2022年5月の活動ダイジェスト

2022年5月31日

内務文化省文化局で版築造実大試験体の加力実験を実施(フロアバンド工法)

4月20日と5月6日に内務文化省文化局は実大試験体の静的加力実験を行いました。試験体は版築造2階建の実大建物です。加力試験は建物の補強前と補強後で2回行われました。4月20日は補強前の状態で、建物の性状を観察するために小さな変形量での加力が行われました。その後、12ミリメートルのトルションワイヤー(捩り針金)を使用して各フロアにフロアバンドを設置しました。トルションワイヤーを各フロアレベルで建物に巻き付け、ターンバックルで締めつけました。この補強方法は、床版周りにワイヤー拘束を与えることで剛性を高めることを目的としたものです(フロアバンド工法)。5月6日はこの補強された状態で静的加力を行いました。加力は、層間変位が50分の1になるまで、つまり最上階の水平方向の変形が112ミリメートルになるまで行われました。

床版レベルの周囲のみが施工か所になるため、この工法は版築造建物の外観に与える影響を少なくできます。補強効果を実証できれば、有効な補強方法と考えられます。

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加力の様子。写真提供:文化局(DOC)

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ワイヤーでの補強方法。写真提供:文化局(DOC)

第5回合同調整委員会の開催

5月19日に第5回合同調整委員会が開催されました。渡航制限が解除された後、日本のカウンターパートがブータンに来ることができるのを待って開催する計画でしたが、プロジェクト期間も一年を切り、JSTによる終了時評価の準備も必要であるため、この機会での開催になりました。、議長は内務文化省の次官が務め、ブータン側は文化局の会議室に集合、日本側は遠隔参加での開催になりました。JICAブータン事務所長も参加しました。日本からは研究者、JST、JICA本部が参加しました。議事進行は、中間評価時の指摘事項に対して、これまでの進捗やこれからの計画を意見交換する形で行われました。終了時評価は12月に行われる予定で、それに向けて各活動の期限設定が確認されました。8月には日本側の渡航再開が期待されています。本会は終了時評価に向けた準備確認をする良い機会になったと思います。

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ブータン側会議室の様子。写真提供:文化局

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日本からの出席者。写真提供:文化局

パイロットサイトで建物の微動測定を実施

5月9日から15日の間、文化局と技術局が合同でパイロットサイト・ウラ郡で伝統的な石積造建物の調査書作成と微動測定を行いました。ウラは石積造建物が集合する箇所としてパイロットサイトに指定された場所です。ハザードマップを元にしてリスクマップを作りますが、その際に建物調査と測定された微動データにより、各家屋がどれくらい揺れの被害を受けるかを推定することができます。この調査のデータは、リスクマップの作成に不可欠なものです。パイロットサイトではリスクマップが完成した後にそれらを使った住民への地震防災啓発活動を行います。

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住民からの聞き取り調査。写真提供:文化局

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建物微動観測の様子。写真提供:文化局

ドローンを使った地形測量をパイロットサイトで実施

5月26日から地質鉱山局はパイロットサイトのウラ郡(Ura Gewog)でドローンによる地形測量を行いました。測量は、JICAから鉱山局に供与されたドローン「DJI mavic2pro」を使用して実施されました。 事前に「DJIGSPro」というアプリを使って飛行の計画を立てました。このアプリでは、飛行経路、写真のオーバーラップ、地面からの飛行高さ、撮影角度を設定でき、機器操作も行われます。

今回は、地上から80メートルの高さで毎秒10メートルの速度でドローンを飛行させ、1回の飛行で総面積1キロ平方メートルをカバーしました。

得られた地形データは、パイロットサイトのハザードマップ作りに役立てられます。

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ドローン操作の様子。写真提供:地質鉱山局

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ドローンによる空中写真。写真提供:地質鉱山局

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アプリ「DJI GS Pro」による飛行計画

ブータンの国際会議で発表

5月2日にブータン王立大学科学技術学部主催の「第2回科学・工学・技術に関する国際会議」が開催され、そこで文化局のカウンターパートが発表を行いました。今年は発表者が遠隔参加する形式での開催でした。発表タイトルは「Strengthening techniques for rammed earth buildings:Test results of full-scale static test」でした。会議には、国際的な専門家、科学技術学部のスタッフと学生、および国内のさまざまな機関からの各分野の専門家が参加しました。 発表は、プロジェクトの成果とDOCの実験施設を紹介する良い機会となりました。また、実大の版築造建築物を使った一連の実験で実証された補強技術の効果を紹介することもできました。

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実験施設の発表。写真提供:Mr. Koji Yamada

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補強効果の発表。写真提供:Mr. Koji Yamada