中小企業の競争法・政策認知度に関する調査結果の公表(2022年3月10日公表)

2022年3月10日

競争消費者庁(VCCA)は、2022年3月10日、ベトナムの中小企業における競争法・政策の認知度に関する調査結果の概要を公表しました。ベトナム企業の競争法・政策に係る認知度は、商工省が2015年に実施した調査の結果と比べると向上しているようですが、今回の調査では依然としてその理解度は低いと結論付けられました。また、公正な競争環境を創出し、外国投資を呼び込む機会を促進し、国内企業を保護するために、競争法等の啓発・普及活動や中小企業支援等が必要とされています。主な内容については以下をご覧ください。

1.調査方法等

調査対象企業数 2500社
調査対象企業の規模 零細企業、中小企業、資本金が1,000億ドン超の企業
調査対象企業の産業 農業、林業、水産業、工業、建設、サービス
調査対象企業の所在地 ベトナム北部地域、中部地域、南部地域
有効回答数 355社

2.調査結果

(1)企業の競争法・政策の一般的な認識

企業の競争法・政策に関する認識のレベルを、「全く知らない」、「聞いたことがあるがよく知らない」、「普通」、「よく知っている」、「非常に良く知っている」の6つのレベルで質問したところ、回答をまとめると以下のとおりであった。

(a)「非常に良く知っている」、「よく知っている」 32.96%
(b)「普通」、「聞いたことがあるがよく知らない」 50.7%
(c)「全く知らない」 16.34%

競争法・政策を十分に認識していると回答した企業は、競争法・政策に規定されている内容をよく理解している(17.18%)。また、競争法・政策を「非常に良く」認識していると回答したのは、ほとんどが法律事務所である。さらに、16.34%の企業が競争法・政策を全く認識していないと回答しているが、2015年に商工省が行った競争法認知度調査と比べると競争法を認識していない企業の割合は減少している。

(2)競争法・政策に関する情報源

競争法・政策について既に認識している企業に対して、競争法を認識するための情報源に関連する質問をしたところ、マスメディア(テレビ局、ラジオ局、新聞、SNSサイト)が最も一般的な情報源であり78.02%を占めた。次に一般的な情報源は、VCCAによる啓発・普及活動(38.59%)、他の行政機関や組織による普及活動(44.78%)、法律家との相談(37.46%)である。
しかし、競争事件を通じて競争法を認識したと回答した企業は2.53%に留まった。また、一部の企業は、親会社や法務部門のスタッフによる企業の内部情報を通じて競争法を認識したと回答した。
VCCAの啓発・普及活動による情報については、VCCAのウェブサイトが最も効果的な情報源であった。VCCAのウェブサイトを通じて競争法・政策を認識している企業の数は34.9%を占めた。また、1)セミナー、研修、トークショー番組、2)書籍、新聞、パンフレット、雑誌、3)事件処理結果のプレスリリースといった情報源がウェブサイトに続いた。こうした情報源を通じて競争法・政策にアクセスできる企業は21%~24%を占めた。
他の行政機関や組織による普及活動については、各産業の監督官庁を情報源としているとの回答が最も高かった(39.72%)。その他の情報源としては、地方自治体・行政機関の地方部局(31.83%)、業界団体(29.0%)もあった。

(3)競争法で禁止されている行為に関する認識

(a)反競争的合意
反競争的合意の行為の理解度に関する回答について、「正しく理解している」、「理解していない」、「誤解している」で評価したところ、反競争的合意の行為は競争法に違反するだけでなく、刑法に違反する可能性があるが、「正しく理解している」と評価される企業は49%~57%に留まり、「理解していない」と評価される企業は25%であった。また、20%~30%の企業は、反競争的合意の行為は正しいものであり、許されていると回答した。こうした誤解は、競争法に違反し、ビジネス環境に不当な影響を与えるだけでなく、ベトナムの社会的厚生や消費者の権利を害することとなる。
(b)市場支配的地位濫用
市場支配的地位濫用に関する理解度に関する回答について、「正しく理解している」、「理解していない」、「誤解している」で評価したところ、「正しく理解している」と評価された企業は少なく46.20%に留まった。また、「理解していない」と評価される企業は32.68%で、「誤解している」と評価された企業は21.13%であった。
(c)経済集中規制
経済集中規制については、多くの企業が競争法の規定における経済集中の定義を認識しており、84.79%の企業が正しい回答をした。禁止されている経済集中規制、経済集中の届出手順、条件付き経済集中に関する認識は平均的であった。企業の約76%が、禁止されている経済的集中について正しい回答をした。また、「ベトナム市場における経済的集中はすべての場合に禁止されているわけではなく、企業は自由に経済集中を行えるか」という質問に関しては、約56%の企業が「誤っている」と回答した。52.11%の企業は、経済集中の届出に関する規制が競争法の規定と一致していることを認識していた。同時に、53.52%の企業が条件付き経済集中に関する規制を正しく認識していた。
しかし、約48%の企業は、経済集中の通知に関する規制について認識していなかったか誤った回答をした(誤った回答の割合は22.81%であり、認識していなかった割合は25.07%であった。)。また、VCCAに経済集中届出書類を提出すればすぐに自動的に経済集中を実行できると回答した企業が約9%存在した。条件付き経済集中に関する規制については、33.80%の企業がこの規制について認識しておらず、12.67%の企業が競争法の規定と矛盾する意見を有していた。
(d)不公正な競争行為
不公正な競争行為については、60.29%の企業は不公正な競争行為の定義を正しく認識していた。

(4)罰則に関する認識

一般的に、競争法違反に対する罰則に関する企業の認識はまだ低い。
違反行為への対処と是正措置に関する問に正解した企業は30.9%であった。競争制限行為や経済集中規制違反に対する罰金に関する問に正解した企業は約45%であった。不公正な競争行為に対する罰則に関する問に正解した企業は51.54%であった。

(5)競争当局に関する認識

商工省(VCCA)を競争に関する国家管理を実施する政府を補佐する起点となる機関として認識している企業は65.63%であったが、認識していない企業は24.78%であり、残りの9.59%は他の機関であると回答した。

3.結論

調査結果から、調査対象企業の競争法・政策に関する理解度は低く、ビジネス慣行として効果的に適用できていないことが明らかになった。競争法・政策の認知度が低いことは、ベトナム企業が「インダストリー4.0(第4次産業革命)」やグローバルなビジネス環境にも適さないという懸念でもある。世界中の多くの国で、企業の日常業務における競争法・政策の適用は、企業自体の正当な利益を保護するための効果的なツールと見なされているが、一方、多くの調査対象企業はこうした問題を認識していない。
公正な競争環境を創出し、外国投資を呼び込む機会を促進し、国内企業を保護するために、以下の取組等が必要である。
・国家競争委員会の設置
・商法及び競争法の啓発・普及
・Covid-19後の中小企業支援のための中央レベルから地方レベルまでの一貫した政策の策定
・「インダストリー4.0(第4次産業革命)」時代の中小企業の法務及び事業をサポートするためのコンサルティングサービスの促進