ベトナム:企業のGHG算定報告制度に関する国際セミナーの開催

2021年12月15日

2021年12月15日から17日にかけて、日本国環境省とベトナム社会主義共和国天然資源環境省(MONRE)は、持続可能な未来の構築に向けた共通課題としての環境問題をテーマとして協議し、先進的なソリューションを共有することを開催目的とした「第二回日本・ベトナム環境ウィーク」を開催しました。このなかで、JICA SPI-NDCプロジェクトは「ベトナムが導入する事業所のGHG報告システムとその設計に関するステークホルダー会合」セミナーを12月13日にオンライン開催しました。

ベトナムでは近年、気候行政文書の策定・更新が進み、特に2020年に承認された改正環境保護法(LEP)と緩和に関する政令6号を含む施行細則の準備によって、パリ協定の方向性に合致した法的基盤が強化されつつあります。この制度作りの一環として、国内では一定以上のエネルギーを使用する対象事業所に対して、GHG算定報告が義務付けられました。これは日本の地球温暖化対策推進法(温対法)における企業の算定報告公表制度に類する取組みといえ、事業所による所内の排出量の把握にはじまり、排出削減余地の検討や計画作りに向けた量的根拠や実施に貢献する機会を提供することになります。

本セミナーは、先行して類似の報告制度を既に導入している日本やシンガポールを招聘して対話形式で制度運用の経験やレッスンを共有することで、ベトナムでの今後の制度構築や持続運用のインプットに資することを目的に開催されました。セミナーの開催にあたっては、JICAベトナム事務所次長よりオープニングリマークスとして本会合への期待が述べられました。

またMONREの気候変動対策局(DCC)より、ベトナムでの事業所GHG排出報告の要件の具体と、報告システムの活用に関する今後の期待が述べられました。続いて、SPI-NDCからはNDC実施を支える具体的事業の紹介と、ベトナム政府から要請があったオンラインGHG算定報告システム作りおよび制度運用を支える能力構築に関するアプローチが紹介されました。

ベトナムに先行した類似制度の運用経験の共有として、まず日本環境省の地球環境局地球温暖化対策課より、日本の企業の温室効果ガス算定・報告・公表制度について、制度的要件、算定方法や報告の仕組みについて紹介がありました。

つづくシンガポール国家環境庁炭素緩和課からも、2019年1月より同国で施行されたCarbon Pricing Actに基づく事業所の報告要件、支援制度、方法論やオンラインシステムについての経験が共有されました。

その後、同テーマに関連する地域協力として、環境省地球環境局国際地球温暖化対策担当参事官室より、ASEAN地域で支援をしているコ・イノベーションのための透明性パートナーシップ(PaSTI)に触れ、ベトナムでの協力について説明がありました。

第二部では更にテーマが絞られ、オンライン報告制度の「設計面」に関する議論がなされました。まずベトナムIT事業者のVietnam Technology Solution JSCからは、商工省(MOIT)が所管するエネルギー消費量報告制度のオンライン報告システムについて紹介されました。設計・管理サイドからのレッスンが共有されるとともに、同社がSPI-NDC事業下で展開しているGHG報告制度のオンライン化に関するレビューについて言及がありました。

続いて、環境省地球環境局地球温暖化対策課は、日本が2021年まで使用した「省エネ法・温対法電子報告システム」と「フロン法電子報告システム」を一体化し、各種報告のワンストップ化と他の制度連携を目指し、2022年5月から稼働を開始する省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム(EEGS)について紹介がなされました。

最後にSPI-NDCのファシリテートのもと、パネルディスカッションの時間が設けられ、各報告者よりこれまでの各国の経験を活用しながらベトナムにおける事業所のオンラインGHG排出報告システムをどう効果的に構築にすべきか議論がなされました。

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2021年より事業開始したSPI-NDCにとって、本会合はパンデミック制約を乗り越えて外部からのオンライン参加者を招いて実施する初のイベントとなり、対面会議が出来ないにもかかわらずベトナム・日本の政府機関及び民間企業から併せて80名近くの方に参加いただきました。改正環境保護法下のベトナムにおいてこれから始まるGHG算定報告に対して、多くの方が関心を持っていることが伺えました。

本事業が提供するシステム設計と報告対象となる民間セクターを対象とした能力強化の支援は、ベトナムが担うことになる制度運用の要件の一部にすぎませんが、こうした取り組みや各国対話が、制度の持続性や横の連携に繋がっていくことを期待します。

本会合での資料は以下のリンクからアクセス可能です。