プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)北部地域における安全作物バリューチェーン強化プロジェクト
(英)Project for Strengthening Safe Crop Value Chains in Northern Viet Nam

対象国名

ベトナム

署名日(実施合意)

2022年1月11日

プロジェクトサイト

ハノイ市、フンエン省、ハナム省、ナムディン省、バクニン省、ハイズオン省、ソンラ省

協力期間

2022年5月10日から2026年5月9日まで

相手国機関名

(和)農業農村開発省 国立農業普及センター
(英)National Agriculture Extension Center(NAEC), Ministry of Agriculture and Rural Development(MARD)

背景

ベトナム社会主義共和国(以下、「ベトナム」という。)では、2020年には1人当たりGDPが2,785米ドルを超え、ドイモイ政策開始当初の324米ドル(1996年)に比して、24年間で約8.5倍となるなど、著しい経済成長を遂げている。所得の向上に伴い都市部の中間層などを中心に安全・安心な食品への需要が高まる一方で、ベトナムでは農産物生産における農薬や化学肥料等の使用量が増大しており、農産物の安全性確保が喫緊の課題となっている。ベトナム農業農村開発省(Ministry of Agriculture and Rural Development、以下、「MARD」という。)は「農業農村開発5か年計画」(2021~2025)において、2025年までに達成すべき活動として、農業資材の品質と食品安全に関する管理の強化、高い品質の食品を確保できる農産物バリューチェーンの各段階(生産・加工・流通・販売)の連携強化等を挙げている。
農産物の安全性確保のためには、適正な農薬・肥料の使用に関する指導と、農産物の検査と安全基準を満たさない農産物に対しての罰則の適用、の両輪が機能する必要がある。適正な農薬・肥料の使用については、MARDは適正農業生産規範(Good Agriculture Practice、以下、「GAP」という。)のベトナム版(以下、「VietGAP」という。)を制定し、VietGAPの適用を推奨しているが、VietGAPの工程は60以上あり認証費用も高額であることから普及が限定的であった。そこでJICAは、技術協力プロジェクト「農産物の生産体制および制度能力運営向上プロジェクト」(2010年~2013年)において、農家の実践が容易かつ認証費用も必要ないBasicGAP(VietGAPの基本的工程に絞ったもの)の策定を行った。そして、「北部地域における安全作物の信頼性向上プロジェクト」(2016年~2021年)(以下、「安全作物プロジェクト」という。)では、BasicGAPの指導、安全作物の販路開拓や安全作物に関する理解促進のための消費者向け啓発活動を行い、対象農家グループの安全作物栽培技術が向上し栽培面積も増加した。BasicGAPは農家が取り組みやすい安全な生産方法であることに加え、より難度が高く付加価値の高いVietGAPや有機栽培へステップアップするための入り口となり得るという利点はあるものの、認知度が低いことから付加価値が付きにくいことが普及上の課題であった。
農産物の検査・罰則の適用については、ベトナムでは食品安全に関わる省庁の業務内容が政令等で詳細に定められている一方で、その役割が十分に機能していないことから、独自の流通網を持つスーパーマーケット等を除いては、安全性が不確かな野菜と安全な野菜が混在して流通しているケースが多い。そのため、安全作物プロジェクトでは、安全作物が差別化される販路をプロジェクトの支援により開拓する必要があった。
以上のことから、本事業は、BasicGAP/VietGAPの指導に加えて経営能力強化も指導することにより、安全作物生産農家を支援する普及体制の強化、安全作物のフードバリューチェーン(以下、「FVC」という。)関係者の情報ギャップ是正等を通じた連携強化、政府の安全性確保の体制改善を通して、販路を含む安全作物FVCを強化し、ベトナムにおける安全作物振興を目指す。

目標

上位目標

対象地域において安全作物が持続的に振興される。

プロジェクト目標

対象地域において安全作物(野菜・果実)バリューチェーンが強化される。

成果

0.プロジェクト開始に向けた活動が実施される。
1.安全作物の普及に向けた人材が育成される。
2.対象農協の安全作物生産及び経営能力が向上する。
3.バリューチェーン関係者間の連携が強化される。
4.安全性確保に向けた政策実施能力が強化される。

