DSAPの取り組み4:カロモ郡での産後出血(PPH)対策

2019年10月2日

ザンビアにおいて、妊産婦死亡は優先課題の一つです。2015年には、出生100,000件に対して産婦224人が亡くなっています(注1)。その中で、産後出血(postpartum haemorrhage, PPH)は妊産婦死亡の主な死因の一つです。通常のお産でも出血を伴いますが、産後出血は、一般的に「分娩後24時間以内に起こる500mL以上の失血」と定義されます。死亡例は分娩後24時間以内に最も起きやすいとされています。その多くは、分娩時の適切な時期に子宮収縮薬を使用し、管理することで防ぐことができます。大量の出血が起きる要因は、子宮弛緩が最も多いと言われています(注2)。

プロジェクトでは、対象地であるカロモ郡において、産後出血による産婦の死亡率を下げるための対応研修を支援しました。郡保健局では、緊急産科新生児ケア(EmONC)研修を行っていましたが、2週間の研修には費用がかさみ、対象者数も少なくせざるを得ず、非効率的でした。そこでプロジェクトは郡保健局を支援し、12名の看護師と助産師を対象に産後出血に特化した研修を実施しました。そして、その修了生達が、新たな受講者計55名(ヘルスセンター計30箇所が対象)に対して2日間の研修を行いました。そうする事で、研修費用を下げつつ研修修了生を増やすことができました。カロモ郡において2017年の産後出血による死亡者は3名でした。その後研修が行われ、2018年の産後出血による死亡者はゼロになりました。

郡保健局管轄のカロモ郡病院は、2018年に現在の新しい立地に移動したばかりです。カロモ郡病院では2名の看護師が郡保健局の研修を受け、その知識をもとに、病院の他の2人に対して研修を行いました。この病院では先月、8件の産後出血のケースがありましたが、全てのケースを無事に助ける事が出来ました。

現在カロモ郡病院の産婦人科にて看護師を勤めるアイリーン・チニャマさんは、郡保健局がプロジェクトと実施した産後出血研修の講師です。この地区では、病院に行かずに家で出産するお母さんが多く、出産時に異常があっても手遅れになる事があります。チニャマさんは、「産後出血では、いち早く出血の原因を見つけ、病院で対応すべきかどうか判断する必要があります」と語ります。

「病院から84km離れた地区で起きたケースが印象に残ります」とチニャマさん。「そのお母さんは家で出産しようとしていました。しかし、出血があまりにも多く、家族と共に近くのヘルスセンターに行きました。ヘルスセンターから私に要請があり、カロモ郡病院から救急車で悪路の中2時間かけて駆け付けました。しかし、私が駆け付けた時には、ヘルスセンターでは、お母さんの中に残っている胎盤を取り除き、子宮底の圧迫を行い、オキシトシンを投与していました。研修受講生の迅速な対応の結果、お母さんも赤ちゃんも無事に助ける事が出来ました」。

フィリップ・サフリさんは、助産師としてカロモ郡病院の産婦人科に勤めています。プロジェクトの研修後に、産後出血を引き起こした、たくさんのお母さん達を助けてきました。「ただ、研修を受講した者が別の科に異動してしまう事もあります。今後も地区のヘルスセンターを含めて、定期的に研修指導を続ける必要があると思っています」とサフリさんは語ります。

(注1)Unicef Maternal and Newborn Health Disparities in Zambia, 2018
(注2)WHO recommendations for the prevention and treatment of postpartum haemorrhage, 2012

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カロモ郡病院

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アイリーン・チニャマ看護師

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フィリップ・サフリ助産師