DSAPの取り組み2:チョマ郡での結核検体搬送システム

2019年7月1日

ザンビア共和国において、結核は、HIV感染者の死因の1位を占める疾患(注1)です。この国では、2017年には、約18,000人の方が結核(HIV/AIDSの合併を含む)により亡くなっています(注2)。ザンビアで特に問題とされているのが、結核に罹っているにもかかわらず診断されずに治療が開始されていない患者が多いことです。医療施設の結核診断技術が進歩している一方で、結核の疑いのある患者が検査のできる医療施設にたどりついていないことが大きな障害の一つと考えられます。

プロジェクトでは、結核の疑いのある患者を早期発見・早期治療に結びつけるための取り組みの支援を行っています。この取り組みでは、ハブとなるゾーナルヘルスセンターのバイクライダーが、管轄ヘルスセンターやヘルスポストから結核診断が可能な医療施設へ、結核疑い患者の喀痰検体を搬送するシステムを構築しています。これまでは、近くのヘルスセンターやヘルスポストでは診断がつかなかった患者が、自身で遠くの医療施設まで出向いて確定診断を受ける必要がありましたが、検体のみを搬送して診断を行うことが可能になり、地域の住民はより容易に結核検査が受けられるようになりました。プロジェクトの支援によって結核検体搬送システムが始まり、検体搬送数は一年で43倍に増えました。

プロジェクトサイトであるチョマ郡保健局の上級臨床専門官のオースティン・ムチャンガさん、結核・エイズコーディネーターのナオミ・テンボさんは、「結核検体搬送システムの導入によって結核の診断数が確実に増えました」と話します。プロジェクトでは、医療従事者やライダー向けに検体の搬送方法やバイオセイフティーの概念、バイクの保守点検について研修を実施しました。「一人ひとりの患者の結核診断が遅れぬよう、医療従事者だけでなく、ライダーにも責任を持って任務を全うしてほしいと思っています」(ムチャンガさん)。「患者さんは結核と診断された後に、約6か月の治療を行いますが、結核菌がなくなっていることを経過確認するために何回も検体を診る必要があります。結核検体搬送システムは結核診断の促進だけではなく、結核患者が治療を継続し、治癒するための障壁を和らげているともいえます」(テンボさん)。

ザンビアの広大な土地に舗装された道路が1本。そこから脇道に逸れ、緑が生い茂る中、赤土に水たまりだらけのデコボコ道を、走った所にマパンザ地区があります。この地区で親しまれるマパンザ・ヘルスセンターで、検体搬送ライダーを勤めるネーサン・ムワルサさんは、使命感を持ってこの仕事をしています。

ここでは、ヘルスセンター2箇所、ヘルスポスト3箇所を管轄しています。週2回、各センターから検体を集め、約30km離れた診断可能な機器がそろうマチャ病院まで検体を搬送しています。ムワルサさんは、「全部のセンターから検体が出た場合、このバイクで、100km以上の悪路を5~6時間かけて一人で走ることもあります」と言います。「検体である喀痰は新鮮なうちでないと正しく結核と診断出来ません。ここには適切な温度を保つ冷蔵庫のような物はありませんので、管轄のセンターで検体が出たら決まった曜日でなくても取りに行くこともあります。結核疑い患者がヘルスセンターやヘルスポストを受診した機会を逃さないように、どんな時も搬送できるように準備しています」と話します。

(注2)WHO Tuberculosis country profiles in Zambia. Generated:2019-02-11

【画像】

チョマ郡保健局のオースティン・ムチャンガさん

【画像】

チョマ郡保健局のナオミ・テンボさん

【画像】

マパンザヘルスセンターのネーサン・ムワルサさん