プロジェクト概要

プロジェクト名

ルサカ郡総合病院運営管理能力強化プロジェクト

対象国名

ザンビア共和国

署名日(実施合意)

2020年12月10日

協力期間

2021年5月27日から2026年5月26日

相手国機関名

ザンビア保健省、州保健局、郡保健局、対象の5つの総合病院(マテロ、チレンジェ、チパタ、カニャマ、チャワマ)

背景

ザンビアでは、一次レベル病院は簡易な手術等の基礎的な医療を提供する病院として保健施設の中でも重要な役割を担い、総合病院(二次レベル病院)は一次レベル病院で対応できないケースのリファラルとしての役割を担っている。しかし、人口約1786万人(2019年)のザンビア全国において、一次レベル病院の設置数は99箇所、二次レベル病院は34箇所と施設数が不足しており、また既存の施設における運営管理・提供サービスの質が課題となっている。特に、ルサカ郡を含む都市部では、急激な人口増と一次・二次レベル病院の機能の脆弱さにより、三次レベル病院が本来は下位レベル病院が対応すべき簡易な手術等に対応せざるを得ず、本来の高次機能病院の役割を十分に果たせなくなっている。
こうした課題に対応するため、JICAは無償資金協力「ルサカ郡病院整備計画」および「第二次ルサカ郡病院整備計画」の実施を通じてルサカ郡(人口約250万人)における病院の不足を解消すべく5箇所の保健センターの格上げによる病院の整備を進めてきた。
しかしながら、各病院にて実際に支出される病院運営管理予算は逼迫しており、患者はX線診断や超音波診断、処方薬品の購入(病院に在庫がない場合)等に費用負担を強いられている。また、病院では医薬品及び医療消耗品の管理にも課題が多く、医療機材についても、技術者の不足や消耗品・スペアパーツの調達困難、予防的なメンテナンスの欠如などメンテナンス体制に大きな問題がある。また、マネジメントを担う人材は、病院運営・経営に関する基礎的な知識およびマネジメント技能を習得する機会がないまま病院運営を任されていることが多く、病院の内部モニタリングに基づく改善や、資源の十分な活用や戦略的な病院運営管理計画の策定ができていない。
更に、2020年の新型コロナウイルス感染症(以下「COVID-19」)の流行において、ザンビアのCOVID-19陽性ケースは院内感染に起因する事例が少なくないといわれ、病院における感染対策強化の必要性が再認識され、ザンビア保健省も優先課題としている。
かかる状況の改善につき、ザンビア政府は、無償資金協力「ルサカ郡病院整備計画」および「第二次ルサカ郡病院整備計画」により整備された5病院を対象とした病院運営管理能力強化の技術協力プロジェクトを我が国に要請した。この対象5病院は、無償資金協力により保健センターから一次レベル病院に格上げされ、本技術協力事業開始直前に二次レベル病院(総合病院)へと格上げとなった。下位の一次レベル病院がない地域に位置していることから、プライマリー・ヘルス・ケアサービスから二次レベル病院サービスまでを提供しており、ルサカ郡において極めて重要な役割を果たしている。
本プロジェクトの実施により、質の高い、安全かつ財務健全性の高い標準化された病院の運営改善が図られ、ザンビア保健省が目標とする「UHCの達成」に資することが期待される。

目標

上位目標

ルサカ州の一次・二次レベル病院における病院運営管理能力が強化される。

プロジェクト目標

対象5病院においてサービスの質改善のための病院運営管理能力が強化される。

成果

1.各対象病院において、現状課題を見える化し、目標に基づく管理を行って、課題を自ら解決するガバナンス体制が強化される
2.各対象病院において、病院内における感染予防管理対策が強化される
3.各対象病院において、必須医薬品・材料の在庫管理および医療機材の適正管理、メンテナンスが実施される。
4.対象5病院、ルサカ郡保健局、ルサカ州保健局及び保健省の連携が強化される

活動

1-1.病院内の組織図や組織横断的な委員会の活動が明確化され、目指すべきビジョンに基づいて各部署が行うべき役割や責任を明示し、規約が策定される
1-2.目指すべきビジョンと現状とのギャップを分析し、病院の現状が包括的に評価され、課題が把握される
1-3.解決すべき課題を同定し、戦略目標、評価指標、数値目標に基づく年間活動計画がバランスト スコアカード上に整理される
1-4.バランスト スコアカードに基づく年間活動計画が中期支出枠組み(MTEF)に組み込まれ、予算申請が行われる
1-5.病院運営委員会において、バランスト スコアカードに基づく年間活動計画の評価指標が定期的にモニタリングされ、活動の修正が行われる
1-6.1-1, 1-5の活動が年間報告書としてまとめられ、病院の課題やグッドプラクティスが病院職員に共有される
1-7.病院運営管理に関する教育、実務研修が院内で行われる

