プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)SICA地域における生物多様性の統合的管理と保全に関する能力強化プロジェクト
(英)Project for Capacity Development on Integrated Management and Conservation of Biodiversity at regional level in SICA Region

対象国名

ベリーズ、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、ドミニカ共和国

署名日(実施合意)

2018年6月19日

協力期間

2019年3月14日~2024年3月13日(5年間)

相手国機関名

(和)中米統合機構 中米環境と開発委員会
(英)Sistema de la Integración Centroamericana, Comisión Centroamericana de Ambiente y Desarrollo

背景

中米地域は地理的・気候的な条件から、沿岸地域を含め生物多様性が豊かな地域であるが、狭隘な地形における開発により生態系の劣化が進んでいる。生物多様性は単に種の多様性のみならず、遺伝資源や生活環境の保全、防災といった機能もあるほか、農業やエコツーリズムにも貢献する開発のための貴重な資源ともなりうる。そのため生態系の保護・回復・持続可能な利用促進は、ミレニアム開発目標(MDG's)や持続可能な開発目標(SDG's)で主要なターゲットとなっているほか、生物多様性条約やラムサール条約などの枠組みの中でも取り組みが進められている。

中米・カリブ地域8カ国が加盟する「中米統合機構(SICA)中米環境開発委員会(CCAD)」は、中米地域における環境保全のための「Framework Regional Environmental Strategy(2015-2020)」を策定し、その中で「気候変動とリスク管理」「森林、海洋と生物多様性」「環境の質」「水資源の総合的管理」「貿易と環境」「資金メカニズム」といった戦略重点分野を掲げ、環境保全に取り組む方針を打ち出している。また、生物多様性を地域レベルで保全する生物回廊は、生態系を保全するための主要な概念となっており、中米地域では、世界銀行等の支援の下、「メソアメリカ生物回廊構想(MBC)」が打ち出されている。また、メソアメリカ域内の統合を推進し、経済的及び社会的な発展を促進させるために計画された「メソアメリカ統合開発プロジェクト(Proyecto Mesoamérica(PM))」では、PM枠組み内のイニチアティブである「メソアメリカ環境持続戦略(EMSA)」推進のため、SICA-CCADと覚書を締結し、MBC推進を中心とした環境分野の協力を強化している。

これまでJICAは、中米各国を対象に、継続的に生態系保全や湿地保全に関する二国間協力を実施してきているが、これら二国間協力で得られた成果を類似の課題を抱える近隣国に普及し、成果を拡大していくことが求められている。このような状況の下、2018年6月、JICA及びCCADは、討議議事録(R/D)に署名し、2019年3月から5年間を協力期間として「SICA地域における生物多様性の統合的管理・保全に関する能力強化プロジェクト」が開始された。

目標

上位目標

SICA地域における生物多様性保全と持続可能な利用に関する地域の制度的枠組み及びガバナンスが強化される。

プロジェクト目標

SICA-CCADと連携し、加盟国の生物多様性の利用と保全に関する管理能力が強化される。

成果

1.SICA地域における生物多様性の保全と利用のための地域情報プラットフォームが確立される。
2.持続可能な開発に関する地域・国家政策の実施・提案のため、パイロット・プロジェクトの成果(小規模な農村地域と地元の人々に焦点を当てた優れた実践と教訓など)が地域に普及される。
3.SICA-CCADと連携し、生物多様性の保全と利用のための地域的な組織と人的資源の能力が強化されている。

活動

1-1.地域(すなわち地域および国レベル)の生物学的回廊、湿地、生物多様性データベースなどの既存データの現在の状態を評価し、分析する。
1-2.SICA加盟国間、特に生物学的回廊、湿地、生物多様性のためのデータ交
換および情報共有のための多生物多様性プラットフォームとしての地域情報プラットフォームのための設計を開発する。
1-3.地域情報プラットフォームを構築する。
1-4.SICA-CCADと連携して、各国の情報プラットフォームの構築、利用、維持(すなわち、収集、処理、利用可能なデータ/情報の利用)に関する加盟国の選定されたスタッフの研修を実施する。
1-5.プラットフォームを用いて、「地域生物多様性アウトルック(作成ガイドライン/概要)」をとりまとめる。

2-1.コミュニティレベルでの生計向上と生物多様性保全に貢献する持続可能な経済開発のパイロット・プロジェクトの選定基準を策定する。
2-2.パイロットコミュニティ関係者とともにパイロット・プロジェクト案を作成する(例えば、湿地生態系、保護区域および生物回廊などの優先順位の高い地域における、PES、ABS、農林業、農産物のブランド化、エコツーリズム/農業観光の促進、環境持続可能な地域経済の代替案の開発など)。
2-3.パイロット・プロジェクトを選択し、パイロット・プロジェクトに対して実際にどのようなサポートを行うか決定する。
2-4.パイロット・プロジェクトの実施を支援する。
2-5.パイロット・プロジェクトの結果(すなわち、財務の持続可能性、インパクト、教訓など)を評価・分析し、教訓を収集する。
2-6.越境生態系のガバナンス・メカニズムの強化の目的から、持続可能な生態系保全に関連するグッドプラクティスの事例を地域内で収集する。
2-7.上述の2-5および2-6に基づいて域内で適応可能な越境生態系におけるガバナンス・メカニズムに関する提言(新指標1の一部)を作成する。
2-8.上述のグッドプラクティス、提言、教訓をアウトプット1で開発した情報プラットフォームにアップロードする。
2-9.パイロット・プロジェクトで得られた結果に基づいて、地域および国レベルの政策を改善するための提言を行う。

3-1.SICA-CCADと連携してSICA加盟国からの研修ニーズを評価・分析する。
3-2.SICA-CCADと協力し、SICA地域、日本および近隣諸国(中南米地域)における研修リソースに基づいて、プロジェクトのための特定テーマに関する地域研修プログラムおよびカリキュラムを作成する。
3-3.上述のプログラム及びカリキュラムに基づき、セミナーやワークショップを含む研修を実施するとともに、研修結果に基づいてプログラムを見直す。
3-4.CCADの枠組みにおける生物多様性の保全と利用を促進するための地域組織体制と必要な人材の能力強化についての提言を行う。

投入

日本側投入

1.専門家の派遣
2.プロジェクト活動に必要な資機材
3.本邦研修、域内研修

相手国側投入

1.カウンターパートの配置
2.日本人専門家の執務室、および必要な資機材等