経済集中ファクトシートの公表

2022年7月4日

競争消費者庁(VCCA)は、経済集中ファクトシート(概況報告)を公表しました。

本概況報告では、2021年における世界及びベトナムにおけるM&Aの概観、ベトナムにおける経済集中届出及び審査状況が紹介されています。

本概況報告のうちベトナムにおける経済集中届出及び審査状況等を以下に記載します。

1.ベトナムにおけるM&Aの概観

VCCAの集計データによると、2021年にベトナムでは875件のM&A取引が行われ、このうち、134件が買収、90件が吸収合併、651件がジョイントベンチャーの形態によるものであった。

2.ベトナムにおける経済集中規制の状況

M&A取引の増加により、2018年競争法に基づく届出の対象となる取引も増加しており、2021年に、VCCAは130件の届出を受領し、2020年と比較して増加した。

(1)経済集中に参加した企業

VCCAに届出された130件の経済集中には353の企業(2022年4月25日時点で更新されたデータ)が関与しており、そのうち88件は外国企業(海外で設立され運営されている)であった。国内企業は265件であり、外国企業の3倍以上であった。2020年は外国企業と国内企業の割合がそれぞれ48%と52%であったところ、国内企業の比率は大幅に増加した。

表:経済集中に参加した企業別の届出件数

【画像】出典:VCCA

(2)経済集中の類型

130件の経済集中のうち、109件が買収(82%)、12件が吸収合併(9.2%)、6件(5.4%)がジョイントベンチャーである。また、審査の結果、3件は競争法の規定による経済集中届出の対象ではないと判断された。

表:経済集中の類型別の届出件数

【画像】出典:VCCA

(3)経済集中の形態

130件の経済集中のうち、78件が水平型経済集中(同一関連市場で活動している企業間の経済集中)であり、約61%を占めた。11件が垂直型経済集中(商品又はサービスが相互に投入し合う若しくは補助し合う市場で活動している企業間の経済集中)であり、約24%を占めた。31件が混合型経済集中(異なる関連市場で活動している企業間の経済集中)であり、約9%を占めた。また、水平型経済集中と垂直型経済集中の両方の形態に該当する経済集中が7件あり約6%を占めた。

(4)事業分野別の経済集中

130件の経済集中分野は様々であり、約53%が不動産(住宅用不動産、工業用及び商業用不動産等)、サービス(保険、航空、小売、eコマース等)及びエネルギー(従来の再生可能エネルギーを含む)分野に関連していた。

表:事業分野別の経済集中届出件数

【画像】出典:VCCA

(5)届出書類の評価結果

130件の経済集中のうち、124件について予備評価(完全かつ適法な届出書の受理日から30日)が行われ、3件について正式評価が行われた。残りの3件については経済集中届出を行う必要のない取引であり、届出書類は届出会社に返送された。

予備評価段階で終了した事案は、関連市場に影響を及ぼさない又は反競争的結果をもたらす可能性が低く、競争上の懸念を引き起こさない経済集中であった。これらの経済集中はすべて、市場シェア又は合計市場シェアが20%未満であった(2020年3月24日付「競争法の条項の一部の詳細を定める政令」(35/2020/ND-CP)第14条で規定されたセーフハーバー以下)。約12%の事案は、合算市場シェアが比較的低く(5%未満)、合算市場シェアが1%未満又は0%でさえある場合もあった(関連する企業が事業登録を行っているものの、まだ収益を出していないため)。

正式評価が行われた事案は、関連市場における競争に影響を与える又は影響を与える可能性のある経済集中であり、届出された事案の2%未満であった。これらの経済集中はすべて、市場シェア又は合計市場シェアが20%以上(セーフハーバー以上)であった。正式評価が行われた3つの事案(航空、プラスチック生産、エネルギー部門)はすべて市場における競争に影響を与える可能性があったが、実質的な反競争効果は認められなかったため、2018年競争法第30条で禁止される経済集中とはならなかった。ただし、これらの経済集中は、2018年競争法第41条第1号b項に規定される条件付き経済集中となった。その結果、商工省は、関連市場における健全な競争環境を確保すると同時に、競争を制限するリスクを最小限に抑えるためにいくつかの勧告を行った(これは2018年競争法第42条に規定される条件と見なすことができる。)。

 

3.2021年における経済集中規制の評価

2021年は、2018年競争法に基づく経済集中規制の施行から3年目であり、2019年7月から2020年までの期間といくつかの類似点がある。

  1. 届出のあった経済集中のうち、最も一般的な形態は買収であり、約82%を占めた。
  2. 届出義務のある経済集中は一部のM&A取引のみである。2021年に、ベトナム市場における875件のM&A取引の約14.5%が、商工省に届出を行った。
  3. 届出のあった経済集中はベトナムの大企業や企業、または外資系企業であった。VinGroup、Kido、PAN、BCG、Masanなどの国内の大企業は、2021年に大規模な経済集中を届け出る必要があった。2021年にベトナムで届出が行われた経済集中に参加した353社の半数以上が外国投資企業であった。
  4. 届出のあった経済集中の多くは、企業の内部再編や企業間の資本保有比率の変更を目的とした取引に関連するものであった。経済集中を通じた企業再編は、企業の経営効率の向上に貢献し、それにより、ポストコロナ時代の経済発展を促進した。
  5. 2019年から2021年の間に届出のあった経済集中のうち、約30件はベトナム国外(オフショア)で取引が実行された。これらのほとんどは世界規模で行われ、ベトナム市場とのつながりやビジネスがあるものであるため、ベトナムの競争当局を含むすべての関連する競争当局に届出が行われた。
  6. 届出のあった経済集中は、当事会社間の関係と当事会社の所有権の構造の両方の観点からますます複雑になる傾向があった。このため、直接効果、間接効果及び潜在的な反競争的影響の予測を含む反競争的効果の包括的な評価を要した。
  7. 届出のあった経済集中のうち、正式評価の対象となるのはごくわずかであった。予備評価事案のほとんどはより迅速に評価が行われた。2021年には、予備評価事案のほとんどの書類(127の書類)は、2018年競争法の規定に従って30日以内に評価が行われた。
  8. 届出のあった経済集中のうち大規模なものは、不動産、エネルギー、サービス、eコマース、建築材料、食品及び飲料の加工、電気、電子、電気機器といった分野で行われた。

また、2021年の経済集中には、2020年と比較して次のような違いがある。

  1. 経済集中は多くのステップや段階で行われ、また、内部再編と他の企業との経済集中という「二重の」目標を持って実施されるなど非常に複雑であった。
  2. 個人は、会社の株式を所有する株主として、またはベトナム市場で事業を行うが事業登録の対象とならない個人としてのいずれかの方法で経済集中に参加した。
  3. 一部の経済集中は、ベトナム国外で、経済集中に参加するベトナム企業の商業活動とはまったく関係のない分野で行われた。
  4. 買収した企業を支配するために株式の一部を間接的に取得するという形で、多くの経済的集中が行われた。この種の間接的な買収は、同一グループ内の子会社と同一グループ外の会社の間で行われ、その結果、グループが非グループ企業を間接的に支配することになる。