2-1.感染予防管理関係者(感染予防管理委員会メンバー、リンクパーソン)の組織図や感染管理委員会の活動が明確化され、病院内の感染予防管理における役割や責任を明示し、規約が策定される(活動1-1の具体的な活動として)
2-2.バランスト スコアカード上で感染予防管理に関する課題が分析され、感染予防管理に関する年間活動計画が策定され、予算申請が行われる(活動1-2, 1-3, 1-4の具体的な活動として)
2-3.感染予防管理委員会において、バランスト スコアカードに基づく年間活動計画の評価指標が定期的にモニタリングされ、活動の修正が行われる(活動1-5の具体的な活動として)
2-4.優先度の高い課題に対する標準手順書やツールが整備・改訂され、活用される
2-5.医療関連感染をデータとして見える化するために、実現可能な手術部位感染症サーベイランスが実施、分析され、感染予防管理委員会に定期的に報告される
2-6.感染予防管理活動が感染予防管理委員会に報告され、対応方針が協議される
2-7.課題やグッドプラクティスが病院内で共有され、感染予防管理活動が普及し、病院職員に認知される
2-8.感染予防管理やサーベイランスに関する研修が実施される

3-1.必須医薬品・材料の在庫管理および医療機材管理に関する組織図や、医薬品・診療委員会および医療機材管理委員会の活動が明確化され、必須医薬品・材料の在庫管理及び医療機材管理における役割、責任を明示し、規約が策定される(活動1-1の具体的な活動として)
3-2.バランスト スコアカード上で必須医薬品の在庫管理および医療機管理に関する課題が分析され、医薬品の在庫管理および医療機材管理に関する年間活動計画が策定され、予算申請が行われる(活動1-2, 1-3, 1-4の具体的な活動として)
3-3.医薬品・診療委員会および医療機材管理委員会において、バランスト スコアカードに基づく年間活動計画の評価指標が定期的にモニタリングされ、活動の修正が行われる(活動1-5の具体的な活動として)
3-4.必須医薬品・材料の薬剤倉庫において、在庫状況が見える化され、適時、正確に把握できるようになる
3-5.定期的に医療機材リストが更新され、医療機材の稼働状況が適時、正確に把握できるようになる
3-6.必須医薬品・材料の在庫状況および医療機材の稼働状況が、医薬品診療委員会および医療機材管理委員会に報告され、対応方針が協議される活動3-7課題やグッドプラクティスが院内で共有され、必須医薬品・材料の庫管理管理および医療機材管理の活動が普及し、職員に認知される
3-8.必須医薬品の在庫管理および医療機材管理に関する研修が実施される

4-1.病院運営管理におけるルサカ州保健局、ルサカ郡保健局及び対象5病院間の役割、責任を明確にする
4-2.ルサカ州保健局が行う既存のパフォーマンス・アセスメントにおいて病院運営管理に関する項目が組み込まれる
4-3.活動4-2に基づいて、ルサカ州保健局が対象5病院に対しモニタリング・支援的スーパービジョンを実施する
4-4.活動4-3で得た課題、グッドプラクティスをルサカ州保健局の技術委員会で共有し、議論する
4-5.成果1・2・3に関連し、グッドプラクティスを裏付けるための調査・研究を実施し、その結果をルサカ郡保健局・ルサカ州保健局・保健省を通して郡内・州内・国内・世界に発信する
4-6.ルサカ州保健局が主体となって成果1・2・3に関連する標準化されたガイドラインを策定し、保健省へ政策提言を行う

投入

日本側投入

専門家派遣

長期4名:チーフアドバイザー/病院マネジメント、質管理/感染管理、医薬品在庫管理/医療器材管理業務調整

短期専門家(必要に応じて検討)

プロジェクト運営コスト

研修、ステークホルダーフォーラム等
介入サイトでの活動費用

プロジェクト運営に必要な機材供与

カウンターパートの第三国及び本邦研修

相手国側投入

カウンターパートの配置

保健省、州保健局、郡保健局、各病院

専門家執務スペース

プロジェクト事務所およびサイトの運営コスト

カウンターパートの給与

プロジェクト運営に必要なランニングコスト