プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)気候変動下のメコンデルタ地域における持続可能な発展に向けた産官学連携強化プロジェクト
(英)Project for Enhancing Science-based Integrated Collaborations towards Sustainable Development of the Mekong Delta Region under Climate Change

対象国名

ベトナム

署名日(実施合意)

2021年12月7日

プロジェクトサイト

カントー市含むメコンデルタ全域

協力期間

2022年4月1日から2027年3月31日

相手国機関名

(和)カントー大学
(英)Can Tho University

背景

ベトナムの高等教育セクターは、進学率は約30%(2020年)と拡大してきているが、大学の研究成果の社会への応用や地域貢献が限定的であることが課題で、ベトナム政府は大学の教育・研究能力の強化に加え、産官学連携の促進を目標に掲げている。
この課題は同国南部のメコンデルタ地域にも当てはまる。同地域は、ベトナムの輸出量のうち米は95%、果物は70%、水産物は75%を占める産地であり、その輸出額はGDPの20%を担い、ベトナムの社会経済及びメコン近隣諸国にとって重要な地域となっている。同時に同地域は、世界で最も気候変動の影響を受ける三大デルタの一つであり、気候変動による温暖化、高塩分化、湿潤化等により農水産業における収穫量が減少する見込みが示されている。このことから、ベトナム政府は、2017年に「メコンデルタ地域の気候変動影響下での持続可能な開発に係る政府決議 120」1を発出し、気候変動適応策をとっていくことを掲げている。この実現には同分野での科学的研究や技術開発を今後一層強化することとともに、産官学連携による取組の推進が不可欠であり、高等教育機関がその中心的役割を担うことが期待されている。
JICAはこれまで、同地域の中核大学であるカントー大学(CTU)に対し、円借款「カントー大学強化事業」を通じ研究実験棟や教育・研究用機材の整備を支援してきた。併せて、円借款附帯技術協力「カントー大学強化附帯プロジェクト(2016年3月~2021年12月)」を通じ、高位学位取得支援を通じた教員の育成、共同研究実施による研究能力の向上、実践的な気候変動対応をテーマとした修士プログラム新設による教育プログラムの拡充を行うことで、ベトナムの農水産業の成長及び気候変動を含むメコンデルタ地域の環境問題への対応に必要とされる人材の供給力の向上を図ってきた。
その結果、2021年3月に開催された「第3回気候変動に対応したメコンデルタの持続可能な開発フォーラム」では、グエン・スアン・フック首相(現国家主席)が、CTUがハブとなり、地域のステークホルダーと共に、上述の決議120に沿ったメコンデルタ地域の持続可能な開発(Sustainable Development for Mekong Delta。以下、「SDMD」)を先導するよう指示するなど、CTUへの高い期待が示された。またその際、CTUの役割として、地方行政や企業との連携(以下、「地域連携」)による人材育成及び地域課題解決の実践が明確に示されている。
CTUはこれまでの協力により、地域の拠点大学としての教育・研究の基盤は整いつつあるものの、地域連携に向けては、様々なステークホルダーとの連携を組織的に牽引していくための体制の強化が一層必要である。また、教育・研究の成果を地域社会に還元する手法やノウハウの浸透のため、地域連携を体系的に実践する能力及び体制強化が求められている。
以上を踏まえ、本プロジェクトは、CTUにおいて実践的な教育・研修実施、研究成果の社会実装の拡充、地域連携実施体制の強化を行い、地域連携ネットワーク構築及び地域連携活動の実践能力向上を目的として実施する。

目標

上位目標

CTUが、地方行政・企業・他大学との地域連携活動を通じ、メコンデルタ地域における気候変動に適応した農業・水産養殖業の持続的発展に貢献する。

プロジェクト目標

CTUにおいて、地方行政・企業・他大学とのネットワークを構築するとともに、メコンデルタにおける気候変動適応策構築に資する地域連携活動の実践能力が強化される。

成果

1.CTUでSDMDに資する実践的な教育・研修が実施される。
2.CTUの気候変動適応研究成果の社会実装にかかる活動が拡充される。
3.CTUがSDMD地域連携のための体制を構築し、メコンデルタの地域連携拠点として機能をもつ。

活動

成果1

1-1.既存の修士プログラムを改編し、メコンデルタの地方行政官に対応した修士プログラムの開設支援を行う。
1-2.メコンデルタの地方行政官及びコミュニティ向け短期研修コースの開設支援を行う。
1-3.3分野(農業、水産・養殖、環境)の気候変動修士プログラム及び新規開設するスマート農業分野修士プログラムにおいて、特別講義及びセミナーを実施する。

成果2

2-1.地方行政、企業等を巻き込んだ社会実装活動計画を作成し、活動の優先順位を定める。
2-2.選定された社会実装活動の実施・モニタリング・評価における技術的助言を行う。
2-3.社会実装活動の成果を共有するための現地セミナー、現地ワークショップ、会議を開催する。
2-4.社会実装のための地方行政官及び地域コミュニティ向け短期研修コースを実施する。

成果3

3-1.地域連携活動を統括するSDMD連携室(仮称)及びSDMD推進のためのステアリングコミッティーの開設支援を行う。
3-2.気候変動適応策に関しメコンデルタ関係者とのSDMD会議の定期的開催を支援する。
3-3.メコンデルタ各省の気候変動モニタリングデータを行政機関等と連携して集約・分析し、気候変動適応策に活用する。
3-4.地域連携活動に伴う成果をシーズとしてデータベース化し、ホームページ等で発信する。
3-5.メコンデルタでの研究、CTUとの学術交流に関心のあるベトナム国内外の大学及び民間企業に対し、地域連携活動の成果を発信するシンポジウム、セミナーを定期的に開催する。
3-6.メコンデルタの課題解決に関心のある企業等の窓口となる機能を強化する。

投入

日本側投入

1.長期専門家派遣(合計約120M/M)
チーフアドバイザー、アカデミックアドバイザー、業務調整/産官学連携
2.短期専門家派遣
研究・教育指導、産官学連携
3.機材供与:地域連携活動に必要な最小限の実験・調査用資機材
4.地域連携活動に係る費用

相手国側投入

1.カウンターパート
CTUのプロジェクトダイレクター(副学長)、プロジェクトマネージャー(SDMD担当副学長)、関連学部長・副学長、CTU内メコンデルタ関連部署の長、CTUのプロジェクトチームメンバー等
2.CTU内プロジェクトオフィス
3.プロジェクト実施に係る費用
カウンターパート人件費・旅費等