コミュニティ防災展示会-コミュニティ防災活動の普及へ-

2020年2月22日

2020年2月22日、プロジェクトでは3回目となるコミュニティ防災展示会が、パイロットサイトの一つであるアラフエリタ市で開催されました。
展示会には145名のコミュニティリーダーの他、普及対象のエレディア地域のコミュニティ防災委員会メンバー、アラフエリタ副市長、国家災害対策緊急委員会(CNE)職員、パイロット4市防災担当者、日本人専門家らが参加しました。

コミュニティリーダー交流会の流れ

コミュニティリーダーの交流会は、プロジェクト指導のもと2018年6月に始まったものであり、翌年の2019年3月にはコミュニティ防災活動展示会という形で、400名が参加する大展示会となりました。

2019年3月の展示会の様子は以下の記事をご参照ください。

2018年6月の第一回交流会は、当初パイロット市やコミュニティ同士の学び合いが目的であり、会場に設けた各コミュニティ防災委員会(CCE)のブースで、コミュニティ住民らが手作りのハザードマップや簡易雨量計といったツールを展示するスタイルはこのときに生まれました。
翌2019年の展示会では、参加コミュニティが大幅に増えた他、パイロット市内のコミュニティによる交流にとどまらず、他のコミュニティへの活動の普及の場にもなりました。フェーズ1のパイロットコミュニティとの交流や優良事例の紹介が実現したことも、このときの展示会の一つの特徴でした。また、プロジェクトで学んだ土のう実習をコミュニティメンバーが自ら実践する活動も行われ、参加者らの意欲と成長を促す工夫がなされました。

3回目の展示会、普及のための工夫

3回目となる今回の展示会は、本プロジェクトが他の地域へ普及活動を進めるフェーズに到達したことを示す、象徴的な展示会となりました。普及対象エリアとして10市で形成されるエレディア地域が指定され、約30名のコミュニティ防災委員会メンバーが招待されました。プロジェクトにより育成されたコミュニティリーダーらは、自分たちで作成した教材ツールや小道具などを活用し、普及活動としてCCEの防災活動についての説明をエレディア地域の人たちに行っていました。

今回は、タイムライン、避難訓練、避難所、コミュニティ雨量観測ネットなどのテーマが各CCEのブースに割り振られ、複数のテーマが網羅されるよう工夫がなされました。説明を行う側は真剣かつ楽しんで伝えようとしている様子が伺え、説明を受ける側のエレディア地域のコミュニティメンバーらはメモを取りながら熱心に説明を聞いている様子が印象的でした。CNEのエレディア地域担当職員は「エレディア地域のコミュニティは、これまで何度か研修を受けているが、ここで見られているコミュニティ住民のイニシアティブを引き出す参加型の研修は経験したことがなく、是非エレディア地域で取り入れられるよう支援していきたい」とコメントしています。

他方、経験を伝える側にとっても学びの場となりました。彼らにとっても、“ひとに伝える”というのは初めての経験です。単なる知識の説明ではなく、演習や訓練で実際に経験したことを基に各々が自信をもって伝えている様子は頼もしいものでした。たとえばコミュニティレベルの避難訓練を実施した際には、大きな画用紙に記された活動記録を活用して説明するブースがあり、また、コミュニティ雨量観測ネットについて説明するブースでは、簡易雨量計の仕組みと設置する際の留意事項、そして複数箇所に雨量計を設置する意味についての説明を行っていました。これらには、今までに彼らが研修などを通して学んできたものが活かされています。このように、コミュニティリーダーらが普及活動を行う姿からは、普及のための講師として大きな可能性を見出せるものでした。

参加したパイロット市の一つであるエスカス市の防災担当者は、「今までのイベントの中でも、参加者ニーズに的確に応えた最もよく出来ているイベントの一つである。ここで重要なのは、CCEメンバーが、知識や経験を他のコミュニティに伝えることにより、“教えるプロセスを自分たちものにする”ことである。この活動は、私たち市役所が新しいコミュニティの組織化を進める際にも非常に役に立つものである。エスカスでも新しく4つのコミュニティの組織化を進めており、そのプロセスにおいてコミュニティリーダーらが研修を実施する側になることを想定している」とコメントしており、育成されたリーダーらとともに、新しいコミュニティの育成がこれからますます増える計画となっています。

普及活動への弾み

今回の展示会では、コミュニティリーダーらが防災活動やプロジェクトにより導入したツールを、他のコミュニティメンバーに説明する貴重な機会を提供するとともに、コミュニティリーダーらが講師となって自分たちで作成したツールを使って説明出来るようになっているところを確認することが出来ました。また、彼らが普及のアクターとして高いポテンシャルを有していることが伺えるとともに、今後の普及活動においても重要な役割を担っていることが再認識出来ました。
今後もコスタリカ側のイニシアティブによる普及活動が計画されており、プロジェクトでは引き続き支援を行っていきます。

作成:小野寺 純(人材育成担当専門家)、佐野 康博(長期専門家)

【画像】

本邦研修で学んだ手法によって手作りした笛を紹介する様子

【画像】

熱心に説明を聞くエレディア地域メンバー

【画像】

コミュニティ防災展示会でのブース

【画像】

コミュニティ避難訓練について説明を行うコミュニティリーダー

【画像】

自分たちで作成したツールについて説明を行うコミュニティリーダー

【画像】

展示会場の様子

【画像】

簡易雨量計についての説明を行うCCEメンバー

【画像】

展示会終了後にコミュニティリーダーらが中心となってグループでの振り返りを行った