【国際協力出前講座】今のアフリカを正しく知るために/山形県酒田市立広野小学校

2021年11月10日

教室から世界を知る『国際協力出前講座』で、現地の生の体験談に触れる

講座は3拠点を結び、リモートで開催された

2021年9月28日、山形県酒田市立広野小学校にて『JICA国際協力出前講座』が開催されました。この講座は、開発途上国で国際協力に携わってきたJICA海外協力隊経験者やJICAスタッフが学校や地域で開発途上国での異文化体験、ボランティア活動、国際協力について講話をするもので、教室で気軽に途上国での生きた体験に触れられる機会となります。校長の齋藤太さんは、「私の中・高の同級生である加藤隆一さんが、JICA職員としてアフリカに駐在し、現地の社会情勢はもちろん国際協力に対する知見をお持ちなので、ぜひ子どもたちにその体験を話して欲しいと個人的に講演依頼の連絡をしました」と話します。

連絡を受けた当機構の加藤隆一上級審議役は、故郷の同級生から依頼であり、同郷の幼い後輩たちの役に立てるなら、と引き受けることに。さらに「せっかくの機会なのでこの講座は『JICA国際協力出前講座』として開発教育の一環として行い、JICA海外協力隊・フィールドワークでザンビアやエチオピアに在住経験のある、JICA山形デスク国際協力推進員の小野玲さんにも同じく講師として同席してもらおう」と調整を進めたそう。感染症対策のため、東京の加藤上級審議役、山形市の小野推進員、広野小の3箇所を遠隔でつなぐリモート開催となりました。

きっかけは「世界に対する子どもたちの知識を豊かにしたい」という先生方の思い

服を回収し、アフリカへ送るプロジェクトの様子

今回の講座の開催には、広野小学校がアパレル会社を通して服を回収しアフリカへ送るというボランティアプロジェクトに参加することになったことをきっかけに、「服を送るという行為が決して施しではなく、同じ人間として隣人に手を貸すように対等な関係で行うものであることを児童に理解して欲しい」という齋藤校長の想いがありました。

「小学校ではアフリカについて学習する機会があまりなく、中学校の地理でもテーマに沿って概要を学習する程度なので、断片的になったり偏ったりしがちな子どもたちの知識を豊かにしたいという思いがありました。また、受講する5、6年生の担任の先生から挙げられた『知らないことが差別につながるので知ることを助けたい』、『自分たちの生活との共通点を見つけて世界に関わる大切さを学習させたい』という意見を、事前打ち合わせで講師のお二人にお伝えしました」と齋藤校長は続けます。

日本の子どもたちがこれから世界とどうつながるか、考える一助に

子どもたちの質問に答える形でアフリカの現状を伝えた

講師を引き受けた加藤上級審議役は「アフリカはいまだに貧困や飢餓、難民などネガティブなイメージで語られることが多い。そのような面もありますが、一方で異なる側面もあります。地域や国によっては都市化が進み経済発展を遂げています。スマホを一人1台以上持ち、スマホを使ったモバイルマネーが普及し、ドローンで血液を運ぶなど、デジタル・トランスフォーメーション(DX)は日本並みかそれ以上に進んでいる地域もあるのです。このような革新的な取り組みは国際社会でも注目されており、将来性が期待されています。そのため、こうした多様な面を持ち、変わりつつあるアフリカと日本がこれからどのように繋がっていくのかは大切な視点であると考えています。子どもたちには、同じ地球に住む人間としてアフリカとどのように繋がりを持つのかを考えるきっかけにして欲しいと思います」と、講話を通して子どもたちに伝えたかったことを語りました。

昨年度から施行された小学校の新しい学習指導要領には『持続可能な社会の創り手を育てる』と明記されている、と齋藤校長は話します。「持続可能な社会をつくり出すためには、個人の国際理解や国際協力が不可欠。『小学生だからこれくらいの理解でいい』ではなく、必要だと思ったら国際理解の要素を学習活動にも積極的に盛り込んでいきたい」と考えているそうです。

子どもたちの反応は期待以上、国際理解を進めるための場づくり

画面に釘づけでしっかりと話に聞き入る広野小の児童

リモートでも活気のある講座となりました

講座では、加藤上級審議役、小野推進員が自身の体験をもとに写真や図を交えた資料を画面に映しながら講話を行い、子どもたちは真剣なまなざしで講座を受けていました。子どもたちの感想には、「毎日学校に行くことが出来たり、電気を自由に使うことが出来たりするのは幸せなことだと思わなければならない」、「平和な国で生きていることを幸せに思い、自分の命も他人の命ももっともっと大切にしたい」など、アフリカで起きていることを自分事としてとらえているものがほとんどで、先生方の期待以上であったとのこと。

加藤上級審議役は「地元の大学にアフリカからの留学生がいるので、交流を持たれてみてはどうか、と齋藤さんに提案しました。同じコミュニティを形成するアフリカ人と交流を持つことで、国際理解が進むのではないかと考えます」と、国際理解教育の次のステージについて提案しました。齋藤校長も、留学生との交流についても前向きに考えているそうで、「子どもたちには、軸足を地元に置きながらも国際協力や国際貢献が可能であることを気づかせたい。そのために、世界のことを先入観や既成概念にとらわれず、正しく知り学べる状況を支援したい」と話します。

持続可能な社会の実現のために、多様性を認め違いを理解し、進んで国際協力のできる若い力を育てていきたい。そんな熱意あふれる教育現場に、当機構もできるだけ多く関わり、体験や生の声を届け、正しい国際理解の場を設ける取り組みをこれからも続けていきます。