2022年3月27日
競争消費者庁（VCCA）は、2022年3月27日、ベトナムにおける尿素肥料分野の市場調査結果の概要を公表しました。本調査は、2021年にベトナムにおいて尿素肥料を含む肥料全般の価格が上昇したところ、尿素肥料市場を継続的に調査・監視し、その基礎となる一般的なデータを収集するために行われたとされています。また、本概要の最後では、政策・法的提言、所管官庁に対する提言のほか、尿素肥料市場で活動する事業者に対して価格カルテルや市場分割等になり得る条文等が契約書に含まれないよう注意すること、競争法遵守プログラムを開発するなどして競争法違反によるビジネスリスクを回避すること等の提言が行われています。主な内容については以下をご覧ください。
肥料は、農業生産において重要な物質である。ベトナムは、これまで尿素、過リン酸石灰、溶融リン酸、NPK複合肥料、有機肥料などの多くの重要な肥料の供給に積極的に取り組み、輸入肥料で農業生産のニーズを満たしてきた。ベトナムは毎年、約900万から1000万トンの無機肥料を消費している。
2020年の工業生産に使用される肥料の量は1,023万トンで、そのうち760万トンは無機肥料（尿素、リン酸塩、ジャガイモ、NPK、SA、DAPなど）で263万トンは有機肥料である。さらに、家庭では、農業、畜産、農産物加工から得られる副産物から約1,700万トンの有機肥料を生産している。
現在、ベトナムには約841の肥料生産施設があり、総生産能力は2,925万トン／年である。そのうち無機肥料の生産能力は2,521万トン／年であり、有機肥料の生産能力は404万トン／年である。無機肥料工場の中には、年間500万トン以上の生産能力を持つ大規模な無機肥料メーカーが約15社ある。
統計によると、南部地域の生産施設の数が約75％を占め（ロンアン省、カントー市、ティエンザン省、アンザン省、ホーチミン市、ドンナイ省、ビンディン省等のいくつかの省市に集中している。）、北部地域の生産施設の数が約25％を占めている（ハノイ市、タンホア省、ゲアン省、ハイズオン省、イエンバイ省、バクザン省、ニンビン省等のいくつかの省市に集中している。）。
工場は主に南部地域（事業者数と国内消費の62％以上を占める）に集中しており、ロンアン省（国内最大）、カントー市、ティエンザン省、アンザン省、ホーチミン市といった一部の省市に集中している。
中部地域-中部高原（事業者数と国民消費の19％以上を占める）は、主にゲアン省とタンホア省に分布している。
北部地域（事業者数と国民消費の19％以上を占める）は、主にバクザン省、ニンビン省、ハノイ市に分布している。
2020年及び2021年の10か月間における肥料の輸入量は以下のとおりである。
尿素肥料市場は1）生産／輸入、2）卸売、3）小売の3段階で構成される。
ベトナム市場の尿素肥料は、国内で生産又は海外から供給される。
現在、ベトナムには4つの尿素工場があり、総生産能力は約2,270トン／年である。実際、2018年から現在に至るまで上記4つの工場の尿素生産量は継続的に増加している。
尿素はすべての肥料の中で輸入比率が最も低い製品である。2021年の最初の8か月で、尿素肥料の輸入量は245.9千トンに達し、総額は9,650万米ドルに達し、肥料の総輸入量の約7.8％であり、総輸入額の10.6％である。
ベトナムには尿素肥料の輸入を行う事業者が2グループ（製造業、その他）ある。
商工省の統計によると、全国の尿素肥料の輸入量は2018年から現在に至るまで減少しており、2018年の尿素肥料の輸入量は全国で525,796千トンであった。また、2019年の輸入は2018年の約75％に過ぎなかった。2020年の総輸入量はわずか111,416千トンで、2018年の約21％であった。言い換えれば、現在、ベトナムの尿素肥料市場では国内生産が主な供給源となっている。
卸売段階では、尿素肥料は製造業者から流通業者又は取引先（trade partners）に直接販売される。
小売段階では、全国の多くの店舗や流通業者が参入し活発である。これらの店舗や流通業者は、卸売段階から簡単に供給を受けることができ、各店舗では様々なブランドの尿素製品や多くの肥料製品を販売することができる。
競争法の観点では、尿素市場が関連市場であるが、経済全体としては、尿素市場は天然資源採掘（ガスと石炭）の川下市場であり、その他工業生産（肥料と接着剤）の川上市場でもある。
