ベースライン調査の実施

2016年8月26日

エビデンスに基づく事業実施(Evidence-based Practice)の重要性が強調される昨今の世界的潮流の中で、費用対効果が高く、より効果的な国際協力が求められています。オルロ県母子保健ネットワーク強化プロジェクト(通称、FORSA Oruro)では、インパクト評価を実施していくことを関係者内で共有化し、実施に向けた体制づくりをオルロ県保健局、JICAおよび日本側の協力機関である順天堂大学の間で進められてきました。

本プロジェクトは3つの成果から構成されています。成果1は保健医療施設におけるヘルスケアの質的改善であり、成果2は住民参加によるヘルスプロモーション活動、そして成果3は成果1及び2の持続性を担保するための行政組織の機能強化になります。インパクト評価はこれら3つの成果を達成するための諸活動の介入効果を包括的に網羅する枠組みを構築し、科学的に検証可能な手法を導入する必要があります。研修を通じた人材育成の効果を適切に測定する指標づくりは、まさにチェレンジな知的作業であり、多くの技術的困難を伴うものです。他の先行事例を参考にしながらも、初めての試みが重なり、完全に満足のいく科学的な手法が開発できたとは言えないかもしれませんが、今回の挑戦が今後のインパクト評価の発展に寄与できうるものであることを願い準備を進めてきました。幸い、成果2の住民活動による住民のエンパワーメントを計測する調査方法は、本プロジェクトの先行事業であったFORSA La Paz、FORSA Potosiでの経験を大いに活かすことができました。特に初めての取り組みとなった成果1及び成果3の人材育成に関する効果を測るコンピテンス調査(注1)については、今年5月にプロジェクト対象外の地域(オルロ県庁所在地)にて103名の保健従事者に対し、設問及び指標の妥当性・信頼性を高めるために予備調査を実施し改善を加え準備を進めました。

ベースライン調査は6月22日〜8月16日の期間にて本プロジェクトが介入する3箇所の保健ネットワーク(アサナケ、ミネラ、ノルテ)と直接的な介入をおこなわない比較対照となる2箇所の保健ネットワーク(オキシデンテ、クエンカポポ)にて1)患者調査366件(注2)2)住民調査413件、3)保健従事者コンピテンス調査390件の計1,169件の調査を実施しました。調査の分析結果は、順天堂大にて解析され、第2回プロジェクト運営員会(9月20日開催予定)の場で湯浅専門家(チーフアドバイザー/ヘルスプロモーション)からボリビア側関係者へ公表される予定です。

このベースライン調査の結果は、4年後のプロジェクト終了時評価に科学的な一つの指標として活用できるものであるとともに、現状を踏まえたより適正で効果的な研修会の内容構成や効率的なヘルスプロモーション活動を実施していくため大いに活用される予定です。

(注1)コンピテンス調査
業務に関する問題解決する総合的な能力(コンピテンスという)を測るもので、医師・看護師等の医療従事者(成果1)は29問の設問。保健データの管理等を担う行政職関係者(成果3)は4問の設問で実施されました。

(注2)調査件数
調査件数は、調査人数を示します。

【画像】プロジェクト目標とベースライン調査の概念図

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7月8日ノルテネットワークにおける住民調査の様子。患者調査及び住民調査は、地元オルロ技術大学看護学科学生の協力を得て実施されました。

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7月8日アサナケネットワークにおける住民調査の様子。25問の設問で約30分の時間を掛けて一問一答形式で実施されました。

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7月26日ノルテネットワークの保健従事者を対象としたコンピテンス調査の様子。医師・看護師などの医療従事者(成果1)は設問29問で行われ、行政職関係者(成果3)は4問の設問に回答していただきました。