造市場の特徴として、大規模な投資を必要とする参入障壁の高さゆえに当該市場で競争するのに十分な能力を備えた企業が多くない点が挙げられる。また、多くの自動車製造・組立企業は、国内の税負担や貿易・経済協定による関税撤廃といった困難に直面し、生産活動を減らさねばならない。こうした状況が自動車製造市場の集中度を高めている理由である。現在の高い集中度では、市場に影響を及ぼす反競争的行為を容易に生み出しかねない。同時に、競争当局は当該市場で起きる可能性のある反競争的行為を監視、評価、精査することが求められている。

「改正競争法に基づく競争政策施行能力強化プロジェクト」(プロジェクト)は、JICAによる技術支援プロジェクトである。本プロジェクトは、競争政策を向上させ、ベトナムの2018年競争法を効果的に施行する能力を強化することにより、ベトナムの競争環境を強化することを目的としている。ベトナムの多くの経済分野における競争状況を調査・評価することはプロジェクトの活動の1つであり、市場監視を促進し違反被疑行為の兆候を探知する能力を強化するものである。そして、当該調査・評価の実施は、早期の判断や警告を行うために審査プロセスを迅速化し、ベトナムにおける競争法の効果的な執行を強化するものである。