母子健康手帳の利用のための指導者研修・医療従事者研修(ベンゲラ州)

2021年7月14日

ベンゲラ州の全ての市で母子健康手帳の導入が開始されました!プロジェクトで予定していた全ての地域で母子健康手帳が導入されたこととなります。

ベンゲラ州では、「母子健康手帳を導入し研修や手帳の配布を行うことによる母子健康手帳の効果の検証」のために、インパクト評価が行われていました。ベンゲラ州には10の市があります。この10市を、母子健康手帳の介入を行う「介入群5市」と、既存の産前健診手帳と子供健康カードを使用し続ける「対照群5市」に無作為に分けました。介入群5市には、2018年10~11月に母子健康手帳の導入研修を行い、手帳の配布が開始されていました。対照群5市には、インパクト評価のデータ収集終了後の2020年5月頃から母子健康手帳の導入が行われる予定でした。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、ベンゲラ州での研修が実施できず、導入が約1年遅れていました。

プロジェクトチームは4月25日にベンゲラ州に入りました。新型コロナウイルス感染症の影響で、アンゴラでは、「災害事態宣言」が発出されています。「災害事態宣言」に従い、州間の移動を行う場合、抗原検査を受ける必要があります。そのため、ベンゲラ州に移動する前には、プロジェクトチーム全員で抗原検査を受診し、陰性証明を受け取りました。また、飛行機の国内線も大幅に減便されていて、以前のように簡単に州間の移動ができなくなりました。その分、ベンゲラ州に到着した時は、チーム一同、安堵しました。

母子健康手帳導入指導者研修

5月3日から7日までの5日間で、母子健康手帳の利用のための指導者研修(ToT:Training of Trainers)を実施しました。ToTには、州保健局職員、各市保健局の母子健康手帳の担当者に任命された方々、ベンゲラ州にある医療従事者養成学校の教員の方々、合計16名が参加されました。開会式では、ベンゲラ州保健局公衆衛生局部長のDr. Americoがベンゲラ州全10市での母子健康手帳の導入を心待ちにしていたと挨拶されました。母子健康手帳の配布開始を首を長くして待っていてくださっていたベンゲラ州の方々の熱いお言葉には、感慨深いものがありました。研修は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大予防のために、毎朝の検温の実施、アルコール消毒の設置、布マスクの配布、通常より広い会場での開催及び頻回の換気の実施等、様々な対策を実施した上で安全に行いました。

また、これまでの研修で参加者からの疑問点が多かった出産予定日の算出に使用する妊娠スケール(注)や、小児の成長モニタリングに使用する成長曲線について、今回の研修から大判教材を導入した説明を開始しました。それぞれA2サイズ(420×594ミリメートル)で作成し、壁に貼って説明できるようにしました。大判教材を使用しての説明で、参加者の方々の理解は大きく向上したように感じました。

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大判妊娠スケール

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大判成長曲線

日々母子保健サービスに携わっている参加者の方々から、母子健康手帳の使用方法について、医療従事者目線、母親/家族目線から多くの貴重な意見が寄せられました。これらの意見は、母子健康手帳委員会メンバーと相談の上、プロジェクト終盤に予定している母子健康手帳の改訂点に盛り込まれます。

5日間のハードな研修課程を全員が修了し、母子健康手帳の担当者/研修の指導者として正式に任命され、修了書を受け取りました。

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指導者研修集合写真

母子健康手帳導入医療従事者研修

指導者研修に続き、各市で、5日間の医療従事者研修を実施しました。医療従事者研修には施設規模に応じて、各施設から1~3名の保健スタッフが参加します。新型コロナウイルス感染症の影響で、1回の研修に参加できる人数を25名に限定したため、各施設から参加できる保健スタッフの人数も限られてしまいました。そのため、研修の回数を増やして対応しました。参加者の方々は、各施設の代表となる立場であり、施設に戻れば研修内容を同僚たちに伝える役目を担っています。どの保健スタッフもとても真剣な眼差しで研修に参加されていました。

研修では、手帳の記入方法の練習問題が繰り返し行われます。妊婦さんの基礎情報、既往歴、産前健診の記録、出産記録、産後健診記録、小児健診記録、成長曲線、予防接種記録等、一つ一つの項目について、練習問題を行い、母子保健サービス全般について説明しながら、母子健康手帳の理解を深めています。手帳の書き方のみではなく、母子保健サービスの基礎知識も得られるように、演習やグループワークも取り入れて、研修内容が工夫されています。また、研修で使用した練習問題集や、その他教材は、各保健施設で使用できるよう、研修最終日に参加者に配布されました。参加者の方々は、研修を終えた達成感と、たくさんの教材を抱えて、笑顔でそれぞれの保健施設に戻っていきました。

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練習問題集(産前健診)

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練習問題集(手帳への記入例)

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研修中に疑問点が解決できるようスーパーバイザーが細かくフォロー

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効果的な母親学級の実施方法についてグループワーク

モニタリング&スーパービジョン(M&S)

「母子健康手帳導入医療従事者研修」(5日間)に続いて、その翌週にM&S(施設内研修実施支援、母子健康手帳の配布含む)を行っています。「研修+M&S」の2週間を母子健康手帳の導入パッケージとしています。

【画像】母子健康手帳の導入パッケージ

母子健康手帳の導入パッケージ
第1週目 座学(5日間)
医療従事者研修
対象:全保健施設施設長(M&S研修のみ参加)及び医療従事者(医師及び看護師、助産師)、各施設の代表者1~3名程度
第2週目 モニタリング&スーパービジョン(M&S)
M&S(施設内研修実施支援含む)
対象:全保健施設(道路状況・時間の問題で巡回できなかった施設を除く)

医療従事者研修に参加した保健スタッフがそれぞれの施設で施設内研修を実施します。プロジェクトチームはM&S時に彼らが実施する施設内研修のサポートと実施状況の確認を行います。また、母子保健サービスについての疑問や質問があればアドバイスしたり、必要な医薬品/機材がそろっているかをチェックリストに沿って確認したりします。M&Sで、施設内研修の実施が確認できた保健施設は、市保健局から母子健康手帳を受け取り、手帳の配布を開始することができます。残念ながら、施設内研修の実施状況が不十分であった施設には、後日、市保健局が訪問し、施設内研修の実施を確認してから母子健康手帳が配布されます。保健スタッフの方々は、一日も早くお母さんやその家族に母子健康手帳を届けられるように、施設内研修を一生懸命に実施しています。市保健局から受け取った母子健康手帳は、配布を心待ちにしていた母親、家族に早速、手渡されました。

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M&Sで保健スタッフに母子健康手帳の記入方法を説明

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市保健局から母子健康手帳を受け取る保健スタッフ

各市でのM&S最終日には、市保健局長とのミーティングを行い、研修の状況や、各施設の問題点、今後の計画について協議します。ベンゲラ市のM&S及びミーティングには、保健省国家公衆衛生局のプライマリーヘルスケア部長Dr. Kethaも同行し、市保健局の予算や物品管理等について協議しました。プロジェクトマネジャーでもあるDr. Kethaと現場を一緒に回り、問題意識を共有する貴重な機会となりました。

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ベンゲラ市保健局長とのミーティング-国家公衆衛生局のプライマリーヘルスケア部長Dr. Kethaも同席-

また、M&S後は、市保健局の方々と電話で密に連絡を取り、配布状況の確認、問題の早期発見に取り組んでいます。全保健施設に対する一連の細かいサポートは国家公衆衛生局の職員の方々にも大好評です!