看護サービス人材育成プロジェクト(フェーズ2)を開始しました

2022年4月1日

バングラデシュ政府の取り組みとJICAの協力

人口約1億6,000万人が住む世界で最も人口密度の高い国であるバングラデシュ人民共和国(以下「バングラデシュ」)は、世界保健機関(WHO)によると、看護師の数は人口10,000人当たり3.6人(2020年)で、人口10,000人当たり44.5人という水準から大きく下回っています。この状況を改善するため、ハシナ首相は2009年に公的医療機関の看護職増員を公約しました。また、看護師増員に並行して、バングラデシュ政府は、看護師の質の向上を目指して2008年に看護教育制度の改正を行い、大学教育として看護学士課程制度(4年制)を導入しました。
JICAは2016年から2020年に看護サービス人材育成プロジェクト(フェーズ1)を実施し、保健家族福祉省看護・助産総局(DGNM)、バングラデシュの看護教育の拠点であるダッカ看護大学、そして、同大学が所属する国内最大の公立病院であるダッカ医科大学病院において、看護大学のアクレディテーション(注)の実践拡大といった看護行政の強化、学士課程教育における教員の能力・臨床実習指導者の能力向上、実習病院における受入体制の充実という3つの柱で支援を行いました。そして、2022年3月、看護サービス人材育成プロジェクト(フェーズ2)を開始しました。フェーズ2ではフェーズ1の活動範囲を拡大し、バングラデシュの看護大学最大8校(予定)を対象に活動を実施します。また、DGNMとともに看護師のキャリアパスの開発といった長期的な視点に基づく看護人材の卒後キャリアへの支援を行います。

(注)アクレディテーションとは、教育機関が外部の認証機関によって設けられた一定の基準に沿って、内部で、また外部審査者によって客観的かつ体系的に審査されることで、教育の質を保証し、質の改善に役立てるための制度です。看護大学に導入することで専門職の質の保証に繋がるため、バングラデシュでもバングラデシュ看護助産審議会(Bangladesh Nursing and Midwifery Council:BNMC)を中心にアクレディテーションプログラムの導入が進められてきました。

バングラデシュの看護サービスの状況

2022年3月からプロジェクトの第1陣が現地へ渡航し、関係機関へのプロジェクト説明と関係構築を行いました。また、重点校2校(シェレバングラナガール看護大学、マイメイシン看護大学)を訪問し看護大学の教育の概要について調査を行いました。各関係機関、大学ともにプロジェクトへの高い期待を感じることが出来ました。
マイメイシン看護大学を訪問した際には隣接するマイメイシン医科大学病院の状況も確認しました。この病院には看護師が1,137名在籍し、3交代制で看護を行っています。私達が訪問した日は、1,000床の病棟に3,000人の入院患者が廊下まであふれている状況で、看護師の姿はまばらでした。この状況で、どれだけ適切な看護が患者に行き届いているのでしょうか?またこの勤務状況の中でどれだけ看護学生の指導に時間を割けるのでしょうか?ありのままの状況を見せてくれた看護大学の教員は「これがバングラデシュの病院の現状なのです。」と話してくれました。看護学生の学ぶ環境とともに、看護の環境も改善したいという気持ちのあふれたコメントでした。
プロジェクトを行う4年間、看護学生、看護師がよりよい看護を提供出来る環境を作って行きたいと改めて現地の病院を見て思いました。

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入院患者でいっぱいの病室(マイメイシン医科大学病院)

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廊下まであふれる入院患者(マイメイシン医科大学病院)

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病院実習中の看護学生(マイメイシン医科大学病院)

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マイメイシン看護大学ではとても温かい歓迎を受けました。