活動

0-1.対象地域の安全作物市場、安全作物栽培状況が把握される。
0-2.各対象省において、対象農協の選定基準が定められ、対象農協(候補)を選定する。
0-3.対象農協(候補)に対して説明会を実施し、活動内容に同意する農協を最終的な対象農協とする。
0-4.ベースライン調査を実施する。
0-5.各作期における対象農協の安全作物の営農状況(面積、販売量、販売価格等)をモニタリングする。
0-6.エンドライン調査を実施する。

1-1.先行案件のマニュアルを含む、カリキュラム・研修教材のドラフト(市場ニーズ調査、営農計画作成、BasicGAP適用を含む技術研修、組織強化支援等)を作成する。
1-2.NAEC/省普及センターに対してTOTを実施する。
1-3.NAEC/省普及センターが、対象農協担当の普及員に対して研修を実施する。
1-4.普及員が対象農協を対象に研修を行う。
1-5.研修結果(普及員、農家の理解度、実践事例等)を踏まえ、必要に応じてカリキュラム・教材のドラフトを改訂する。
1-6.対象市・省PPMUが、安全作物の普及に向けた活動計画(1-3、1-4、1-5を含む)を作成する。
1-7.対象市・省PPMUが、1-6で作成した活動計画を実行し、活動状況をモニタリングする。

2-1.普及員が(PPMUとJICA専門家の支援を受けながら)、対象農協に対して市場ニーズ調査に関する研修を実施する。
2-2.普及員が(PPMUとJICA専門家の支援を受けながら)、対象農協による市場ニーズ調査の実施を支援する
2-3.PPMUが、先行する対象農協の経験(グッドプラクティス・教訓)を対象農協に共有する機会を設ける。
2-4.普及員が(PPMUとJICA専門家の支援を受けながら)、対象農協による安全作物の営農栽培計画作成を支援する。
2-5.普及員が、営農計画を踏まえて、安全作物の栽培技術を対象農協に指導する。
2-6.対象農協が、栽培及び販売結果をレビューして課題と成果を確認し、次期の営農栽培計画を策定する
2-7.普及員が(PPMUとJICA専門家の支援を受けながら)、前作期の課題と改定された営農栽培計画を踏まえて、対象農協に栽培技術を指導する。

3-1.CPMU/PPMUが、安全作物のバリューチェーン強化に関する課題と教訓を把握する。
3-2.CPMUが、3-1で明らかになった課題や教訓をバリューチェーン関係者へ共有・周知する。
3-3.CPMU/PPMUが、3-1で明らかとなった課題に対応するための活動を企画・実施する(市場及び生産者情報に関する情報ギャップ是正のための活動、バリューチェーン関係者の連携強化等)。
3-4.CPMU/PPMUが、BasicGAPに関する認知度向上に向けた活動を企画・実施する。

4-1.安全作物のバリューチェーン関係者が、安全作物の振興に関する日本の経験を理解する。
4-2.CPMUが、安全作物の振興に関するアクションプランを作成する。
4-3.PPMUが、各市・省における安全作物の振興に関するアクションプランを作成する。
4-4.CPMU/PPMUが、対象地域におけるバリューチェーンの安全性確保のための活動を含む、アクションプランを実施する。(検査体制の強化等)
4-5.CPMU/PPMUが、アクションプランの実施をモニタリングし、定期的に改訂を行う。

投入

日本側投入

(1)専門家派遣:業務主任/FVC強化、農業普及/安全作物栽培、市場志向型営農/マーケティング、農作物安全管理、農家組織強化、バリューチェーン関係者連携促進/業務調整
(2)本邦研修(安全作物振興政策、必要に応じて他の研修テーマ)
(3)現地活動費
(4)供与機材(プロジェクト活動に必要な機材供与)

相手国側投入

(1)カウンターパート人員の配置
(2)プロジェクト実施のためのサービスや施設、現地経費の提供