尿素市場における競争を阻害する行為は、作物部門だけでなく、経済の他の多くの部門にも影響を与える可能性がある。反競争的行為の影響を受けるのは最終的には消費者（栽培の分野で肥料を使用する農民、組織、個人、工業製品を使用する消費者）である。したがって、尿素市場における反競争的行為は、消費者の利益だけでなく社会厚生にも重大な損害を与える可能性がある。
尿素肥料市場は参入障壁が高いため、限られた生産企業のみが長期間安定的な経営を行える。そのため、経済的な観点から、尿素肥料市場は寡占的な市場構造を有しており、一部の生産企業グループに力が蓄積されている。
また、尿素肥料は国の資源（ガス・石炭）から生産されているため、生産企業は国有企業である。したがって、公正かつ平等な競争環境を確立し、市場アクセスを強化し、経済効率、社会厚生を改善し、消費者の利益を保護するために、以下の措置が講じられる必要がある。
第一に、天然資源の利用における国益を確保するために、国内企業（国有企業を含む）が尿素生産に参入するための好ましい条件を作り出す政策を維持する必要がある。
第二に、国有企業の参加を得て、尿素肥料生産市場の現在の構造を維持する必要がある。尿素産業は多額の投資資本を必要とし、非国有企業がそうした能力を持つことは困難である。現在、生産段階では、2つの国有企業に属する国有企業グループが参入しているところ、これらの企業の存在により企業グループ間の競争力を生み出し、それにより、経済効率性、消費者厚生、社会厚生が改善される。
第三に、製造企業グループの事業活動の監視に関連する政策を策定し、これらの企業グループが寡占的な市場構造の利点を利用して競争を歪める行動をとらないようにする必要がある。
第四に、今日の市場における供給過剰の現象に対処するための政策を策定し、企業が競争を促進する動機を生み出す必要がある。そのために以下の対策が推奨される。
・企業が過剰生産物を輸出するための海外市場開拓の支援
・尿素を原料とした産業の研究、構築、発展
第五に、尿素市場での事業に問題を抱えている企業グループの事業活動を支援するための政策が必要である。前述のように、現存の生産企業を維持し、拮抗させ、市場の競争力を高める必要がある。当該企業グループの事業活動を促進するために、競争法違反被疑行為の審査と並行して、国家管理機関（国家資本管理委員会）は綿密な監督を実施し解決策を提示する必要がある。これにより、尿素肥料市場全般の将来の経済効率を改善するだけでなく、製造工場の建設と設立における国家の投資資本への経済的損害を抑えることができる。
第一に、所管官庁は、尿素肥料市場を監視するためのデータベースを構築する必要がある。ベトナムの尿素肥料生産市場は集中度が高いため、農業活動に直接影響を及ぼすところ、公正で平等な競争環境を確保し社会厚生を向上させる必要がある。競争環境を確保するためには、国の機関が市場における異常な活動を積極的に捕捉する措置を講じる必要がある。市場監視ツールの1つは、業界データベースシステムの構築であり、市場構造、市場変動性及び市場参加者間の取引契約を反映する基本的な指標が含まれる。 効率を上げるために、単一の国家機関がデータ収集を行うのではなく、関連する国家機関間の協力、運用メカニズムが必要である。
第二に、一般的な競争法の啓発・普及、特に尿素肥料市場で活動する企業に対する競争法の啓発・普及を強化する必要がある。
企業の競争法規制の認識に誤りがあると、無意識に競争法に違反したり、自らが違反被疑行為を受けた場合に競争法により自らの正当な権利と利益を保護する方法を見落とすことになりかねない。そのため、以下の対策が必要である。
第一に、競争法の啓発・普及活動、出版物などあらゆるツールを通じて、競争法の認知度を向上する必要がある。
第二に、競争法及び関連法を積極的に研究し、定期的に情報を更新する必要がある。企業が競争環境を制限し事業活動に直接影響を与える恐れのある行為を探知した場合は、関連国家機関と積極的に協議する必要がある。反競争的合意を防止するため、事業者は、契約に次のような条項／条件が含まれていないことに注意する必要がある。
（i）直接的又は間接的に価格を決定することの合意
（ii）市場の分割に関する合意
（iii）他の企業が市場に参入することを抑止又は制限するため合意
第三に、ベトナムの尿素肥料市場のように非常に集中している市場では、事業者は競争法遵守プログラムを開発し、競争法違反によるビジネスリスクを抑止することが推奨される。
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